第33話 ヒモ男、女騎士なクレイにも告られる

「あの、クレイ……? ここだと皆迷子になっちゃうよ? 」


連れてこられた場所はなにやら建物の2階。

1階には受付?のおばかちゃんがにこやかに座っていて、クレイを見るや顔パスだった。


その際ちらっと俺をみて、「おやおやクレイちゃんにも男が出来たのかい? わたしゃ安心したよ」とか言ったせいで、クレイは顔を赤くしていた。


そりゃあ、誇り高き騎士サマが、俺みたいなヒモと関係があるって間違われたら顔が赤くなるくらい怒るわな。


貸部屋なのかなんなのかよく分からないが、連れてこられた。


広くもなく狭くもなく、二人だったらくつろげれるくらい。

けど、一つツッコミたいことがある。


「真っピンクじゃねぇか!!! 」


ああ、これ休憩するお部屋か。

だったら受付?がおばあちゃんなのもテンプレで納得出来る……ってなるかい!


なんでだよ!!!!

えっ、クレイは分かってて入った……?


それになにやら親しげに会話していたのも気になるし。

まさかクレイはここに来たことが……。


「ふぅ……ノア、急にこんなところに連れてすまなかったな」


「や、別にいいんだけど……クレイここ来たことあるの? 」


「何回かあるな。個室でのびのびと出来るのに、安いからこの近くに来た時は利用している」


なんてことだ……。

この女騎士、意外と男あそびしてるのかも。


そういうイメージないだけにびっくりだな。


「二人は気を使ってくれたんだろうが、生憎ワタシはこういう時どうすればいいか分からなくてな……思いついたのがここくらいだったんだ。……って、なんでそんなに緊張しているんだ? 」


いや、だってそりゃ……ねぇ?

これから始まるであろうことを想像したら、緊張するのも無理ない。


「あまり二人を待たせる訳にも行かないし、ワタシはさっとシャワーを浴びてくる」


そう言って、さっさとシャワーを浴びに行った。

部屋にぽつんと一人取り残されている俺は、聞こえてくるシャワーの音に緊張しているのだった。


ほどなくして、クレイが部屋に戻ってきた。

さっぱりとしていて髪に少しの水滴がついて、色っぽいーーーってのはただの幻想でして、当然甲冑でお顔は拝見できない。


顔を見せれないのは分かるんだけど、シャワー浴びてすぐその暑っつい甲冑きたら、意味ないんじゃ?


え、てかこのまま……?

俺、さすがに全身鎧には俺の俺も寝ているほかない。


「ノアも入ってくるといい」


後もう15分くらいしか無いんだが。

かといってシャワー浴びないのはマズイ?


これは時間との勝負ーーー

カランコロン。


結局5分くらいはかかってしまった。

まぁ、サッパリ出来たし、清潔にはなっただろう。


「おまたーーーえ? 」


なんか見知らぬ金髪美女が座っているんですが。

そんな彼女は、俺と目線があう。


手で目を隠して、隙間からチラチラと見てきている。


えぇ……誰ぇ。

ん? 金髪美女の近くには脱ぎ捨てられた甲冑やら鎧がある。

そしてそれには見覚えがあって、いや見覚えしかなくて。


キョロキョロ辺りを見渡すが、クレイはいなくて。


「えっと、どちら様」


「クレイ……だ」


目の前の美女はクレイらしい。

うん、俺こんな美女と今から休憩(意味深)するの?


「顔は見せれなかったんじゃ……」


「の、ノアになら……見せてもいいかなって……思ってだな」


「それまたなんで俺なんかに」


「鈍感なのかっ……!? 王女様含め3人もよ、嫁がいるのに鈍感なのか!? 」


なぜか詰められた。

ううん、よく分からない。……あっ!


「わ、分かってくれたかっ……! 」


「あれだろ! この顔を見たからには生きては返さん……って、斬り捨てられるやつ! 」


誰にも犯行現場を見られない場所、この建物の管理者?と顔見知り。ここから導かれる結論はこれしかない!


どごそのメン探偵並の推理力……くぅぅ! 俺の才能が今日ここで絶たれてしまうのは世界の損失だ!


なんて冗談はさておき……やだ俺、〇されちゃう!


ふと考える。

まてよ、こんな美女になら、まぁいいかもなぁ。


お顔が不明だった騎士が実は美女で、そんな美女に……。

しかもこんな場所で。


これは一瞬の新たなーーー!!


「なんでそうなる……!? 分かってやってるのか!? それともワタシが言わないと伝わらない……!? まずノアを〇す訳がないだろう!? そんなことしてえろ、ワタシは王国を敵に回してしまうぞ!? 」


どうやら違ったみたい。

俺はクレイに〇されるわけでは無さそうで、ほっと安心した。


なんだか、空気が変わって?

クレイは凄く真剣な表情。


「ノア……ワタシが、この甲冑を付けたその日決めたことがあるんだ。それは、心から好きな男が現れるまではワタシ自身を女としての気持ちを……甲冑に封印すると。いつか、くるその日を信じて、雑念を捨て、今日まで誰一人として素顔を見せてこなかったんだ」


「そんなにも長い間……え、けどじゃあなんで俺に? 」


「ここまで言って伝わらないことがあるか……!? ああもう! やっぱりちゃんと伝えないといけないのだな!! ノア、聞いてくれ!! 」


覚悟を決めたように、正座をして俺を真っ直ぐと見据える。

なんだか場の空気につられて、俺も正座していた。


「ワタシは……ノアが好きだ」


え? スキ……?

騎士という俺みたいな人間が大嫌いそうな職業のしかも団長が? 好き……?


だれを……?

お、俺しかいないか。


え、え……。


「えええええええええええええええ!?!? 」



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【あとがき】

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