第36話 ヒモ男、迷い込む

逃亡した俺。

あれ、ここどこだ……?


商店街を抜けて、馬留に行くつもりだったんだが、よく分からない場所に来てしまった。


間違って商店街の路地裏とかに来てしまったのかなぁ。

とりあえず戻るか。


来た道を帰ろうとして、異変に気づく。

振り返ると道が無いのだ。


歩いていたはずの道が無くなり、先へと進む一方の道しかない。


うーん、ダンジョンとかでよくあるやつか?

とりあえず今は進むしかない。


ま、いざとなれば【空間転移】なり使って、逃げりゃいいだけだし。


しばらく歩いていると、前方に髪の長い黒髪の女が、真っ白の服を着て、道端に座り込んでいた。


後ろからなので顔とかは分からん。


こんな不気味な場所に人が居るとは思わなかった。

とりあえず声でもかけてみるか。


「へいへいそこの姉ちゃん、こんなとこに座り込んでどうしたの」


チンピラみたいな声掛けになってしまった。

座り込んでいた女は背を向けたまま、小さく答える。


「なんでここにユーコ以外の人が入ってこれたの……」


「あぁ? いや、入ってこれたもなにも道に迷っただけだ」


言わせんな! 恥ずかしい!!

俺はもうおっさんと言われてもおかしくない年齢だぞ。


「ユーコの空間は普通の人間じゃ絶対にたどり着けないと思うんだけど」


「なにそれディスってる? 俺、ちゃんと人間だよ? まさか君はヒモは人間じゃないとかそんな思想? 」


「なにそれ……。けど、少なくとも迷ったから来れるとこじゃないよ……。これも何かの縁なのかなぁ? 」


「そーじゃない? これでお前とも縁が出来た! って」


「ドンユーコタロウも参戦! じゃないんだから……これ知ってるってことは……日本人? 」


にほんじん? なんか聞き覚えがあるような。

俺は記憶を頼りに思い出す。


アリサたちの故郷だ!

まさかユーコもにほんじんなのか?


「俺はこの世界で生まれてこの世界で育った。知り合いというか元俺の女というか、そんな感じの人が言ってたから覚えてるだけ」


俺はアリサに【にほん】のオタク文化を沢山教えてもらったからな。それから大ファンだ。


「うん、そうだよ。ユーコも元にほんじん」


「それならなんでこんなとこにいんだ? 」


「……関係ないでしょ。帰って」


「やだ! 少なくともお前の顔見るまではやだ! 」


「子供なの……? 」


失礼な……。

俺はただのヒモ男だっつーの。


「それ威張れることじゃないよ……貴方がいたとこまで返してあげるから帰って」


「いやいや、こんなとこに一人でぽつんと座ってるお前をほって帰れるわけないだろ……」


こいつの口ぶり的に、この空間はやっぱり商店街とは別の空間で、この不思議な空間を作り出しているのはこいつなのだろう。


自分の空間ならなおさら、何故こんな場所に座り込んでいるのか分からない。


「ユーコの勝手でしょ……。まぁ、貴方が推察した通りこの空間はユーコだけのもの」


「ユーコは空間を作り出せるのか? それなら城とかもっと居心地のいいモノを作ったりしないの? 」


「……そんな気力も、生きる理由もユーコにはないから。種族のせいで一生死ねないから、こうして何も考えずにずっと過ごしていくの」


「種族……? お前は人間じゃないのか? 」


どっからどう見ても普通の人間だが。


「幽霊だよ……。ユーコだけの空間に入ってこれたくらいだし、貴方ならユーコを……成仏できる? 」


おい待て、勝手に話を進めるな。

ユーコと言ったこいつは幽霊らしく、なんでか知らんが成仏したがっている。しかし頼む相手が悪い。


「成仏してお前が居なくなるくらいならさぁ、俺を養ってくれない? 」


「はぁ……!? 」


そうして初めて振り返ったユーコとやらは、超美少女だった。


うーん、大当たり!



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【あとがき】

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次のハーレムは幽霊っ子?


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