第32話 ヒモ男、クレイのタイプの話になる

商店街は王都のあの街並みとはまた違うが、あちらに劣らず賑わっている。


皆も物珍しさに、あちこちに興味を示し、一つ一つクレイが説明をしている。


そして今は疲れてひと休憩とっているところだ。

食べ歩きできるウルフの串焼きを皆で買って、ベンチに座り食べている。


「美味しいですね」


「んー! このタレが絶妙に交わって、めっちゃ美味しいですー! 」


「王城の食事とは違って、これも美味しいな。ワタシだけでは絶対に食べてないだろうから、君たちに感謝だな」


「えー! クレイさん休みの日とかに食べに行ったりしないんですかー? というか国王様の護衛騎士って休みには何してるんですか? 」


「ワタシは休みの日は……素振りをしている」


「えっ、それだけですか!? 」


「そうだな……それに出かける相手がいないゆえ……一人では中々遊びに出かける気にもならない」


「そうだったんですか……。! もう1つ質問してもいいですか!? 」


「ああ、なんでも聞いていいぞ……! 」


ルミシアもクレイも楽しそうだ。

特にクレイは同年代の同性とこうやって話すことがあまりないからか、嬉しそう。


そんな二人を微笑ましく見守っている。

しかし、ルミシアがとんでもない質問をしたことによって、空気が変わった。


「クレイさんはー、好きな男の人っているんですかっ!? 騎士団の人たちってイケメンも沢山いるじゃないですか! 」


「すっ、好きな異性……。今日まで考えたことが無かったんだ。少なくとも騎士団の仲間たちの中にそういう特別な感情になった異性はいないな」


「えーそうなんですかー!? え、じゃあじゃあどんな人がタイプとかは!? 」


ルミシアが恋バナをする学園生みたいになっている。

一方クレイは、そんな話をした経験がないのかタジタジに。


ちょっと助け舟だしてやるか。

俺は手に持っていたウルフの串焼きの残りを食べ切って、話題を変えようとした。


しかし、それよりも早くクレイが口を開いた。


「一応……ある。……というよりは今日……自覚した」


「えっ……!? そ、それってもしかしてーーー」


ルミシアが言う。


「スチャオさんみたいな人が……!? 」


「なわけないだろう……!!? なんでそうなった!? 」


「えぇ、違いましたー!? 」


怒るクレイにびっくりして素っ頓狂な声を上げるルミシア。


「では誰みたいな人なんですか……? 今日私たちがあった男はスチャオとワルクミと……ダメ男くらいですよね」


あれ、意外とミナも興味津々なのか、会話に加わってきた。


「も、もう答え出ているだろう……! 」


「どれも女からしたらダメな人ばかりで分かりませんー! 」


おい、しれっと俺をディスるな。

一応君俺の嫁だよね……。


クレイは唸りながら、手で顔を隠しながら小さく呟いた。

鎧で顔は見えないんだから、手で隠す必要はないんじゃないかとは言える雰囲気では無かった。


「……ノアみたいな人がタイプだ。いや、ノアが……うぅ、これで満足だろう! も、もうそろそろ国王様も戻られる頃合いだ、ワタシは馬留に行く! 」


あたふたと立ち上がって、去ろうとする。

そんなクレイにミナとルミシアが背中からぽつり。


「この人、部屋では今日と真反対な性格ですよ? 」


「外でも平気でお尻触ってくる人ですよー」


立ち止まったクレイは、背を向いたまま言った。


「……それでも君たちはそんなノアが好きなんだろう? 」


「ま、まぁそうですね♡ ダメ男さんには私がいないとですから♡ 」


「ほんと何故か好きになっちゃいましたからねー」


「であればワタシがノアを好きになってもおかしくないだろう……あぅ……!? の、ノア!! い、今のは違う……! の、ノアみたいなのがタイプって言いたかったのだ」


言い間違えたからか、焦った様子で俺の元にきて弁明している。


そんなクレイの隣にいつの間にか立っていた二人。


「あっ、あちらに良さそうな小物があります。私、あれを見てきますね」


「串焼き美味しかったからおかわりしよ〜っと♡ ルミシア、ちょっと買いに行ってきま〜す」


急に二人がどっかいった。

俺とクレイの二人きりになってしまった……。


「あー……二人で近くもう少しみるか? あいつらが戻ってくるまで。ほんっとあいつら自由だよな」


「ミナ……ルミシア……二人とも優しいんだな。そ、そうだな、ノア! あそこに行ってみないか? 」


クレイが指さした場所に向かう。



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【あとがき】

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