第9話 水着お姉ちゃん

「やっほー。水着お姉ちゃんだよっ♪」

 水着姿で現れるネネ。

 刺激が強すぎて鼻血を吹く。


「あれ~。どうして顔がまっ赤なのかな?」

 くすくすと笑うネネ。


「ふーん。普段のわたしには見せない顔だよね。そういうの、嫌いじゃないよ♡」

 チュッと投げキッスをするネネ。


「ふふ。かっわいいー」


「ため息なんて吐いてどうしたの?」


「あ。分かった。疲れているんだね! 疲れをとるいい方法があるよ!」


 ネネはベッドの端に座り手招きする。


「さ。膝枕だよ~」


「え。なんで? って。もちろん癒やすためだよ?」


「ふふ。いいから、おいで」


「もうワンちゃんみたい」


「――あぁ……。ごめんて。わたしには可愛い子ってこと。深い意味なんてないんだから!」


「もう、ごめんて。耳かきもしてあげるから」


 膝枕を受け入れる。


「そうそう。いい子いい子。わたしのとりこになりなさい」

 耳かきをする音。


「どう。気持ちいい?」


「ふふ。素直に答えていいんだよ」


「大丈夫。大丈夫。キミならどんなことだって乗り越えられる。こんなに頑張っているんだから」


「きっといいことあるって。キミにいいことがなかったら、お姉さん、どうなるのよ」


「あのね。わたし、いつも強がってばかりだった。でもそれも必要ないんだって分かった」


「キミがそう思わせてくれたんだよ? 素直なことが人の役に立つこともあるんだ」


「そう。誠実で素直で、優しくて……。キミみたいな人なかなかいないよ」


「ネットでは自由に書いているけど、実際は弱いものね」


「ネットにコメントを投稿したとき、一喜一憂して」


「それはもう可愛いんだから」


「ふふ。ごめんね。でもキミは自分のコメントに反応が返ってくるとすごい喜ぶじゃない」


「そんな姿も魅力的なんだよ」


「あー。分からないんだ」


「じゃあ、わたしの中だけで楽しむね♡」


「キミが引きこもりになってから、心ない言葉を投げてくる人もいたけど、お姉ちゃん、知っているから」


「みんなみんな知っているから」


「キミの中でどんな葛藤があったのか、責任と、罪悪感で押し潰れて……」


「だから、だから、頑張っているキミはきっと大切なことを見てきているよ」


「働かなくてもいい。そんな世の中を作るのが人の責任かもね」


「うん。分からないならいいんだ。でもみんなどこかで感じているはずだよ」


「きっとキミも、感じているんだ」


「悪いことなんてしていない。ただただ疲れちゃっただけだよね」


「ごめんね。今まで気がつかなくて」

 ボロボロと泣き始めるネネ。


 額にキスをするネネ。

「ありがとう。生まれてきてくれて」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る