四
四
朝の九時頃、
行先は大抵近所の店である。今日も今しがた
八百屋の
店に向つて步いて來る黃さんを認めた時、
果たして、
「オカミサン、菜ツ葉アルカ?」
「オカミサン、オカミサン…… オカミサン! 菜ツ葉アルカト聞イテヰルノダヨ! オカミサン、聾ニナツタカ?」
「何だい、
「オカミサン! 菜ツ葉ダヨ!」
「菜つ葉なら、ほら、
意趣返しの
「――あゝ、だめ〴〵、
「オカミサン、何言ツテルカ? コノ菜ツ葉、ワタシ、買フノダヨ。――アノネ、デモネ、コナイダノ菜ツ葉、ペケヨ。半分、クサテタヨ。タカラ、今日、タクサン、オマケスル、ヨロシ」
「何云つてんだい。うちの品物に云ひ掛かりを附けるのはよしとくれ! 全く外聞が惡い。
「オカミサン、ソンナ事、云ハナイ、ヨロシ。ワタシ、御客ヨ。オカミサン、御嫁ニ來ル前カラ、ワタシ、
さう云つて、
「そんなら、買はなけあ、いゝぢやないか! うちは
「オカミサン、損シテ得取レ云フヨ。知ラナイカ? 今日、オカミサン、オマケスル。ワタシ、義理出來ル。ワタシ、明日、タクサン買フ。オカミサン、
値段の交渉では、大抵、黃さん側に軍配が上がる。八百屋の
「ほんと、支那人てのは食へないもんだよ」
黃さんが
「ほんとにねえ」
向ひの
<續>
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