第25話 ヒモ男、置いていかれる

俺は馬車に戻る。


「ノア様! ゴブリンを素手でばったばったと倒していく姿、かっこよかったです! 」


「初めて戦闘してるとこ見ましたけど、本当に強かったんですね」


「なんで素手なのー? ま、ノアさんにも考えがあったんだよね。ともかくお疲れ様ですー! 」


三人がわぁぁぁと押し寄せてこようとする。

ふっ、これで少しは傷がいえよう。


しかし、いくら待っても抱きついてこない。

皆俺の手をガン見してて。


あっ、洗ってねぇ。


「い、いくらノア様でも、ゴブリンの体液がどっぷり付いた手だと……触れたくないです……」


「臭いです。ダメ男さんは馬車にはのらず、歩いて付いてきてください」


「臭くて汚い、こればっかしは無理ですー! 」


あのクソゴブリンどもめ。

追い出された俺は、一人寂しく草陰で、【水魔法】でじょぼじょぼと水を出して手を洗っている。


かっぽかっぽ。かっぽかっぽ。


ん? 何だこの音。

よし、これで綺麗になった!


あれ、馬車が出発してらっしゃる。

えーーー? 俺、ガチで歩かないといけないの?


窓から身を乗り出しているあいつら。

それは笑顔ではなく、ガチ焦りの顔だった。


もしかして、御者の人は俺が乗り込んだままだと勘違いして出発したか?


はぁ……。

今日二度目のため息をついた。


やれやれ、この俺があのスピードの馬車如きに追いつけないとでも思っているのか。


文字通り神の如き速さを出せる【神速】を使うまでもない。


しゅたっ……!!

びゅうううううううううんんん!!!!!!


あっという間に馬車に追いつく。

足を乗せれる場所がわずかにあったので、そこに登る。

スグハが窓を開けてくれたので、そこからなんとか中に入った。


「はぁぁぁぁぁぁぁ……」


「す、すいませんっ!! まさか出発するとは思ってなくて! 」


「御者の方に言おうとしたんですが、ゴブリンを窓があるとはいえこのほぼ密閉空間に置く訳にも……」


おい誰がゴブリンだ、バカメイド。


「ほら、ちゃんと手を洗ってきた。あとバカメイド、お前とはしばらく口をきかん」


「拗ねないでくださいよ」


ふんっ、しーらね。


「じゃあじゃあノアさん! ルミシアたちのために戦ってくれたから、膝枕してあげるよー! ミナさんから聞いたんだけど、好きなんですよねー? 」


こいつの膝の上にそのまま座る。うん、いい座り心地。


「ちょっ、膝枕ー!? 」


「やっぱお前、この馬車と座り心地同じだわ」


「ばかぁ……! ……でも今はなんだか嬉しいです」


「じゃあお前今度から椅子な」


「流石に嫁扱いしてくださいよー!? 」


「考えといてやる」


そんなこんなで時間はすぎていき、ようやく目的地の近くまで来たみたいだ。


馬車を降りて、国王の後を続いている。


「国王様だ! 」


「第三王女もいるわよ! 」


「あの男は誰だ? 」


「それにその男の隣にいる二人も見たことないよな」


「けっ、顔だけはいいな。俺ァ、嫌いなタイプだが……げっ睨んできやがった。聞こえてたのかよ」


「あら? あの男の子、かっこいいわねぇ。唾つけちゃおうかしら……あら、目が合ったわ。えぇ、バツ? あらァ残念」


どこに行っても俺は何かしら言われる運命なのだろうか。

あと、流石にその歳は無理です。ごめんなさい。


俺はね、若くて可愛い子じゃないとだめなんだ。


闘技場の建物の中に入る。

流石にあの人たちもこんなかまでは追ってこなかった。


少し疲弊しているのを感じとった国王は笑いながら言う。


「ワッハッハ。ノア殿はまだ慣れておらぬものな。しかし慣れてもらうほかない」


「いやいや俺ただのヒモ男だよ? 国王がそばに居たから必然的に注目が集まっただけで、もう集まられることもないだろ」


「何を言っておる。スグハと、そして他の我が娘たち……第一王女らをもノア殿はハーレムに加えるのだろう? さすれば注目はいまのひじゃない」


「おい待て。さらっと俺が第一王女をハーレムに加えることになってないか!? 顔もまだ知らんやつだぞ!? 」


俺の言葉に国王は笑みを浮かべる。

なんだなんだ……?


「ノア殿よ。金髪お嬢様系美女は好きか? 」


「たりめーよ! 」


「そういう事だ」


なるほど理解した。国王の口ぶりから察するに第一王女は金髪お嬢様なのだろう。


「とは言っても、第一王女って言ったらなんか理想とか高そうだし、俺じゃ無理じゃない? てか朝もいったけど、相手決まってるんじゃないの。大貴族のお偉いとこみたいなさー」


「合えば分かる……とだけ言っておこう」


ふーん? なーんか、はぐらかされた気がする。

まぁいいけど。



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【あとがき】

「続きが気になる!」「面白い!」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! 作者のフォローも是非是非お願いします!

さすがの嫁たちも液体まみれのノアには拒否反応。


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