Ⅲ. frihed og værdighed
働かないと決めれば、後は気持ちは楽だった。有紗と別れた時と同じだ、と思う。それまで必死になって守って来たものであっても、なければないで生きていけてしまう。自分はそういう人種なのだということを、突き付けられる。私に本当に大切なモノなどあるのだろうか。私の持つ全ては代替可能であったりしないか。私だけの持つ何かはないのか。自問自答したところで、答えは見つからない。私は再び電子空間に
「そうか、仕事辞めたのかお前」
ポルニアを教えてくれた
「はい?」
電子空間に、彼女の姿が映し出される。私は彼女に向けて手を伸ばした。
「久しぶり」
「ああ、君か」
有紗の声は沈んでいた。この世の全てを諦めてしまったかのような、落ち込み切った声だ。
「市民保護は順調ではないのかい」
私が訊くと、有紗は自嘲するような表情を浮かべた。
「保護は受けてない」
「何だって?」
私は耳を疑った。私と別れたのは、市民保護を受ける為でもあった筈だ。それなのに、何故有紗はそれを拒んだのか、理解ができない。
「どうして」
「人としての最後の尊厳を、失うような気がするから」
まただ。彼女は時折、このようなことを口にしていた。仕事のことだって、
「今、どうしているんだ」
「君には関係ない」
「そんなことはない」
私は有紗にかぶりを振った。自由な彼女を愛していた。けれど、そんな彼女との生活に気苦労が絶えなかったのは確かで、そんな彼女と別れたことで、私は清々としたものを感じた。それこそ、自由を愛する彼女と共にいる不自由さから脱した自由を感じたのかもしれない。けれど、こうして彼女を一目見ると、思い出してしまう。
「愛している」
私は有紗に真正面から気持ちを伝える。有紗の顔はそれでもやはり沈み続けている。彼女は何も言わず、電子空間から姿を消した。意気消沈する私に、有紗からのメッセージが届き、急いで私はそのメッセージを開く。そこには、連絡先が添付されている。彼女から送られてきたのは、人間の
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