ヴァンパイアハンター 〜僕は拐われた妹の為に吸血人になる〜

第5話

白木さんが「今日は現れないのかも知れないな」と言った瞬間、僕は内心でほっとしていた。

しかし、路地裏に入った瞬間、綾美が何かに気づいたのか、後ろを急に振り返る。

「ジャック！」と白木さんが叫ぶと、瞬時に殺鬼刀を解放する綾美。

ジャックは木で出来た仮面をかぶっており、それが余計に恐怖を感じさせた。

そして、僕もワンテンポ遅れながらも解放する。

ジャックは話に聞いた通り、巨大な刀となった左腕を振り回しこちらに向かってきた。

白木さんが「綾美！」と叫ぶ中、綾美はジャックの迫る攻撃をなんとか殺鬼刀で防いだ。

「速いし、重いよ。こいつの攻撃」と綾美が呟く、一方、ジャックは再び綾美に向かって高速で攻撃を仕掛けてきた。

綾美は必死でジャックの攻撃を防いでいるが、そのスピードに対抗するのは容易ではないようだ。

白木さんが「行くぞ！俊也」と叫ぶと、僕も殺鬼刀を握りしめて、ジャックに向かって行った。

白木さんの殺鬼刀が紅く輝き、綾美を襲うジャックに果敢に立ち向かう。

しかし、その一撃を巧みに防ぐジャック。

「触手だと？」と白木さんが驚き、ジャックの腰から赤い触手が現れ、白木さんの攻撃をなんとか阻んだ。

僕は勇気を振り絞り、白木さんの援護に向かい、ジャックに斬りかかる。

ジャックは綾美に向けていた巨大な刀を今度は僕に向け、攻撃を見事に受け止めた。

その圧倒的な力に驚きつつも、僕は持つ殺鬼刀を奮ってジャックに立ち向かった。

彼の左腕は恐ろしい大型の刀と一体化しており、それが不自然に光る中、ジャックは僕にに迫った。

彼は言葉を交わす代わりに、深く、野性的な「グォー」という雄叫びを上げた。

その雄叫びが響く中、ジャックは腕を振り上げ、一体化した巨大な刀で俊也を襲った。

僕は必死になって、その攻撃を殺鬼刀で受け止めた。

僕はジャックの力に抗いながら、反撃のチャンスを伺うが、ジャックの圧倒的な力に後退させられた。

その瞬間、綾美が殺鬼刀を構えて飛び込んできた。

彼女は迅速にジャックに近づき、殺鬼刀で攻撃を仕掛けた。

しかし、ジャックは素早く反応し、綾美を強力な一撃で吹き飛ばした。

「綾美！」と僕が叫ぶと同時に綾美は地面に激しく叩きつけられたが、なんとか立ち上がろうとした。

その動きは鈍く、痛みに顔を歪めていた。

この絶望的な状況の中で、僕は深呼吸をして、自分自身を奮い立たせ、ジャックに再び立ち向かう決意を固めた。

路地裏の緊張がピークに達していた。

白木さんがその殺鬼刀を構え、「殺鬼刀よ、変化せよ」と言うと、刀身がまるで蛇のようにうねりながらジャックを翻弄している。

その巧みな動きに、一瞬の隙が生まれた。

これだ、攻撃のチャンスと思った矢先、綾美が素早くジャックへと飛び込んでいった。

彼女の動きは激しく、殺鬼刀を振り回しながらジャックに襲い掛かる。

僕も躊躇わずに彼女に続き、ジャックに向かっていった。

だが、その時、綾美がジャックの強烈な一撃を受けてしまい、吹き飛ばされたのだ。

反射的に体を動かし、綾美を追うように前に進んだが、僕は綾美と衝突してしまった。

僕たちは路地裏の冷たい地面に転がり、しばらくの間、動けなくなった。

だけど、その衝突が彼女をさらなるダメージから守ったようだった。

僕が彼女の衝撃を和らげたことで、綾美は軽症で済んだのだ。

地面に倒れたまま、一時的な安堵を感じながらも、僕たちは再び立ち上がる準備をした。

ジャックとの戦いはまだ終わっていなかった。

心配そうに綾美を見つめながら、僕は自分自身を奮い立たせた。

僕たちの前には、まだ強敵ジャックが立ちはだかっている。

僕たちとジャックは、路地裏でしばらく睨み合った。

すると、雨が急に降り始めた。

雨がポツリ、ポツリと降る中、緊張が一層高まる。

白木さんが前に出て、その殺鬼刀を再び蛇のようにうねらせながらジャックに向けた。

刀身が不規則に動き、ジャックを翻弄する。

ジャックは、その予測不能な動きに苦戦し、一時的に防御に回った。

その間隙を見逃さないように、綾美がすばやく行動に移った。

彼女は白木さんが作り出した隙をついて、ジャックに激しい一撃を加えた。

その攻撃が決定的で、ジャックがつけていた木の仮面が粉々に割れた。

仮面の破片が飛び散る中、ジャックの顔が現れた。

その顔を見た瞬間、綾美は凍りついた。ジャックの正体は、事故で死んだと思われていた綾美の父親だったのだ。

「パパ……」

綾美は小さく呟いた後、その事実に直面し、ショックで言葉を失った。

彼女はその場に立ち尽くし、身動き一つ取れなくなった。

その表情は、深い悲しみと信じられないという感情が交錯しているようだった。

僕と白木さんも、その衝撃的な展開に何を言っていいかわからず、ただ無言で立ち尽くすしかなかった。

ジャックは、自分の前にいるのが自分の娘であることを認識していないのか、一瞬の迷いも見せずに綾美に斬りかかった。

その瞬間、僕は慌てて綾美の前に駆け寄り、ジャックからの一撃を必死に防いだ。

その後、白木さんが再び前に出て、巧みに殺鬼刀を操り、ジャックを再び翻弄し始めた。

白木さんの技術により、ジャックは僕たちから引き離された。

僕はジャックとの距離ができたその瞬間、綾美に向き直り、「大丈夫か？」と尋ねた。

綾美は呆然とした様子で、信じられないといった表情で小さな声で、「パパがジャックなんて……」と呟いた。

そして、彼女の目からは涙があふれ始めた。

綾美が泣き始めると、僕は彼女の肩を優しく抱きしめ、「ジャックが綾美のお父さんなら、僕はジャックを救うよ」と力強く言った。

僕の言葉は、この混乱とショックで満ちた状況の中で、綾美に少しでも安心を与えることができればと願いながら発したものだった。

もし、可能性が少しでもあるのなら賭けてみよう……

僕はそう思いながら、刀を強く握りしめた。