第4話 歌姫(2)
次の日学校へ行くといつもより穏やかな顔をした彼女がいた。今日は話しかけようと気合を入れてきたけど、何と話しかけようか考えているといつの間にか放課後になってしまった。話しかけると強く決意をし、声をかけようとした時、「詠輔、今日カラオケ行かね?クラスの奴ら何人か来るんだけど。」と友人の央太が言ってきた。カラオケと聞いた瞬間咄嗟に聞いた。「それ女子もくるの?」すると、「お前何彼女作ろうとしてるのかよー!抜け駆けは許さんぞ!今んところ3人くるけど?」と言った。女子が何人か来る。それなら詩歌ちゃんも誘える。そしてすぐに、「詩歌ちゃん僕たち今からカラオケ行くんだけど良かったら一緒に来ない?」と聞いた。周りの女子は少し嫌な顔をしていたが、央太が、「おおいいじゃん一緒に行こうぜ。」と言ってくれ、詩歌ちゃんも「良かったら行きたいです。」と言い一緒に行くことになった。
カラオケに向かう途中、「迷惑じゃなかった?」と詩歌ちゃんに尋ねると、「ううん、全然迷惑じゃない。誘ってくれてありがとう。」と言ってくれた。
カラオケに着くと、話しながら歌いながらで何とか盛り上がった。女子の方も最初はギクシャクしていたが、時間に経つにつれ仲良くなっているようだった。そして、詩歌ちゃんが歌う番になった。歌手になりたいと言っていた彼女はどんなふうに歌うのだろう。そう思っていると始まった。彼女は力強く歌っていた。
“君を想い詞を書くけど 君はきっと気づかない”
“君の笑顔をココロにおさめて 僕は前へ進む”
きっと恋愛ソングなんだろうけど、この歌を歌う詩歌ちゃんを見るとお母さんへ届ける歌に聞こえた。
歌い終わるとみんな圧巻されていた。女の子の1人が泣いていた。それを見て詩歌ちゃんは焦っていた。「ごめん、どうしよう、え、なんで。なんかあった?」というと泣いていた神田さんが「違うの、感動した。誰かが歌う歌で感動したの初めてで、私も驚いてる。詩歌ちゃんって歌上手いんだね。」と言った。それからみんなが次々と、「本当にうまいよ。」「歌手になれる。」「ほんとに感動した。」と感想を言う。詩歌ちゃんは恥ずかしがりながらも嬉しそうだった。今日カラオケへ誘って本当によかった。そう思っていると詩歌ちゃんが口を開いた。「あのね、私歌手になりたいんだ。中学生の時歌手になりたいって仲良かった友達に話したら、笑われて馬鹿にされて、それから人と話すのが少し怖かったんだ。今日カラオケに来て神田さんや木下さん、黒川さんと話せて仲良くなれて嬉しい。誘ってくれてありがとう。」と言った。そうすると黒川さんが「私詩歌ちゃんのこと全然知らなかったのに嫌な態度とったことあったと思う。ごめんね。でも本当に歌声に感動した。私応援する。歌手になれるよ!」と言い、続けて木下さんが「あのさ、学校祭もう少しであるじゃん?歌いなよ、ステージで。募集してるんだよ有志発表。私たち手伝うから!出てみなよ!!みんなに聞かせないと勿体無いよ!!」と言った。この言葉を聞いた詩歌ちゃんは涙ぐみながら「私出てみる。お母さんに届けたい。私のお母さんね、余命宣告されているんだ。だから私が歌手になる頃に生きているかわからないの。だから…みんなお願い私に力を貸してください。お母さんのために書いた曲があってそれを歌いたい…!」と言い、その場にいた全員が縦に頷いた。
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