第19話 スグハとのデート①

「ノア様! 楽しみですね〜」


「ああ、そうだな」


俺たちは手を繋いで歩いている。

スグハは笑顔で俺を見てくるんだが……いまいち集中できない。


「お、おい……あれってスグハ様だよな……? 」


「間違いねぇ……あれは第三王女のスグハたんだよ……王女サマオタクのこの僕が言うのだから間違いない。ふひひ、今日も可愛らしいなぁ、ぐふ」


「隣の男は誰なんだ? あんなやつ、見たことない」


「王家の紋章の刺繍が入ってるから王国の人なんだろうけど……」


「なんというか……地味、よね」


「顔はそれなりだけど……パッとしないというか」


歩く人全員が足を止めて、俺たちを見ているのだ。

それにしても酷い言われようである。


たしかに俺は地味でパッとしないですよっと。

歩いていたスグハがピタリと足を止めた。


どうしたんだろう。

急に止まったからか、周りも驚いている。


「えっと……この方は、私の専属護衛騎士です! すっごく強いんですよ! 」


ぐいっと俺の腕に自分の腕を絡める。

更にざわめきがひろがった。


「スグハ様がそう仰るってことはそうなのね……人って見かけによらないんですねえ」


「はぁはぁ……ぼ、僕のスグハたんに男が出来たのかと焦ったけど、違ったか。ぶひひ、スグハたんは僕と……」


ぽんっ! と手を叩いたスグハは俺に身体を押し付ける。


「さっ! ノア様行きましょう! 皆様も良い夜を! 」


そう言うと、駆け出した。

引っ張られるようにして、ついて行く。周りの人たちに会釈だけしておいた。


「いくら専属の護衛とはいえ、あそこまでくっつく? 」


「もしかしてお二人は恋人だったり!? 」


「スグハ様、隣の男の人を見る目……女の目してたよ」


「そ、そんなっ……そんなの間違いに決まってる! ぼ、僕のスグハたん……あの男に弱みを握られているに違いないんだ……そうだ……助けてあげないと。スグハたんには僕がいないといけないんだから……」




「うーん……」


俺が唸り声をあげていると、スグハが心配そうに顔を覗いてきた。


「やっぱ俺って地味? タキシードのおっさんが、スグハの隣を歩いても恥ずかしくないようにってこの服くれたんだけど、根本的に俺が地味な存在だからか、さっきも色んな人に言われちゃったし」


「なーに言ってるんですかっ! ノア様は世界一かっこいいです! タキシードのおっさんって……ダンテさんですかね? ダンテさんは王国一の服職人なんですよ! お父さんの服もダンテさんが作ってるんですよ〜」


国王の服というのは、かなり重要だ。

瑞穂らしい服を来ていれば、他国になめられてしまう。

服のほつれ1本で見定められる。


そんな重要な役目を任されているのか、あのタキシードおっさん元いダンテさんは……。


スグハは言葉を続ける。


「それにダンテさんが誰かのために服を作るというのは珍しいです。それでこそ国王であるお父さんや、姉たちなど認めた人物にしか作らないので。ノア様はダンテさんに認められたってことですよ! すごいです! 」


どうやら凄い人物にいつの間にか認められていたみたいだ。


そうやって話していると、ガヤガヤと音のする建物を横切った。


目を閉じ耳をすませば、きゅいんきゅいん……! と音がする。ふらりと足がそちらに向いた。


はっ……!いかんいかん。

なんとか誘惑に勝ち、素通りすることに成功した。


この時間は道に露店が並んでおり、それらも見ながら進んでいく。


呼び止められた露店で、かっこいいグラサンがあった。

買おうか悩んでたら、すっとスグハが買ってくれた。


「ふふっ、欲しそうにしてたので! 似合ってますよ! 」


「いやぁ〜兄ちゃん、かっこいいね! 嬢ちゃんもスグ買ってあげるなんて……嬢ちゃんなんか見覚えあるような……」


「店主、これくれ」


「え、あ、まいど! 」


スグハの髪色と同じサングラスを見つけたので買った。

店主に礼をいって、スグハの手を引いて逃げるようにしてこの場を後にした。



――――――――――――――――――

【あとがき】

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