第18話 ヒモ男、チート性能の護衛服を着る
バカメイドことミナが嫁になった。
そして今はミナと、いちゃこらしてる。
「あは〜♡ もう幸せです♡♡ 」
ベッドで俺はごろんと横になっていたのだが、ミナが膝枕をしてくれている。
頭を撫でられたりと好き放題されてるが、まぁ好きにさせてやる。
こうもあっさりと嫁が出来ると、それはそれで困惑してしまうな。念願のヒモ生活の基盤が出来てきているのは喜ばしいことだけど。
こいつの膝枕はかなり気持ちよく、優しく頭を撫でられていると次第に、うとうととしてきて寝てしまった。
起きるともう夕方になっていて、ミナは膝枕をしたまま寝ていた。起こすのも悪いし、俺はそっとミナを横にしてやって、毛布をかけた。
「俺はちょっくらスグハと用事があるから、ミナが起きたらそう伝えといてくれ」
「わかった」
ネシアは部屋の隅でブロックを積み上げて遊んでいたので、声をかけて伝言を頼み、部屋を後にした。
約束の時間まではまだあるな。
少し外を見てこよう。
「失礼、ちょっといいですかなノア殿」
タキシードのおっさんが現れた。
なっ…こいつの気配さっきまで感じなかったぞ。
このおっさん、やり手だな。
「んと、なに? 」
「この国の王女の隣を歩く者が、そんなズボラな格好をしては行けませぬゆえ……。失礼ながら、この私が護衛の服を仕立てさせて頂きました」
そうして着替えの部屋に案内された。
手渡された服を着てみる。
そして驚く。
この服……ピッタシだ。俺の採寸もしてないのに、どうしてここまで。俺の疑問を感じとったのか、タキシードのおっさんはにこやかに微笑む。
「そのくらい出来ませぬと、王城には入れぬゆえ……。私にとってこのくらい朝飯前といったところです。私の独断で黒色に致しましたが、お気に召されたでしょうか」
「うん、かっこいいよ。なんかこう、何でもこなす使用人感が出てくる。ありがとな! 」
「いえいえ……。では、お時間になりましたらお迎えに上がりますが、時間までどちらにおいでで? 」
「少し外の空気を浴びたら戻ってくるよ。門番の子の様子も確認したいし」
そうして俺は、タキシードのおっさんが仕立ててくれた、黒服を着て、外に出た。
「げっ……」
俺を見るやすぐにそんな声を漏らしたのは門番のルミシアちゃんだ。
「土下座女ちゃん! いや高級ケツ女ちゃんって呼んだ方がいい? 」
「王様はなんでこんな人を招き入れちゃったんですかー! クズですよ!? こんなに最低な人、初めてですよ。……このクズ男! 」
「もっかい分からせないといけないみたいだな? 」
「望むところですよー!! 汚名返上です! 王城最強の門番ルミシア。クズ男を討ち取ります。モーン、見ていてください! 」
「あたしには結末が見えるんですけどね……ノア様、うちのルミシアがいつもごめんなさいね」
モーンちゃんが呆れたようにルミシアを見たあと、俺にそう声をかけてきた。
「俺は全然いいんだけど……」
ひとつ、意地悪をしたくなった。
俺はルミシアを見やる。
「うーん、この試合、俺にメリットないんだよなぁ? というか俺はこの後スグハと出かけるんだ。もし今ルミシアの戦って、99パーセントいや100パーセント俺が負けることは無いが、もしも服を汚されたら、スグハが後ろ指を刺されちゃくよなぁ? どーーしてもルミシアが戦いたいみたいだから、仕方なくやってやるけど、なんにもメリットがないのっておかしいよね」
服が汚れることなんてまずない。
外に出る前に使用人のおっさんが着替えさせてくれたこの服、【鑑定】してみると【防護】やら【水耐性】、「衝撃吸収」【一定ダメージ無効】など色々付与されていた。
その後自分でも付与しまくって、最強の服が出来上がった。
もしこれを売れば、しばらくは遊んで暮らせるレベル。
そのため【汚れ】が付くなんてことはありえない。
では何故こんなことを言ったのか。
ただこいつを困らせたかっただけである。
くくく……と不気味に笑う。
ルミシアは何かを決めたような様子。
「メリットがないってなら、もし……ノアさんが勝ったら……明日……」
そこまで言って、あぅぅ…と恥ずかしそうに目線を背ける。
「明日? 」
「昨日言ったこと覚えてます……? ほんの一瞬だったから覚えてないだろうけど、明後日休みだからお茶してもいいよって……」
「言ってたなー」
「覚えててくれたんですか……! それで、その……明日、ルミシアを……好きにして、いいですよ? 」
なっ……!?
こ、こいつ、今とんでもない事を……。
好きにしていいって……。
予想外の言葉に慌てていると、ルミシアはニヤリと笑う。
「あれっ? 王女さまとのデートなのに、私の予想外なことに驚いちゃってるんですかー? 怒られちゃいますよ〜? ほらほら、まいりましたって言ってくれれば終わりますよー」
「よしやろう。今すぐやろう」
「そうですかー……えっ!? 王女さまじゃなくて、私取るんですか!? ……う、嬉しいような、後が怖いような……」
あたふたとしているルミシアを横目に俺は、モーンちゃんに声をかけて、試合開始の合図を頼んだ。
「えっと……始め? 」
その言葉ともに俺は、未だ慌てふためいてるルミシアに急接近。
うわっ、いつもよりスピードが早い。
この服……やはりとんでもないな。
「わっ!? ちょー!? 」
「残念だったな、スグハは俺のハーレムを公認している。お前もハーレムになるんだよ」
ぱんっっっ……!!!!
後ろから思いっきりケツを叩いてやった。
「あっ……ひんっ!? 」
びくんっ!! と身体をうねらせて、ふらりと俺に寄りかかってきた。それを受け止めて、クソデカ乳を揉む。
「ちょっ、ノアさんっ……っっっ〜!? 」
「ほれほれ、降参するか? 」
絶えずもみしばいてると、我慢の限界が来たのか色っぽい声で、ぜぇぜぇと汗をかきながら降参した。
ドン引きしているモーンちゃんによって、柱を背にして座ったルミシア。
「うぅ……してやられましたー! 私、異性に胸触られたことなかったのに……けど……不思議と嫌じゃなかったです。悔しいですけど、ノアさん……イケメンだし……」
「ルミシア……伝えちゃってもいいんじゃない? 貴方の気持ちを」
「! ……そ、そうだよね。けど……私なんか……それに今汗臭いですし、明日の方が……いいかな」
何やら話し込んでいる。
夕日が沈んで、空は暗くなった。
そろそろスグハの部屋に行った方がいいだろう。
「じゃあなルミシア。明日、楽しみにしてるぜ! 」
すっごく顔を赤くしたルミシアはこくりと頷くのだった。
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