第20話
シルバーウォールの中心部へと進むにつれ、綾美たちは次々と襲い掛かるヴァンパイアたちと対峙し、一体また一体と確実に倒していった。
レッドツリーの連中は、シルバーウォール内のヴァンパイアを解放しようと躍起になっていたが、その試みを阻止すべく、部長たちが壮絶な戦いを繰り広げていた。
その戦いの中心には、白木さんの上司である野口部長もおり、彼は「スパイダー」と呼ばれる女のヴァンパイアと激しく交戦中であった。
スパイダーはその名の通り、狡猾で敏捷なAランクのヴァンパイアで、彼女の放つ蜘蛛の糸はどんな相手も一瞬で動きを封じる力を持っていた。
綾美は、もしかすると野口部長が俊也のことを何か知っているかもしれないと考え、彼に近づこうとした矢先、スパイダーがその意図を察知。
彼女はニタリと笑いながら、綾美に向けて蜘蛛の糸を飛ばしてきた。
糸は綾美を捉え、彼女の動きを一瞬にして封じ込めた。
「大丈夫か!黒崎君!」と野口部長が叫ぶ声が響き渡る。
野口部長は驚異的な速さでスパイダーに斬りかかり、その攻撃によりスパイダーが綾美に近づくのを一時的に阻止した。
野口部長の迅速な行動は綾美を危機から救い、スパイダーとの戦いに新たな展開をもたらした。
この瞬間、綾美は自身の無力さを痛感しながらも、同時に仲間たちと共に戦い抜く決意を新たにした。
シルバーウォールでの戦いは、彼女にとって未知の試練であり、俊也を救うためには、さらなる強さと勇気が必要であることを改めて認識したのであった。
スパイダーの糸から脱出した綾美は、即座に戦闘態勢を取り、「変化!」と力強く叫びながら殺鬼刀を振るった。
その瞬間、彼女の刀からは無数の針が放たれ、スパイダーに向けて飛んでいった。
これは綾美の決意と技術の結晶であり、スパイダーに対する有効な先制攻撃となった。
間もなく、金子さんと剛も戦場に駆けつけ、彼らも殺鬼刀の変化を開始した。
剛の殺鬼刀は巨大な斧のような形態に変わり、その圧倒的な攻撃力でスパイダーに襲いかかった。
一方、金子さんは弓矢に変化した殺鬼刀で、距離を保ちつつ正確な射撃をスパイダーに放った。
彼の遠距離からの支援攻撃は、戦況に大きな影響を与えた。
野口部長もまた、自らの殺鬼刀を変化させ、鎧を纏った戦士のような姿になり、戦闘に加わった。
彼の変化した殺鬼刀は、彼の強力な防御力と攻撃力を同時に発揮させる。
「いくぞ!」
野口部長の掛け声で四人は完璧な連携でスパイダーに攻め込んだ。
綾美の針、剛の斧、金子さんの矢、そして野口部長の圧倒的な力が結集し、スパイダーを包囲攻撃した。
この組み合わせによる攻撃は、スパイダーに対して圧倒的なダメージを与え、彼女の動きを一時的に封じ込めた。
一斉に放たれた四人の攻撃は、まるで一つの大きな波のようにスパイダーを襲い、彼女を戦闘不能に追い込んだ。
この戦いでの結束力と連携の見事さは、綾美たちにとって大きな自信となり、彼らの絆をさらに深めた。
スパイダーとの戦いを通じて、綾美たちはレッドツリーの脅威に立ち向かうための新たな力を手に入れたのだった。
スパイダーが戦闘不能に陥ったのを確認すると、野口部長が即座に「回収班!早く!」と指示を出した。
その声の後ろから、白い服を着た回収班が迅速に現れ、スパイダーからVセルの回収作業を開始した。
金子さんがその様子を見て、「これはええ殺鬼刀になるで」と感想を漏らした。
殺鬼刀はヴァンパイアのVセルを原料として作られるため、AランクのヴァンパイアのVセルは特に価値が高い。
回収班はこうした状況下でVセルを確保し、殺鬼刀の製造に不可欠な原料として利用するのだ。
野口部長も同意して、「Aランクのヴァンパイアから作った殺鬼刀はきっと強力に違いない」と語った。
その強化された殺鬼刀は、今後の戦いにおいて大きな助けとなるに違いなかった。
しかし、彼らがその成功を喜んでいる間も、戦いはまだ終わっていなかった。
突如、新たな敵が姿を現した。
「お嬢ちゃん、久しぶりね」と、一度俊也の力で人間に戻ったはずのマエストロが、触手を振りながらニッコリと笑っていた。
その再登場に、綾美たちは緊張を強いられる。
かつての敵が再びその力を取り戻し、彼らの前に立ちはだかったのだ。
この予期せぬ再会は、綾美たちにとって新たな挑戦を意味していた。
綾美が困惑の色を隠せずに、「お前、何故またヴァンパイアの姿に?」とマエストロに尋ねた。
その質問に、マエストロは笑いながら、「パンプキンマンに噛んでもらってヴァンパイアに戻してもらったのよ」と軽く答えた。
綾美は、一度人間に戻れたのにも関わらず、再びヴァンパイアを選んだ者がいることに驚きを隠せなかった。
金子さんが冷ややかに「こいつ、狂ってんな」と呟いた。
マエストロはそれに動じることなく、軽い身のこなしで四人から適切な間合いをとった。
そして、彼女は続けて、「安心して、今の私はヴァンパイアを操る力も俊也君に取られたままだし、あなたたちの方が強いわよ」と言った。
しかし、その後の彼女の言葉は、一同に新たな緊張をもたらした。
「でもね。彼とならあなた達に勝てるかも」とマエストロが笑うと、突如地面から全長五メートルはありそうな白いジェイソンのような仮面をつけた巨人が現れた。
その巨体と圧倒的な存在感は、綾美たちに未知の脅威を予感させるものだった。
マエストロの言葉とこの新たな敵の出現は、彼らにとって予期せぬ挑戦の始まりを意味していた。
「こいつは未確認のヴァンパイアだ。気をつけろ」と野口部長が皆に警告した。
この巨人ヴァンパイアに関する情報はヴァンパイアハンター協会のデータベースにも存在せず、そのランクも不明であった。
マエストロがこちらの戸惑いを察するかのように、巨人ヴァンパイアの肩に軽やかに乗り、「彼のランクはSランクに限りなく近いわよ」と明かした。
その言葉に、剛は「Sランクだって……」と言葉を失った。
綾美も、その知らせに失望し、不安が顔に浮かんだ。
しかし、野口部長は断固として「Sだろうがやるしかない」と言い、決意を新たにした。
その言葉を皮切りに、野口部長は一気に巨人ヴァンパイアに接近し、勇敢にも切りかかった。
その攻撃は、巨人ヴァンパイアによって容易にはじき返され、野口部長は吹き飛ばされた。
しかし、鎧を纏っていたおかげで、幸い大きなダメージを受けることはなかった。
野口部長は素早く立ち直り、間合いを取り直して戦略を立て直した。
「金子と黒崎君は距離を取りながら攻撃を仕掛けろ」と金子さんと綾美に指示し、二人に遠距離からの支援を命じた。
さらに、「剛田君と私は隙をついて接近し、攻撃をする」と、自らと剛に接近戦を指示し、彼らはそれぞれの役割に応じて動き出した。
この瞬間、彼らは未知の強敵に立ち向かうため、それぞれの強みを活かした連携プレイを展開する準備を整えた。
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