第26話 ヒモ男、国王の騎士と話す

案内人が来た。

メガネをスチャスチャしながら言う。


「これはこれは国王様に第三王女様。……おやぁこちらの方々は存じ上げてませんが、どなたでしょうか」


喋る度にスチャスチャスチャスチャ。


「俺はノア・ヒモオー。ヒモをやっている」


「は……? ひ、ヒモ……? 」


「私はこのダメオ……ご主人様に仕えている専属のメイド、ミナです」


「ルミシアです! えっと、門番やってます! 」


ヒモにメイドに門番、うん、すごいメンツだ。

スチャ男もどう反応したらいいのか困っている様子だった。


「ノア様は確かにヒモですけど、私の専属護衛騎士でもあるんですよ〜! 道中もゴブリンに馬車が襲撃されたんですが、なんとノア様がおひとりで全て倒しちゃいました」


「なんと……! 人は見かけによらないんですねぇ。っと、ご挨拶が遅れました。私、スチャア・メネガンと申します。この闘技場の者ですねぇ。皆様、お疲れでしょうし、少し休憩されてからにしましょうか。この待合室は好きに使っていいので……では、まああとでお会いしましょう」


そう言って、待合室から出ていった。


国王は、スチャアが出ていくやいな、ドカッとソファに座る。


「お前たちも楽にしてくれ。疲れただろう」


国王の対面のソファに座る。

あれ、護衛の人は休憩中でも顔の甲冑外さないんだろうか。


「ワタシはいい。いつもこれだ」


初めて声を聞いたが、声を聞くに女性だろうか。


「寝る時も? 」


「いや寝る時は外すが……」


「騎士さんの顔みてみたいなー? 」


「うっ……スグハ様の専属護衛騎士の頼みとなれば……し、しかし……」


「うーん。どうしても嫌なら別にいいよ。無理言ってごめんな」


無理強いするのは良くないしね。

何か事情がありそうなのは今ので分かった。……ますます気になっちゃったけど。


「すまないな……」


「いーよいーよ。けど寝る時以外ずっと付けてるって、食事の時どうしてんの? 」


「気合いだ……というのは冗談で、この甲冑は、こうすれば……」


口元だけ開いた。凄いな。


「これで食べている感じだな。疑問はハゲタカ? 」


「うん。騎士の人たち全員この機能ついてるの? 」


「いや、ワタシだけだ。無理を言って、王国鍛冶師に特注で作ってもらった」


そこまでしてもなお、顔を隠す理由。

あまり詮索するのは良くないだろうが、どうしても気になってしまう。


「騎士さんは国王の専属の騎士、って解釈であってる? 」


「専属……ではないけど、国王様をお守りすることは多いな。それとワタシのことはクレイとでもよんでくれ。そなたの事はどう呼べばいい? やはりノア様? 」


「んじゃクレイで。俺は別に好きな呼び方でいいんだけど」


「ノア……流石に失礼だろうか」


「いやいやそれでいいよ。俺だってクレイのこと呼び捨てにしたんだし。ま、これからよろしくな」


「あ、ああ。……ノアは深く聞いてこないのだな、この事」


「んーそりゃ気になるよ? けどなにか事情あるんでしょ? それを無闇に暴いたりなんかしないよ」


「ダメ男さんにデリカシーがあった!? 」


「世紀の発見です! ルミシアのことなんて椅子扱いするくせに! 」


「酷い言われようだなノア……普段はそんな感じなのか? 」


「そーだね。ダメ男だったりクズだったりデリカシーがないだったりよく言われるよ? 」


「ますます不思議だ。そんな男が詮索をしないだなんて。彼女たちの評価を見るにノアはワタシの甲冑を無理やり取って顔見ようとしても、驚かなさそうなんだが」


さすがにそんなことはないよ。

ないよねーーー?


こら君たち、なんで別人を見るような顔をしているんだ。

俺にだってやっていい事と悪いことの区別くらいつくわい。


「事情があるのは分かるし、俺は美人や美少女に無理やりをして泣かせる趣味はないからね。クレイがもし俺になら話してもいい、見せてもいいって思える日が来たらその時は見せて欲しいな? 」


「口元しか見えなかったのに、美人判定してくれるのだな。……ノアは」


「うん? 綺麗だなーって」


「ふふっ。……ワタシは少し風に当たってくる」


そう言ってクレイは休憩室を後にした。



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【あとがき】

「続きが気になる!」「面白い!」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! 作者のフォローも是非是非お願いします! 最近筆が進まない……。――――――――――――――――――

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