第7話 オムライスと課金

 具材を刻む音。


 卵を割る音。

 カチャカチャと卵をかき回す音。

 フライパンでお米を炒める音。

 皿に移す音。

 卵を焼く音。


「はい。できたよ。わたし特製オムライス! ケチャップだけどね」


「デミグラスは難しいのだよ。ささ。食べて食べて!」

 テンション高めのネネ。


「あ。ケチャップでも文字書くね」

(あいしている)と書く。


「ささ。今度こそ食べて!」


「どう? どう……!?」


「良かった。嫌いじゃないんだね」

 パクッとオムライスを食べるネネ。


「うん。思った通りの味ね。ふふ、キミが喜んでくれるなら、わたしも嬉しいよ」


「毎日作ってあげるね♪」


「え。毎日オムライス? ち、違うよ! わたし他の料理も作れるよ?」


「む。からかったのね。もう、キミはそういうところがあるよね」


「そうだよ。前にお弁当を作ってあげたじゃない」


「もう、それも忘れたのかと思った」


「昔はお姉ちゃんと結婚する、って言ってくれたのに」


「若気の至りって、まだキミも若いでしょう?」

 小さいため息を吐くネネ。


「大人ぶっても無駄だからね。もう、なんでそんなに自分を過小評価していうのよ」


「いい。誰でも誰かにとって尊い存在なの。人は祝福されて生まれてきたんだから」


「そんなにポジティブにはできないかもだけど、でも分かってよ」


「わたしはキミが好きなの。キミしかいないの」


「だから、自分を追い詰めるキミを見ていると悲しくなる……」

 じわっと涙目になるネネ。


「ごめんね。暗い話になっちゃったね」


「そうそう。スマホゲーでガチャ回そうと思ったのだけど、キミとならいいものがでそうな気がするんだよね」


「え。運ないよ? って? 大丈夫、大丈夫。愛のパワーでなんとかなるって♪」


「ほら、一緒にみてよ……!」


「行くよ!」

 ゴクリと生唾を呑み込む音。

 震える手で操作をする。

 ガチャのボタンを押す。


「おっ。虹が二つ! やっぱり運がいいよ!」


「え。あ、うん……」


「全部持っているキャラだった……」


「で、でも、もう一回ひけば当たる気がするんだよね! 今度はキミが押して!」

 気合いをいれて押す。


「おっ。ほらほら。虹が一つ……まあ、可能性はあるよねっ!」


「うん。確定演出きた!!」


「あ。うん。はい」


「見たことのあるやつだった……」


「うん。大丈夫。当たるまでひけばいいんだよね!?」

 ガチャを回す音。

 課金をする。


「はははははは。すごいすごいよ! 持っていないのばかり!」


「え。ここまで何回回したの? って。そんな些細なこと気にしちゃダメ」


「わたしは課金は礼儀だと思うし!」


「キミにも課金したいな~」


「ごめん、変なこと言った」

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