第25話
マエストロが少し苛立ちを帯びた声で「バーストを奪われたのは誤算ね」とサンドに向かって言った。
サンドは冷静に返して、「お前にしても、バーストにしても爪が甘いんだよ」と批判した。
その時、野口部長、金子さん、そして剛が息を切らせながら駆けつけた。
白木さんは新たに加わった仲間たちを見て、「これなら勝てるかもしれない」と希望を持った言葉を投げかけた。
野口部長が「一気に決めるぞ!」と、全員に意気込みを示した。
その合図と共に、僕たちは一斉に攻撃を仕掛けた。
僕も綾美も、そして新たに加わった仲間たちも、各自が持つ能力を最大限に発揮して戦った。
マエストロとサンドに対するこの一斉攻撃は、僕たちの団結力と、互いを信じる力の表れだった。
全員が一丸となって戦う姿は、僕たちの間に深い絆が生まれていることの証でもあった。
しかし、その時!
突如、シルバーウォールの天井に大きな穴が空き、僕たちの上に不吉な影が落ちた。
それは、あの妹をさらったカボチャの化け物、パンプキンマンだった。
彼は目を光らせて僕たちを見下ろし、次の瞬間、背中から無数の触手が現れ、僕らに攻撃を仕掛けてきた。
マエストロはパンプキンマンに向かって「遅いのよ!」と言いながら笑った。
この突然の加勢によって戦況が変わり、サンドも余裕の笑みを浮かべた。
しかし、僕の中では、妹を奪われた恨みが渦巻いていた。
僕は、どうしても妹を救わないといけない、このパンプキンマンを倒さないといけないという一心で彼に攻撃を仕掛けに向かった。
僕が殺鬼刀で斬りかかると、パンプキンマンはそれを軽々と防ぎ、反撃してきた。
僕はその反撃によって数メートル飛ばされたが、すぐに立ち直り、バーストを操ってパンプキンマンに炎を浴びせた。
しかし、パンプキンマンはその炎も触手で巧みに防ぎ、ニタっと笑った。
僕の攻撃が通じない事実に、一瞬で心が重くなった。
だが、諦めるわけにはいかなかった。
僕は再び立ち上がり、妹を救い出すために何が何でも戦い続ける決意を固めた。
現在の戦況は、僕がパンプキンマンと対峙し、一方で綾美と野口部長がマエストロに、白木さん、金子さん、そして剛はサンドとそれぞれ戦っている。
加えて、サンドには僕が操るヴァンパイアたちも攻撃を加えている。
この戦いのカギは、僕がパンプキンマンを倒せるかにかかっている。
その一点さえクリアできれば、僕たちの戦況は大きく有利に傾くはずだ。
パンプキンマンの強さは、僕が以前聞いていたSランクという評価を遥かに超えていた。
実際に戦ってみると、その強さはSSランク相当ではないかとさえ感じられた。
だが、そんなことを考えている余裕はなかった。
僕には妹を取り戻さなければならない使命があり、綾美をはじめとする仲間たちを守る責任がある。
それが僕に与えられた役割だ。
僕は一切の躊躇いを捨て、パンプキンマンへと必死の攻撃を仕掛け続けた。
そのたびにパンプキンマンは巧みに攻撃をかわし、反撃してきたが、僕は決して諦めなかった。
妹の姿を思い浮かべながら、僕は更に力を振り絞り、パンプキンマンへと立ち向かい続けた。
僕たちの絆と、僕たちが守るべきもののために、僕は戦い続けることを誓った。
バーストを操りながら、僕はパンプキンマンとの激しい戦いに挑んだ。
一方、マエストロは野口部長と綾美の猛攻に苦しんでいた。
そんな中、パンプキンマンはまだ余裕を見せ、苦戦しているマエストロを助けるために野口部長に向かって一気に加速した。
僕は慌ててパンプキンマンの行動を阻止しようとしたが、その圧倒的なスピードの前には及ばなかった。
僕が「野口部長!」と叫ぶ間もなく、パンプキンマンの触手が野口部長を襲い、彼を強力に吹き飛ばしてしまった。
その瞬間、僕の中に一瞬の恐怖が走った。
僕たちの中心である野口部長がこんなにも容易に吹き飛ばされるなんて、この戦いの危険性を改めて痛感した。
しかしそれでも、僕は立ち止まることはできない。
僕たちは仲間を守り、共にこの戦いを乗り越えなければならない。
僕は野口部長を助けに向かうと同時に、パンプキンマンに対する反撃を強化するため、さらに力を振り絞った。
ジャックから引き継いだ力を全力で発動し、超高速でパンプキンマンに襲い掛かったものの、彼の反応速度は想像を超えるもので、僕の斬撃を軽やかにかわしてみせた。
その笑みは、まるで僕たちを小馬鹿にしているかのようだった。
その間に、野口部長が立ち上がるものの、明らかにパンプキンマンの一撃が深いダメージを残していた。
そして、綾美がマエストロの猛攻に苦戦している様子が目に映った。
彼女はマエストロの攻撃を精一杯避けてはいたが、経験と技術の差が明らかで、徐々に追い詰められていく。
僕は彼女を助けたい一心だったが、パンプキンマンとの戦いで手が離せない。
野口部長も何度攻め込んでもパンプキンマンには全くダメージを与えられず、僕たちの立場は絶望的に思えた。
綾美の窮地はさらに深まり、マエストロが彼女の一瞬の隙をついて完全に動きを封じ込めた。
その瞬間、僕の中の絶望が頂点に達した。
「綾美!」
綾美は力なく触手に縛られ、僕たちの目の前で無力化されてしまった。
その光景に、僕は自分がどれだけ無力かを痛感し、喉の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。
僕は綾美を、そして妹を取り戻すと誓ったのに、その約束を守ることができない現実に直面し、絶望感に打ちひしがれた。
マエストロが突如、「はい、みんなストップ!」と高らかに笑いながら宣言した。
その言葉に、パンプキンマンもサンドも攻撃を中断し、戦いの火蓋は一時的に落ち着いた。
サンドがマエストロの行動に苦笑いを浮かべて「おまえ、本当に性格悪いな」と言い放ったが、マエストロは綾美を締め付ける手を緩めず、「そうかしら?」と嘲笑う。
その瞬間、僕たちは綾美を人質にとられてしまった現実に直面していた。
マエストロは僕に目を向け、「大丈夫よ。あなたが私の言うことを聞いてくれたら彼女には危害を与えないわ」と提案してきた。
僕は怒りに震えながら「綾美を返せ!」と叫んだ。
マエストロはそれに対して、軽薄な口調で「じゃあ、私のお願い聞きてくれる?」と言い、僕の返事を待った。
僕は心の中で葛藤しながらも、綾美を守るためならと「ああ、早く言え」と応じた。
マエストロは僕を更に試すかのように勿体ぶる様子で、穏やかに「えっとね。俊也君、私の力を返してくれない?」と提案してきた。
その言葉に続けて、マエストロは予期せぬ速さで僕の腹に触手を突き刺してきた。
その瞬間、僕はマエストロの本当の意図と、今置かれている危険な状況の深刻さを痛感した。
僕の腹にマエストロの触手が刺さった瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。
その中で、僕を導いてきたいつもの声が聞こえた。
「このままでは力を奪われてしまうな」とその声は言った。
そして、声は続けた。
「しかし、奪われても問題はない。機は熟した。もうまもなく本当の力が得られるはずだ」
僕は混乱しながら、「一体、どういう意味だ?」とたずねた。
しかし、声の主からは返答はなかった。
次の瞬間、僕の腹から触手が抜かれ、再び現実世界に引き戻された。
目を開けると、ニタっと笑うマエストロが目の前にいた。
彼女は「返してくれてありがとう」と言い、僕の中にある彼女がかつて持っていた力を奪いとった。
「綾美を返せ!」と、僕はマエストロに声を荒げた。
しかし、マエストロはただ笑いながら、「私は危害は加えないと約束したけれど、返すとは言ってないわ」と言い、綾美をさらに触手で締め付けた。
綾美の顔が苦痛に歪むのを見て、僕の心は痛みでいっぱいになった。
サンドがその様子を見て、「いやいや、危害も加えてじゃねーか」とからかい、パンプキンマンもその場の緊張をよそにニタニタと笑った。
「お前ら絶対許さない!」僕の心の中で何かが爆発した。
綾美との過ごした時間、そして妹との思い出が蘇り、それらが怒りに変わって込み上げてきた。
僕の中で強い感情が渦巻き、それが僕の力の源になった。
僕は自分自身に誓った。
どんなことがあっても、綾美を、そして妹を取り返すと。
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