第18話
野口部長は「その厄介な触手をどうにかしないとな」と言い、その言葉を証明するかのように、驚異的なスピードで僕の触手の一本を切り裂いた。
激痛が僕を襲い、思わず声を上げそうになった。
「悪いが本気で行かせてもらうよ」と言うやいなや、彼はもう一本の触手をも切り裂いた。
僕は激痛の中、野口部長から離れようと試みたが、彼はそれを許さなかった。
野口部長の圧倒的な力と、彼の容赦ない攻撃に、僕は恐怖を感じ始めていた。
「くそ、このままだとやられる」と心の中で思いながらも、どう立ち向かえばいいのかが見えなかった。
野口部長はさらにもう一本の触手を切り裂き、僕にダメージを与え続けた。
彼の攻撃は容赦がなく、僕の中で「やはり、敵わないのか」という絶望的な気持ちが大きくなってきた。
そして、その瞬間、野口部長は僕の背中にタッチした。
そのタッチは、僕にとっては敗北の印だった。
しかし、それ以上に、野口部長との戦いから学んだこと、感じたことは計り知れない価値があった。
僕の限界を超えること、そして自分の能力のコントロールについて深く考えさせられた戦いだった。
戦いが終わった後、野口部長は僕に近づき、「よくやった。お前の力は本物だ。しかし、まだまだ成長する余地がある。その力を正しく使い、さらに磨いていけ」と励ましの言葉をくれた。
この戦いは僕にとって、今後の成長への大きな一歩となった。
僕はこの敗北を糧にして、より強く、賢くなることを誓った。
野口部長との戦いを経て、白木さんから正式にシルバーウォールを守るためのヴァンパイアたちを人間に戻す作戦「ヴァンパイア人間化作戦」の実行を許可されたことを聞いた。
そして、その新たな任務の一環として、今日はシルバーウォールにいるヴァンパイア、クラッシャーを人間に戻すための戦闘に挑んでいた。
クラッシャーは、かつて野口部長を苦しめたと言われるAランクのヴァンパイアだが、野口部長ほどの脅威ではないはずだ。
彼はゴリラのような身体を持つ力強いヴァンパイアで、その名の通り、無類の破壊力を誇る。
しかし、僕は野口部長との戦いを通じて得た経験と自信を持っていた。
クラッシャーの一撃は確かに強力だが、僕は彼の攻撃を何とかかわしながら、反撃の機会を伺っていた。
この戦いでは、僕の速さがクラッシャーの力に対抗する鍵となる。
僕の身のこなしと、クラッシャーの力の衝突は、まさに力と速さの戦いの象徴だった。
クラッシャーが野口部長ほどではないという事実は、僕にとって心の支えであり、この戦いにおいても僕は自分自身を信じ、クラッシャーの攻撃を巧みに避けつつ、彼を人間に戻すための瞬間を待っていた。
クラッシャーを人間に戻すことは、「ヴァンパイア人間化作戦」における必要な通過点であり、僕たちの目的に向けた大きな前進となる。
僕は自分の能力と、野口部長との戦いで得た学びを活かし、この挑戦に立ち向かっていた。
僕は一瞬の隙をつき、クラッシャーの首に噛み付いた。
その瞬間、彼からヴァンパイアの力を奪い、人間に戻すことに成功した。
この行為により、僕はまたAランクのヴァンパイアの力を手に入れた。
その時、僕の頭の中でまたしても声が響いた。
「いいぞ。それでいい」という声だった。
この声に、僕は少し不安を感じたが、ヴァンパイア人間化作戦を成功させ、レッドツリーの企みを阻止することに意識を集中させた。
こうして僕は、シルバーウォールに収容されているヴァンパイアたちの力を次々奪っていった。
クラッシャーの次には、「ウインク」と呼ばれる女のヴァンパイアと戦った。
彼女もAランクのヴァンパイアで、色っぽい姿でありながら、その内に凶暴さを秘めていた。
彼女は幻覚を作り出す能力を持っており、厄介な相手ではあったが、僕は彼女を倒すことができた。
さらに、次に挑んだのは「ムカデ」というヴァンパイアだった。
彼はその名の通り、ムカデのような姿をしており、とても素早く、やりづらい相手ではあった。
しかし、ヴァンパイアの力を吸収するたびに強くなった僕はウインクの力も使い、ムカデも倒すことができた。
この連続した戦いを通じて、僕は自身の力が確実に成長していることを実感した。
しかし、それと同時に、僕の中で声が響くたびに感じる不安も大きくなっていった。
それでも、僕は自分の使命に集中し続け、シルバーウォールに収容されているヴァンパイアたちを一人でも多く人間に戻すことに専念した。
僕の戦いはまだ終わらない。
レッドツリーに対抗し、人々を守るため、僕はこれからも戦い続ける。
突然、シルバーウォールの静寂を裂くような緊急事態のサイレンが鳴り響いた。
その不穏な音に、僕らの緊張は一気に高まり、何が起こったのか理解しようと周囲を急いで見渡した。
その時、白木さんの携帯が不吉な予兆を運んで鳴り、彼が受話器を耳に当てると、レッドツリーからの襲撃が始まったとの知らせが入った。
電話を終えた白木さんは、静かながらも重い声で、予め予測されていたレッドツリーの襲撃情報が偽情報であったこと、そして実際に今日が彼らによる襲撃の日であったことを告げた。
この突然の展開に、僕は心の底から不安を感じた。
まだ多くのヴァンパイアを人間に戻せていない現状では、レッドツリーの襲撃に対抗するのは極めて困難だ。
「応援は急いでいる。しかし、それが到着するまでは、我々でこの場を守り抜かなければならない」と白木さんは静かに言った。
その言葉には、これから迫りくる危機への覚悟が感じられた。
僕らは、一言も交わさずに殺鬼刀を解放させ、シルバーウォールを守るための戦いに備えた。
僕らは、心を一つにして、レッドツリーの襲撃に立ち向かう準備をした。
これまでにないほどの重圧が僕らを包み込む中、僕らは闘技場を後にし、シルバーウォールの最も脆弱な場所へと急いだ。
この瞬間、僕らの殺鬼刀はただの武器ではなく、シルバーウォールを守るという強い意志を象徴していた。
レッドツリーの暗雲がシルバーウォールの上に迫りくる中、僕らはシルバーウォールを守り、その野望を阻止するために、自らの命を賭ける覚悟を決めた。
僕らに託された任務は重く、前途は多難であるが、僕らはそれを遂行するために、全てを捧げるつもりでいた。
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