Ⅳ. Der er ingen retfærdige mennesker.
有紗の所属する
「いらっしゃい」
「どうする? 早速する?」
「話をしに来たんだが」
有紗は私の態度に大きく溜息をつく。それから、私の唇に吸い付くように己の唇を被せ、舌を捩じ込ませた。私は腹を括ってそれに応える。有紗の頭を抱き締め、舌を絡め合った。彼女の下半身に手を伸ばす。有紗は一度唇を離し、「触りたいの?」と私に尋ねた。私は声を出さずに首肯する。有紗は納得した様子で私の腕を掴み、自ら私の手を下腹部に触れさせた。そのまま有紗は乱暴に服を脱ぎ去る。そして有紗の下腹部に伸ばすのとは反対の方の腕を自身の背中に回させた。弾力のある、柔らかな肌。この感触を私はよく知っていた。私が管理していた生体部品を利用した人工皮膚だ。元々、事故の後に脚を義足に
「有紗、その体」
「わかる? もしかして君、他の
「そういうわけじゃ」
有紗の問いを一瞬否定しようとしたが、無駄な悪足掻きだと直ぐに諦めた。
「へえ、君が」
「体の変化に気付いたのは、生体部品の管理をしていたからだ」
「そういうことにしといてあげる」
有紗は私の唇にもう一度吸い付いた。当然と言えばそうだが、ポルニアの
「君は自分から誘って来たことななかったよね」
「それは、有紗が大事だったから」
「違う」
有紗は首を横に振る。自身の下腹部に伸びる私の手を再度掴み、その手を自分の口に持っていく。有紗は自分の体液がついた私の指を、一本一本しゃぶっていった。
「君が臆病なだけだ」
「臆病な人間が、こうして会いに来るものか」
「そうだね、それは、褒めてあげる」
有紗は私の指を丁寧にしゃぶり尽くすと、今度はゆっくりと私の服も脱がせていく。下着も脱がされ、狭い部屋の中で屹立する性器が露わになる。
「手? 口?」
「口」
即答する私の言葉に、有紗は二度頷くと、大きく口を開けて私の性器を咥えた──。
🕷️
「この
私も有紗は、布団の上で二人とも一糸纏わぬ姿になって横になっていた。有紗の言葉に、私は苦虫を噛み潰したような感覚を覚えた。
「けど、
店に入る時に、所属する
「その話、半分正解で半分間違い」
「実際には、ウチみたいな小さな
「そんなことが」
他にはポルニアの
「今時こんな店に来るのは、倒錯した変態ばかり」
私が射精した後、有紗は意気消沈した姿のまま、ずっと感情の動かない声音で喋っている。それが私は心配でもあるが、彼女はそんな風に口を挟むことを許さなかった。有紗の言う通り、敢えて人間の
「けど、店にとっては寧ろそうした変態とのプレイの方がポルニアに売る情報としては喜ばれる。そんなのばかり」
「保護さえ受ければ」
「嫌だ。そんなことしたら、本当に最後の尊厳を失うから」
では今の状態は、尊厳が守られていると言えるのか。臆病な私は、それを尋ねることができない。結局、そうして話をする内にサービス終了の時刻になり、有紗はいそいそと服を着た。
「ところでどう? 良かった?」
帰り際、有紗に訊かれる。私は直ぐに肯定することが出来ずにいた。
「良かったよ」
「またのご利用、お待ちしています」
有紗は私の返答を聞くなり、店の奥に引っ込んでしまった。有紗に言ったのは、嘘だ。確かに、有紗と話すことの出来た時間は何物にも代え難い。けれど、そうしたことを度外視して
「愛している、有紗」
私は誰も居ない狭い部屋の中、そう呟く。その言葉はあまりにも空虚だった。
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