第15話

僕と白木さんはシルバーウォールの深く、厳重に警備された区域へと進んだ。


空気は重く、歩くたびに足音が響き渡る。


我々が目指すのは、Bランクのヴァンパイア「ベアー」が収容されている部屋だった。


白木さんからの説明によれば、ベアーはかつて数多くの犠牲者を出した恐れられた存在だ。


部屋の中央に、真銀の手錠をされ、牢屋に閉じ込められたヴァンパイアがいた。


その手錠からは、かすかに青白い光が放たれている。


白木さんは、その手錠の重要性を説明した。


「これがなければ、奴らはいつでも我々を襲うことができる。だが、この真銀の手錠があれば、ヴァンパイアの力を封じることができるんだ」


僕は綾美もマエストロとの戦いで使っていたが、その手錠について詳しく聞いたことがなかったため、白木さんにその詳細を尋ねた。


「ヴァンパイア専用の手錠は、Vセルの活動を弱める特殊な金属、真銀でできている。ヴァンパイアがこの金属に触れている間は、彼らの力は完全に封じられる」と彼は言った。


僕たちは牢屋に閉じ込められたベアーを静かに見つめた。


その目には、かつての凶暴さはなく、ただ閉じ込められた運命を受け入れた諦めのようなものがあった。


白木さんの提案する作戦の重大さを理解しつつ、僕は深い決意を固めた。


どれほどの危険が伴おうとも、シルバーウォールの襲撃を防ぎ、そして妹を取り戻すためには、僕はこの力を使わなければならない。


その覚悟を胸に、僕は白木さんに「やってみます」と静かに答えた。


白木さんが深呼吸をした後、ベアーのいる牢獄の鍵をゆっくりと開けた。


鍵が開く音が響き渡る中、僕は牢屋の中に一歩踏み込んだ。


ベアーは牙を剥き出しにし、僕に向かって威嚇の声を上げた。


その目は野生の獣のように僕を睨みつけていた。


緊張を抑えながら、僕は一瞬でベアーに近づき、彼の首筋に噛み付いた。


その瞬間、ベアーは苦痛の声を上げたが、人間に戻る様子はなく、僕自身もベアーからヴァンパイアの力を奪えた感じはしなかった。


僕たちの間には、混乱と疑問が広がった。


僕はベアーから離れ、白木さんの方を向いた。


「もしかしたら、手錠の効果によってベアーのVセルの活動が低下しているため、力を奪うことができないのかもしれません」と僕は推測した。


僕の言葉を聞いた白木さんは、顎に手を当てて深く考え込んだ。


「それが原因かもしれないな。真銀の手錠がヴァンパイアの力を封じると同時に、お前の力による干渉を防いでいる可能性がある」と白木さんは言った。


僕たちの前に立ちはだかるこの新たな障壁は、想定外のものだった。


僕たちはこの状況をどう乗り越えるか、新たな対策を練る必要があった。


深く考え込んだ末、僕は白木さんに重大な決断を下すようお願いした。


「白木さん、ベアーの手錠を外してください。Vセルが活動状態になれば、ジャックやマエストロと同様に力を奪うことができるはずです」と提案した。


僕の言葉に、白木さんは慎重に「本当に大丈夫か?」と尋ねた。


「僕は過去にジャックとマエストロを倒した実績があります。大丈夫だと思います」


その言葉に、白木さんは僕の決意を理解し、リモコンを操作してベアーの手錠を外した。


次の瞬間、ベアーは大声を上げ、僕を見て笑った。


その笑みは嘲笑に満ちていたが、僕は恐れずに彼の方へと進み出た。


僕の心は決していた。この一歩が、僕たちの戦いにおいて大きな転換点となることを知っていた。


手錠が外されたことで、ベアーのVセルは急速に活動を始め、彼の力が増大していくのが感じられた。


しかし、僕もまた、過去の戦いで得た経験と力を信じ、ベアーとの対峙に備えた。


この瞬間、僕はただヴァンパイアを倒すだけでなく、彼を人間に戻すことによって、レッドツリーの野望を阻止する目的があることを再確認した。


「ふぅー」


ベアーとの直接対決が始まる前に、僕は深呼吸をし、自分自身を鼓舞した。


この戦いが、僕たちの未来を左右することを知りつつ、僕は前進した。


そして、僕は「解放!」と叫びながら殺鬼刀を構えた。


その瞬間、ベアーは恐ろしい叫び声をあげ、熊のような姿へと変貌した。


彼の身体は膨れ上がり、力強い脚で地面を蹴り、すごい勢いで僕に向かってきた。


咄嗟に身をかわし、僕はかろうじてベアーの最初の突進を避けた。


しかし、彼はすぐに方向を転じ、巨大な爪で僕に攻撃を仕掛けてきた。


僕は殺鬼刀でその攻撃を防ぎながら、少し間合いをとった。


ベアーの力は予想以上に強力で、一撃が重く、僕を圧倒しようとした。


「一本じゃ、無理か」と僕はつぶやいた。


そして、僕はジャックから引き継いだ力を呼び覚ますことにし、二刀流の姿となった。


僕の右手には殺鬼刀、左手にはジャックの力が宿ったもう一本の刀が現れた。


この二刀流で、僕はベアーに立ち向かう準備を整えた。


ベアーは再び僕に襲いかかってきた。


その動きは速く、力強かったが、僕は彼の攻撃をかわし、反撃の機会をうかがった。


僕たちの間で繰り広げられる戦いは激しく、僕は全ての力を使ってベアーを人間に戻すために戦った。


この戦いは、僕にとっても新たな挑戦だった。


しかし、僕はベアーを人間に戻すという目的のために、どんな困難にも立ち向かう決意があった。


僕とベアーの戦いは、シルバーウォールの静かな夜を破る激しいものとなった。


ベアーの爪がさらに伸び、その先端からは鋭い刃のような光が放たれていた。


彼はその恐ろしい爪を振り回し、僕を狙う。僕は二本の刀を駆使して、ベアーの激しい攻撃をかわしながら、反撃の機会をうかがった。


その時、白木さんが「ベアーは接近戦が得意だ。距離をとって攻撃をしろ」とアドバイスを送ってきた。


しかし、僕には綾美のように針を飛ばすような技が使えない。


僕はどうすれば良いのか、一瞬頭を悩ませた。


しかし、すぐに僕は決断を下した。


ジャックの力を活かし、速度と機動性を最大限に利用して、ベアーとの距離を保ちながら攻撃を仕掛けることにした。


僕は地を蹴り、ベアーの周囲を素早く移動し始めた。


ベアーが再び爪を振り下ろしてきた時、僕はその一瞬の隙を見逃さず、反撃に転じた。


僕の刀がベアーの脇腹を掠め、彼の動きを一時的に鈍らせることに成功した。


この戦いは、僕の判断力と反射神経を試す厳しいものだったが、僕はベアーを人間に戻すため、そして自分自身の限界を超えるために戦い続けた。


白木さんのアドバイスを念頭に、僕はベアーとの間に適切な距離を保ちつつ、戦いの主導権を握るために全力を尽くした。


この激しい戦いの中で、僕は自分自身の成長を感じるとともに、レッドツリーに立ち向かう覚悟を新たに固めていた。

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