第29話 文章教室の内側をバクロする!(03)

 

つぎの先生の注意点は、漢字の使用方法、特に開き方についてです。

随筆の中で、「気をつける事」という表現が使われていましたが、先生の指摘によると、これは「気をつけること」というふうに表記した方が適切だとのことです。

先生は、必要以上に漢字を使用する必要はないと考えているようです。


 これについてわたしの考えを述べますと、年配の方々の中には、漢字を多用した文章を書くことで知的な印象を与えられるという思いがあるのかも知れません。

 しかし、それとは対照的に、若い世代の中には日本語、特に伝統的な表現や古典的な文体に不慣れな人が増えているように感じます。


この世代間のギャップを示す面白い例として、ネット上のエッセイで目にした出来事があります。

 20代前後の若者が、神社でおみくじを引いた際、そこに書かれていた和歌を見て、

「なにこれ、日本語じゃない~」

と驚いていたという記事でした。この反応は、若い世代の一部が古典的な日本語表現にいかに馴染みがないかを如実に物語っています。


さらに、文学作品の理解度についても世代間で差が見られます。例えば、高校生くらいの若者の中には、太宰治の『ヴィヨンの妻』のような比較的近代の文学作品でさえ、難解だと感じる人が少なくないようです。


これは、現代のライトノベルやSNSでの簡潔な文章に慣れ親しんだ若い読者にとって、太宰治のような文体や複雑な心理描写が、予想以上に高いハードルとなっていることを示唆しています。


確かに、中高年の方々が自身の読書量や知識を誇示する必要はありません。しかし同時に、若い世代の読書離れが進行していることは看過できない問題です。


この状況は、単に個人の趣味の問題を超えて、日本語の豊かさや文学の継承、さらには世代間のコミュニケーションにも影響を及ぼす可能性があり、社会全体で取り組むべき課題だと考えます。

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