第20話 ヒモ男、スグハとデート②

「に、似合ってますか……? 」


「似合ってるよ」


露店に売ってるものを仮にもこの国の王女にプレゼントするのって大丈夫なんだろうかと不安になりながら手渡したら、感想を聞かれた。


似合ってるかって言われてもね……。

元が可愛いから、なんにしても可愛いと思う。


「嬉しいです! ノア様からプレゼントだなんて」


「そんな高いもんでもないけど」


まぁ、気に入ってくれたみたいだしいっか。


「……その、気遣ってくれたんだよな」


「へ? ……それを言ったらノア様だって。私が行く先々で声をかけられるから、少しは正体がバレないようにって、くれたんですよね? 」


「俺みたいなんでもサングラスかけてれば少しはマシになるしな」


「ちょっと! 私があげたのそう言う意味じゃないんですよ!? 」


「違ったのか? 」


「違いますよ! 似合うだろうなって思って……けどひとつ心配だったんです」


はて、心配とな。


「ただでさえかっこいいノア様が、これかけたらどうなっちゃうんだろうって」


スグハは色々と俺を買いかぶりすぎな気がするが、言われて嬉しい。


そのサングラスをかけてみる。ポリポリと頬をかきながら感想を聞いた。


「あっ……かっこよすぎます……♡ 」


両頬を手で抑えて、身体をうねうねさせてる。


どれどれ、どんな感じだろう。

近場の店のケースの前にたって、確認してみる。


うん、逃〇中のハ〇ターにしか見えない。

黒服も相まって、まさにハ〇ターだ。


「なんですか? そのとう〇ちゅう……はんたーって? 」


ああ、この世界にはそんなものないもんな。

かくいう俺もアリサから聞いただけ。


「スグハと出会う前は俺帝国で、異世界賢者のヒモやってたって言ったじゃん? その子……アリサのもといた世界が【にほん】つって、そこには【てれび】とやらがあって、それで人気な映像番組らしいんだ。こっちの世界でいう鬼ごっこみたいなもんらしい。それの追いかける側の服装と似ててな」


「へぇ……! 面白そうです! 」


歩きながら説明していると、本日の目的地に到着した。


「もしアリサに会うことがあれば話を聞いてみるといい」


「……ねぇ、ノア様? 」


「なんだ? 」


「アリサ様と再会出来たら、ノア様はそちらに行っちゃうんですか……? 」


悲しそうに顔をふせながら聞いてくる。


「異世界から召喚された者は、魔王を討伐したら帝国が勇者たちを元いた世界に戻させるはずです。ノア様が、アリサ様のことを話している時って、すっごく楽しそうで笑顔だから……もし、再会出来たら行ってしまわれるのかなと……」


「……少なくとも、俺はスグハとミナをアリサと同じくらい大切に思ってる。帝国を追放されて、行き場のなかった身分も何もかも怪しいこの俺を、暖かく迎え入れてくれた国王や城の皆、なにより俺を好きでいてくれるスグハとミナをほって、出ていくなんてことはないよ」


「ほんとに……ですか? 」


「だって……お前は俺の嫁だろ? 嫁をほったらかしになんてしねぇよ」


「えへへ、そうですね! 絶対離しませんからねっ! ……ですけど、それならアリサ様も早く迎え入れてあげてください。ノア様のことをずっと待っていると思いますよ」


「そうだな……なぁスグハ」


「なんですかっ? 」


「月が綺麗だな」


「? そうですね? 」


残念、伝わらなかったようだ。

だがそんなことはどうでもいい。


スグハを抱き寄せる。

突然のことに驚いている。


「ミナにも気持ちを伝えられて、あいつが第2夫人になる。んで、誓いのキスとやらをさせられてな? スグハともやっといた方がいいと思ったんだが、いいか?」


「そんなの……もちろんですっ♡ 」


そして、今度は俺からスグハに誓いのキスをしたのだった。


王都を見渡せる展望台の上という、なんともロマンチックな場所での行為だったからか、スグハはこの上なく幸せそうにしていたのだった。


「初めてです……♡ 夢にまで見たことが現実になって、しかもノア様みたいなお方と♡ 」


王女サマと正式にそんな関係になってしまったのだから、これから色々と大変だろうな。


しばらくの間、二人で街並みと外の景色を眺めるのだった。



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