第22話
サンドが「やってしまえ!」と命じると、一気にヴァンパイアたちの攻撃が激化した。
僕と白木さんは一時的に防戦一方になり、相手の猛攻を何とかしのぐしかなかった。
その状況の中で、僕は一計を案じた。
ヴァンパイアたちからわずかに間合いを取り、指揮者がオーケストラを操るように、僕はタクトを振る仕草をした。
その瞬間、今まで僕らに襲い掛かってきていたヴァンパイアたちが、突然動きを止め、その鋭い眼差しをサンドの方へと向けたのだ。
この驚くべき変化に、サンドの表情も一瞬で固まった。
僕はそのチャンスを逃さず、「やれ!」と力強く言い、ヴァンパイアたちに指示を出した。
すると、かつて僕たちを攻撃していたヴァンパイアたちが、今度はサンドに向かって動き出した。
彼らは僕の意思を受け取り、サンドへと攻撃を開始した。
マエストロから奪った、ヴァンパイアを操る力。
その力が今、僕たちの最大の味方となっていた。
サンドは自分が仕向けたヴァンパイアたちが自分に向かってくるという予期せぬ事態に、一瞬で戦況の優位を失った。
この一連の出来事は、僕たちにとって大きな転機となった。
サンドの計画を逆手に取り、僕たちが逆襲のチャンスを手に入れたのだ。
僕は、この戦いで何ができるか、常に考え続ける必要があると感じていた。
そして今、その思考が実を結んだ。
しけし、僕たちの戦いはまだ続いているんだ。
サンドは、自らの計画が狂ったことを認めるかのように、「マエストロの奴がしくじりやがったせで」と言いながら、砂を巧みに操り、自分に迫るヴァンパイアたちを次々と倒していった。
その姿を見て、僕は心の中でやはりサンドは強いと感じざるを得なかった。
この数のヴァンパイアが束になっても、サンドは全く怯む様子を見せず、むしろ楽しんでいるかのようだった。
「全員始末してやるよ」と、サンドは笑いながら、さらに激しい攻撃を始めた。
その様子を見た白木さんは、「これがSランクか……」と呟き、サンドの圧倒的な力に驚いているようだった。
その時、僕はただ立ち尽くすだけではいられなかった。
僕もヴァンパイア達と一緒に、サンドに攻撃を仕掛けに向かった。
マエストロから奪った力を最大限に活用し、なんとかサンドにダメージを与えることができないかと考えながら……
しかし、サンドは僕たちの攻撃も容易くかわし、反撃を仕掛けてきた。
そのたびに僕たちは身をよじってかわし、反撃のチャンスを伺った。
戦いは非常に厳しく、サンドのSランクの力は、僕たちがこれまでに直面したどの敵よりも強大だった。
この戦いは、僕たちにとって未曽有の試練であり、同時に、僕たちがどれだけ成長できるかを試されている瞬間でもあった。
サンドに立ち向かう僕たちの姿は、絶望的な状況の中でも決して諦めない強い意志を象徴していた。
僕らがサンドと激しい戦いを繰り広げている最中、少し離れた場所から突如として「久しぶりだな!サンド」という明るい声が響いた。
サンドはその声に一瞬だけ反応し、「お前と話している暇はない」と言い放ちながら、相変わらずヴァンパイアたちを倒し続けていた。
その声の主を見ると、今時のイケメン風な男が立っていた。
その出で立ちは、まるでファッション誌から飛び出してきたかのようだった。
その光景に、白木さんが「あいつはバーストだ!」と声をあげた。
シルバーウォールで捕まっていたはずのSランクヴァンパイアだ。
白木さんは続けて、「Sランクが二人もか……」と重くつぶやいた。
バーストはサンドに向かって「ありがとな!」と言った後、ニッコリ笑って「サンド、苦戦してるようだな」と付け加えた。
そして、彼は一瞬で僕の近くまで接近してきた。
その速さに、僕は思わず息をのんだ。
僕は咄嗟にマエストロの触手を使い、バーストから離れることに成功した。
しかし、バーストはそれを見ても動じることなく、「良い反射神経してるじゃん」と褒めながら、僕の方へ掌を向けた。
次の瞬間、彼の掌から炎が放たれた。
その炎は、まるで生き物のように僕を追いかけてきた。
僕は必死にそれを避けるが、バーストの力は確かにSランクのそれだった。
バーストの参戦によって、戦況はさらに混沌としていった。
僕はヴァンパイアたちにサンドの相手を任せ、僕と白木さんはバーストとの戦いに専念することにした。
サンドとの戦いも容易ではないが、バーストの存在がこの戦場のバランスを大きく崩している。
白木さんから、バーストがVセルから可燃性のガスを発生させ、さらに別のVセルで電気を発生させることで炎を出しているという説明を受けた。
「あの厄介な炎をどうにかするために、なんとかしてバーストに自分のVセルを注入し、操れないか……」と僕は考えた。
マエストロから奪った力を使って、もしバーストを操ることができれば、この不利な状況を打開できるかもしれない。
Sランクの力を手に入れることができれば、今までとは全く異なる戦い方が可能になるだろう。
その計画を実行に移すためには、まずバーストとの距離を詰め、直接触れる必要がある。
しかし、バーストの攻撃は非常に危険で、接近戦には大きなリスクが伴う。それでも、僕たちに残された選択肢は多くない。
「白木さん、カバーをお願いします。バーストに近づいて、何とかしてVセルを注入しようと思います」と僕は言い、白木さんもうなずいて応じた。
僕たちはバーストに対して慎重に位置を調整し、攻撃のチャンスを伺った。
バーストは僕たちの動きに警戒しながらも、余裕の表情を崩さず、更なる炎の攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃をかわしつつ、僕は白木さんと共に戦略を練りながら、バーストに対する決定的な一撃を狙った。
この戦いの結末が、シルバーウォールの運命を左右することになるだろう。
白木さんが突然、「俊也、俺に考えがある。バーストが俺の動きの邪魔をしないようにフォローしてくれ」と言った。
彼の言葉に驚きつつも、僕は頷き、彼の計画に協力することにした。
白木さんはその後、殺鬼刀を大蛇のようにくねらせて、地面に穴を開け始めた。
僕はその行動の意図が最初は理解できなかったが、彼を信じてフォローを続けた。
一方、バーストは「あれ?一人意味不明なことしているじゃん」と笑い、僕たちの行動を嘲笑った。
しかし、白木さんの行動には明確な目的があった。
彼が地面に開けた穴から、突如として多量の水が吹き出したのだ。
その瞬間、僕は白木さんの意図を理解した。バーストがVセルから可燃性のガスを発生させていたことを考えると、この水は彼の攻撃を無効化するためのものだったのだ。
水が地面から噴出し、炎の攻撃を防ぐバリアのように機能した。
バーストの表情も、突然の水の噴出によって一変し、戸惑いを隠せなかった。
この水のバリアがあれば、僕たちは少なくとも炎の攻撃からは守られる。
そして、僕たちにとって有利な戦いの場を作り出すことができた。
「白木さん、ナイスアイデアです!」と僕は彼に感謝の意を表しながら、改めてバーストに対する攻撃の準備を整えた。
白木さんの機転と僕たちの連携によって、この戦いに新たな転機が訪れたことを実感した。
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