第22話 訪問リハビリ雑談話


2024年8月22日、義母の訪問リハビリのため、Yさんという30代の理学療法士(男性)が我が家を訪れました。Yさんは、専門的な知識と温かい人柄を兼ね備えた方で、リハビリの合間にわたしと深い雑談に花を咲かせました。義母は、Yさんの巧みな手技によるマッサージを受けながら、私たちの会話に耳を傾けていました。穏やかな日常の一コマでした。


Yさんは、興味深い観点を持っていました。彼は言いました。

「男性と女性を比較すると、実は男性の方が精神的に脆弱な面があるんです。ぼくは、著名な作家である向田邦子さんのエッセイか小説で読んだ夫婦の話を思い出します。その話は、現代社会における男女の役割や心理的な違いを鋭く描写していて、非常に印象に残っているんです」


Yさんは、その物語の概要を次のように説明しました。

「その話に出てくる夫婦は、新しいマンションの購入をめぐって意見が分かれていました。妻は新居への憧れから積極的に購入を望んでいましたが、夫の方はそれほど乗り気ではありませんでした。しかし、物語は思わぬ展開を見せるんです」


「突然、夫が脳溢血で倒れてしまったんです。この予期せぬ事態に直面した妻は、驚くべき行動力を見せました。彼女は夫の看病に献身的に取り組みながらも、同時に自分たちの将来を見据えて、しっかりとマンションを購入したんです。この妻の決断力と行動力は、非常に印象的でした」


Yさんは、さらに興味深い考察を加えました。

「ここでぼくが面白いのは、もし立場が逆だったらどうなるかということです。例えば、夫がマンション購入に積極的で、妻が反対していた状況の場合、今度は妻が脳溢血で倒れたとしましょう。

 そんな場合、恐らく夫はマンション購入どころではなくなってしまうでしょう。看病に追われる中で、新居を探したり購入手続きを進めたりする余裕は、なかなか持てないんじゃないでしょうか」


「こういった違いは、男女の特性や社会的役割の違いを反映しているように思います。もちろん、これは一般論であって、個人差は大きいですが、こういった視点で人間関係や社会を見ると、新たな発見があって面白いですよ。」


Yさんのこの洞察深い話は、わたしに多くの思考の糸口を与えてくれました。日常のリハビリの場で、こうした深い話題に触れられることの豊かさを感じずにはいられませんでした。


 こんな話が出来る訪問リハビリ。次回が楽しみです。

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