第31話 黒い影

ノアたちが闘技場を去った後。


「クソクソクソクソォ!! もう少しで国王を暗殺出来たというのにぃ!!!! あいつは何をしているんですか!! 」


スチャオは床を何回も怒りに任せて踏みつけながら、そんなことを口にしていた。


「腕利きの暗殺者だと言うから高い金を払ってやとったというのに、あんな老いぼれ1人暗殺できないなんてぇぇ!! 」


どこにいったと言うんだ、まったく……。

まさか失敗したから逃げたとか。逆に平生と居られてもそれはそれでふざけるなと言いたいが。


雇った暗殺者の配備した場所に行くが、見当たらない。


「ちっ、逃げましたか」


決して安くない報酬を先に支払ったのが間違いだったか。

もう素性の分からない人間に頼むのは辞めるしかありませんね。……暗殺者や闇ギルドの連中に素性がわかる人間なんていませんか。


何が暗殺率100パーの男だか。

もういい、こんなやつのことはほっておいて次の手を考えなければ。


「……え? 」


草むらに一瞬人の気配を感じた。

私がここに来るのを予測して、隠れていたんですかねぇ。


大方暗殺に失敗して、報酬を取り返されるのが怖くて、といったところ。


「そんなところで何をしているんですかねぇ? 国王はもう闘技場を後にして……なっ……? 」


草むらに隠れていたのではなく、倒れていた。

暗殺者自信が国王に向けて放ったであろう矢が突き刺さっていた。


「な……んだ……この奇妙な……。間違いなくこの矢は国王に向かって飛んできていた矢だ。それは謎の壁、なんらかの魔法の干渉によって跳ね返され消えたはず。まさかその跳ね返った矢で死んだ……? 」


そんなバカな話があるのか……?

まず国王を守った謎の壁……壁なのかすら分からないが。


「考えていても拉致があかないですねぇ……なんにしろ今日の失敗のせいで大会当日は、国王の周りの護衛、警備は今までの比じゃないはず。今回の暗殺者よりも高位となると、さらに金が弾む。……しかし背に腹はかえられませんねぇ。はぁ……あの魔族もわざわざ私などに自分ですればいいものを」


「ふうん。ボクがなんだってぇ? 」


真後ろにとてつもない魔力を感じ、慌てて振り返る。


「い、いえなにもないです」


「そっかそっかぁ。状況、みる感じ失敗したんだねぇ? 」


目の前のこの男は真っ白い服をビシッと纏い、黒い魔族の翼が背中から生えている。顔は整っておりかなりの美貌だ。


ニタニタと薄ら笑いを浮かべ、ちらりと草むらを一瞥した後スチャオをみる。


「なに? ボクをイラつかせたいわけぇ? 」


「め、滅相もございません……た、ただっ、こいつが思いのほか弱かったらしく……」


「言い訳なんてどうでもいいんだよ? まぁ、当日、しっかり仕留めてよねぇ? また見に来るから、楽しみにしてるよ。……失敗したら、どうなるか分かってる……って、その表情を見れば大丈夫そうだね」


ぐにゃりと空間が歪み、魔族は消えていった。


「は、はぁ……はぁ……」


全身を魔力で包まれた感覚で、一歩でも動けばあの魔族の魔力に身体が押しつぶされそうになる……。


この場から去ったことによってようやく身体の自由が戻り、やっと息をはけた。


「! そ、そうだ……早く新たな暗殺者を雇わなくては……」


失敗したら……。

いや、あの魔族の口ぶりから察するに次は無い。

もし失敗しようものなら、私は……。


「くそっ……なんで私がこんなことにぃ……! 」


唇を噛み締めながら、スチャオは闘技場を後にした。



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【あとがき】

「続きが気になる!」「面白い!」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! 作者のフォローも是非是非お願いします!

別視点とかあまり描きたくない(主人公視点だけでやって行きたい)派なので主人公視点以外を書くのは久々です。

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