第30話 ヒモ男、女騎士クレイとワンチャン…?
闘技場を後にした俺たち。
近くは繁華街のようで、賑やかだ。
「ワシは他にも挨拶する場所があるから、ノア殿たちはここらで少し楽しんでくれ」
「私もついて行かないといけないやつですね。ノア様のお側を離れるのは悲しいですけど、すぐ帰ってきます! 」
まぁスグハは王女だもんな。立場上挨拶には同行しないと行けないのだろう。
クレイが国王たちについて行こうとすると、呼び止められる。
「クレイは、ノア殿たちと交流を深めれるいい機会だろう。一緒に回ってやれ。案内出来るのはお前しかいないからな」
「で、ですが! 」
クレイの心配はもっともだろう。
ついさっき暗殺されかけた国王の傍につかないなど、不安で仕方ない。
「あの不思議な壁があったから大丈夫でしたが、あれが今もあるとは限らないんですよ!? 」
国王は俺を見やると、ニヤリと笑った。
あれぇ……この反応、もしかして国王は俺の仕業だって気づいてる?
ほれ、こいつのために伝えてやってくれんかって顔してるよ。ま、別に伝えてもいいか。
クレイの肩をちょんちょんと叩いて、耳元に小声で伝える。
「実は国王を守った壁、あれ俺の魔法。そしてあれは今も国王と、クレイにもかかってるよ。だから安心していいと思う」
「なっ……!? の、ノアが!? そ、それに今もだと? な、何も見えんが」
そう言って、虚空をツンツンするクレイ。
全身鎧の騎士が目の前をツンツンしているのは、不思議な光景だな。
すれ違う通行人たちが、奇妙な目で見つめている。
彼女の名誉のためにも早いとこ伝えてあげよう。
「付与した対象にダメージを与えるモノが、対象に接近した時のみ展開されるから、普段はなにもないよ」
「そ、そうなのか……ノアは凄いのだな」
「べつに。これ貰い物だし」
「貰い物……? 」
「……」
「ノア……? 」
「まぁ、だから俺は凄くない」
スグハにも同じものをかけた。
これで大丈夫だろう。
「では時間になったら馬駐集合という形にしようか。ほらクレイも遠慮せずノア殿たちと楽しむんだぞ」
そう言って、国王たちは歩いていった。
残された俺たちはというと。
「どうしようー! ルミシア、ずっと門番だったからこんなとこ来たことなくて、どこに行けばいいか分からないですー。ミナさん、わかりますっ!? 」
「い、いえ……私も来たことがないので……当然ダメ男さんも初めてですし」
クレイが小さく手を上げる。
「わ、ワタシならわかるが……」
「じゃあお願いしてもいいですかっ!? ええと、クレイさん! 」
「ワタシなんかでいいのだろうか……それに、君たちはノアの……か、かの、……かのじょ……でワタシがいたら邪魔なんじゃないかな……と」
言葉を進めるにつれてどんどん顔が赤くなるクレイ。
「全然邪魔じゃないですよー! 」
「そうです。それにクレイ様みたいなお目付け役がいないと、このダメ男は何をしでかすか分かりません」
「そ、そうなのか……? 」
俺を驚いた様子で見てきた。
「まぁ……クレイがいなかったら、二人のケツは揉んでるし、繁華街の中でギャンブル出来るような店があればそこでお金をタンマリと……」
「け、ケツ……!? の、ノアは意外とそういうのに興味あるのだな……」
「クレイさん、意外と、で済ませれるレベルを超えてるよこの人は。ルミシアなんて、触られるだけじゃなくて座られたりしたんですよっ! 」
クレイはその言葉に固まってしまう。
数秒間のち、ようやく動き出す。
「な、なんだ。ノア……ワタシのお、おしり……も触ってみたい……とか思ったりするのか? 」
「そりゃ、触れるなら」
「っっ……! の、ノアになら……ワタシは 」
「ーーーすとぉぉぉぉっっぷぷ!! もうっ! ノアさん! クレイさんにちょっかいかけない! ほら行きますよ、クレイさん案内お願いします! 」
ノアになら、ワタシは……。
その言葉の続きはルミシアによって遮られてしまった。
俺とクレイはルミシアに手を引っ張られて、商店街へと連れていかれるのだった。
甲冑越しでも、クレイがニコッと笑った。……そんな気がした俺なのであった。
なんかすっごいラブコメみたいな雰囲気だったよね!?
もしかしてクレイともワンチャンあったり……?
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