第21話

シルバーウォールにヴァンパイアたちが侵入してきた為、僕は白木さんと一緒に戦い始めた。


僕たちの目の前に現れたのはSランクのサンドというヴァンパイアだった。


奴もパンプキンマンと同様にレッドツリーの幹部だ。


サンドは、特異な能力を持っていて、自分の体内から粒子状の砂のようなVセルを出すことができた。


それを自在に操ることで、僕らに向けて攻撃をしてきた。


戦いが進むにつれて、サンドはその砂を刃の形にしたり、盾のような形状にして戦ってきた。


その技術は非常に高度で、砂を武器として、また防御手段として使い分けることができた。


僕らはその砂の攻撃を避けるために、何度も動きを変えなければならなかったし、サンドの砂で作られた盾を破るのも一苦労だった。


「くそっ、どうすれば……」と僕は心の中で思った。


サンドの砂の攻撃は予測が難しく、一瞬の隙も見逃せなかった。


白木さんも全力で戦っていたが、サンドの砂はあまりにも変幻自在で、僕たちはかなり苦戦していた。


このままでは、僕たちはサンドに対して有効な攻撃を仕掛けられない。


サンドの能力はSランクのヴァンパイアとしての強さを如何なく発揮しており、僕たちにとって大きな脅威だった。


サンドとの戦いは、僕にとっても白木さんにとっても、これまで経験したことのない厳しい試練となっていた。


サンドが嘲笑うように「噂の吸血人がその程度か!」と言ったその声に、僕は怒りともどかしさを感じた。


彼はその言葉を残すと、矢のような形状にした砂を僕らに向けて飛ばしてきた。


反射的に、僕はマエストロから奪った触手を使ってその矢を防ぐ。触手が砂の矢を受け止め、なんとか僕たちは攻撃をしのいだ。


一方、白木さんは矢を巧みにかわしながら、サンドとの間合いを計算し直していた。


サンドはさらに挑発を続け、「マエストロの奴が強いって言うから期待してしまったじゃないか!」と言い、今度は砂を巨大な拳状に成形し、僕に向かって殴りかかる。


その拳の力は凄まじく、僕は殺鬼刀とジャックの刀を使って必死に防いだが、それでもその衝撃には耐えきれず、吹き飛ばされてしまった。


壁に叩きつけられ、僕はどう倒れ込んだが、痛みを感じながらも僕は立ち上がる。


しかし、どうやってサンドにダメージを与えればいいのか、その方法が見つからない。


今の僕らはサンドにダメージを与えるどころか、彼に近づくことすらできていない。


その事実が、僕の心に重くのしかかる。


「どうしたらいいんだ……?」と僕は心の中で問いかける。


サンドの砂は変幻自在で、僕たちの攻撃を容易にかわし、僕たちを苦しめていた。


このままでは、戦況を好転させることは難しい。


だけど、あきらめるわけにはいかない。


何かしらの方法を見つけ出さなければ、と僕は必死に考えを巡らせた。


サンドが得意げに「どうやら時間切れのようだな」と笑ったその瞬間、シルバーウォールに収容されていたヴァンパイアたちが、まるで合図を待っていたかのように、ぞろぞろと姿を現し始めた。


白木さんの顔には、この突然の展開に対する絶望が浮かんでいた。


僕も、この状況が明らかに不利であることを痛感した。


しかし、ここで諦めるわけにはいかない。


僕たちはここまで戦ってきた。


もう一度、力を振り絞らなければ。


サンドは高らかに宣言した。


「同胞たちよ!待たせたな!好きに暴れろ!」その言葉が、解放されたヴァンパイアたちに向けた指令のようだった。


彼らは、まるで長い間抑えられていた野生を解き放つかのように、僕らに向かって襲い掛かってきた。


「やばい、これはマズい……」と僕は心の中で呟いた。


しかし、即座に心を切り替える。僕たちにはまだ戦う力がある。


白木さんと目を合わせ、互いに無言の了解を交わす。


僕たちはこれまでの戦いを通じて多くを学び、成長してきた。


これが試される時だ。


「白木さん、なんとか彼らを食い止めないと!」と僕は言い、殺鬼刀を握りしめた。


白木さんも同様に殺鬼刀を構え、僕たちは解放されたヴァンパイアたちの波に立ち向かう準備を整えた。


どんなに厳しい状況でも、諦めずに戦う。


それが僕たちヴァンパイアハンターの誓いだ。


ヴァンパイアたちが僕と白木さんに一斉に攻撃を仕掛けてきた。


彼らの動きは速く、凶暴だったが、僕らは身軽にかわしながら、一体一体を確実に切り倒していった。


戦いの最中、僕は必死に次の手を考えていた。


「そうだ。マエストロのヴァンパイアを操る力を使えば……」


心の中でひらめいた。


マエストロから奪った、ヴァンパイアを操る力を使えば、これらのヴァンパイアたちを僕たちの味方にすることができるはずだ。


僕は慎重に、サンドに気付かれないように迫ってきたヴァンパイアに、マエストロの触手を差し込んでいった。


その触手から微量のVセルを注入し、彼らの意識を僕たちの側に引き寄せようとした。


一方、サンドはこの混乱を楽しんでいるかのように、余裕の笑みを浮かべた。


「俺が手を出すまでもないな」と言い放ち、タバコに火をつけ始めた。


彼は、自分の仲間たちが僕たちに負けることなどあり得ないと確信しているようだった。


しかし、僕と白木さんは諦めなかった。


僕が触手を使ってヴァンパイアたちに働きかけると、徐々にその効果が現れ始めた。


僕らに迫ってくるヴァンパイアたちの中には少し様子が変わって来ている者もいた。


「このままいけば……!」と僕は心の中で叫んだ。


僕らは、サンドの目の前で、彼が想像もしなかった展開を作り出すことに成功しつつあった。


この戦いは、まだ終わっていない。僕たちは、どんな状況でも戦い続けることを誓った。


そして、その決意は今、ここに試されているのだった。

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