Ⅴ. uanset hvor langt du går
それから私は有紗のいる
また彼女の暮らすことも考えたが、今の私では、有紗とまた一緒になったところで彼女との生活が満足の行くものにはならない。だから、せめて彼女の日々の生活と評価の糧になればと、私は彼女を指名し続けた。
「仕事はどうなったの」
「解雇された」
彼女に訊ねられ、即答する私を見て、有紗は再会してから一番の複雑な表情を見せた。
「どうして」
「業務情報の集積が完了した。もう生体部品管理の仕事に、人間は必要ない。全て人工知能で事足りる」
「だったら君は、こんなところでお金を使ってる場合じゃない」
「情報集積に対する報奨金が出てる。暫くは働かなくても生きていける。それに
「そんなの奴隷と一緒」
出来るだけ穏やかに、冷静に話そうと心掛ける私に対し、有紗はそう吐き捨てた。
「最小限の報酬で生かされて、それから脱する術もない。そんなの、正しく奴隷としか言いようがない」
「
「それは人間としての尊厳を踏み躙ってる」
「じゃあ君はどうなんだ。君の今の生活や仕事を見てみろ。君の言う尊厳とやらはどこにある」
私は彼女の物言いを聞きながら、思わず頭に血が上った。私は言ってから、後悔した。今の言い方は駄目だ。けれど、そう思った時にはもう遅かった。有紗は私を哀れみの眼で見つめる。それから言葉を交わすことなく、事務的に処理する有紗の手と口で、私は絶頂を迎える。
「またのご利用をお待ちしています」
そう無機質に語り、部屋から出る有紗を呼び止めようとしたが、声が出ない。私の眼から涙が溢れる。啜り泣く声は彼女にも届いている筈だが、彼女は私に背を向けたままだ。
「少なくとも私は、自分で選んで、自分の為に生きている」
部屋を出る直前、有紗はそう口にして、私の前から姿を消した。次の日、私はまた
「え」
――有紗が死んだのを知ったのは、それから三日後のことだった。
自宅での首吊りだったらしい。発見したのは、国が彼女との連絡が取れなくなった為に派遣された
私は葬式の後、彼女が居た
「大丈夫ですか?」
私を心配した風で話しかけてくる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます