第12話 ヒモ男、国王と雑談

「ーーーと、こんな感じ。だからネシアを俺の部屋に住まわせたいんだけどいい? 」


昨日あったことを国王に伝えた。

すると国王はかなり驚いていた。そりゃそうだ、使われていない部屋……いや、あることすら気づなかった部屋に少女が縛り付けられていたなどと、伝えられて驚かないはずがない。


それにこの人はどっかの帝国とは違って、人情のある人だ。

自分の城で、そんな事が起きていた事を知って悲しんでいた。


「しかし……何故誰もその部屋を気づかなかったのだ? 」


さっきまでで伝えたのは端的にだ。

ネシアの言う、不気味な人ーーーそいつが盗聴している可能性だってある。


ネシアの話を聞くに、昔のことではあるが、用心するに越したことはない。


「国王、この部屋は【防音】魔法は付与されてるか? 」


「む……? ああ、一応だが」


俺も念の為【防音】をこの部屋にかけた。


「ネシアが言うには、怖くて不気味な人に連れられてその部屋に封印されたらしいんだ。そいつが部屋には認識阻害の魔法をかけ、更にネシアを見た全ての人間に何らかの魔法を使って記憶が消されている。だから、国王も知らなかったんだと思う。……でだ。なんか心当たりとかは無いか? 」


「怖くて不気味な人だけではな……」


頭を悩ませる国王。

そりゃそうだろうな、しかし手がかりはそれだけだ。


「それでそのネシアという少女は今どこに? ノア殿の部屋か? 」


「バカメ……ミナが起こしてくれたんだが、二度寝してしまってね。それで起きたら二人とも居なかったから、朝食でも食べに行ったのだろうと結論づけて、俺は国王にさっきの話をしに来たってわけだ」


「ふむ、まぁ分かった。使用人やメイドたち、城の皆に伝えておこう。……む? それをしてしまったら、また記憶が消されてしまうのか。……城の人間は皆、良いやつらばかりだ。でも、誰かが、そんなことをしているのだな」


身内の中にそんな奴がいる事実を知って、国王は少し悲しそうだった。


「どっちにしろネシアの存在を隠し通すのは無理だし、公表はお願い。ネシアは俺が守るんで」


「分かった、では伝えておく」


「あっ、そうだ。国王にはこれを渡しておこう」


ポケットからとあるネックレスを取り出し、手渡す。


「この魔石の部分に魔力を送れば、俺に信号が行く。……もし犯人が国王に近づいたらこれで知らせてくれ」


「うむ、分かった。して、これはノア殿が作ったのか? それとも帝国の魔道具屋か何か……」


「俺が作ったやつだけど、やっぱちょっと変? 」


「そんなことはない。ジョブかスキルは魔道具関連のモノなのか? ……っと無粋な質問だったな、忘れてくれ」


この世界、少なくとも帝国では人のジョブを詮索するのはあまり良い行為とはされてなかったのだが、国王の言葉を聞く限り王国でも、同じなのだろう。


「そう……だな。あまり人には言いたくない」


ジョブが【ヒモ男】なんて言えたものでは無い。

けど、この効果のお陰で、俺は少しだけ強くなれたのだから、自分のジョブは嫌いでは無い。


俺にとって最高に相性の良いジョブだと思っている。


「それはすまなかった。そろそろ仕事があるのでな。ノア殿は自由に過ごしてくれたまえ」


「外って出ていいの? 」


「全然外出してもらって構わんぞ。ノア殿ほどの腕が経つものであれば護衛などはいらないだろうが、案内人として誰かつけてもいいぞ」


「んーじゃあミナ連れてっていい? 」


「! ノア殿よ、ミナは粗相をおかしてないだろうか。彼女は真面目で仕事もきちんとこなすんだが、ノア殿の紹介をした際から豹変してな」


あれが真面目に仕事をこなしていただと!?

意外すぎて俺は目を丸くする。


「……主人をほったらかしにして朝食を食べに行くようなやつだぞ」


「変えた方がいいだろうか。実は彼女がどうしても専属メイドになりたいと立候補したものだから、任せたのだがやはり……」


「ん? あーいやいや、変えなくていい。いや、ミナがいいんだ」


あいつと会ってたった一日しかたってないけど、それでもあいつが俺のために頑張ってくれているのは事実だ。


「ちょっと変でアホなバカメイドだけど、俺にとってあいつはもう大事な人だ。……それにあいつ、可愛いしな」


「もうミナとそこまでの関係に……こほん。ちゃんと仕事をこなしているのであれば問題ないな。……ミナもいいが、娘とも頼んだぞ」


「もちろん! ところでスグハっていつくらいから空き時間になるの? 」


「む? 第三王女だから、基本いつでも暇してるぞ。外出するなら誘ってやってくれたらよろこぶと思うぞ」


へぇ、そうだったのか。じゃあ今日は2人に……ネシアを一人部屋に残すのは不安だし皆で出かけるかね。


「じゃあこれで。話長くなったけど国王は大丈夫なの? 」


「書類と睨めっこの時間が始まる」


「が、頑張ってくれ」


こうして、国王との話し合いが終わった。

部屋を見守っていた騎士の二人は、出てきた俺を見るや直ぐに敬礼してきた。


君ら、さっきと変わりすぎでしょ……。

頬が少しほころんでいるような気がした。


「何かあったの? 」


「「いえ、なにも! 」」


「そうか」


まぁ、気のせいか。


今回は途中でメイドを直ぐに捕まえれたから、道に迷うことなく部屋に帰れた。


流石に二人は部屋に戻っているだろうか。

中に入ると二人とも帰ってきていた。


ネシアは俺に気づくと、


「ノアおかえり」


ベッドでゴロゴロ転がりながら言ってきた。

ミナは俺を見て、地面を見て、また俺を見ての繰り返し。……何してんだこいつ。


もしかして、起こしてくれたのに無視して二度寝したのを怒っているのだろうか。一応謝っとくか。


「朝はごめん」


「いいですよ。わたしはそれよりも、急に部屋から居なくなっちゃったことに怒ってます! 」


「それはお前らもだろ! 」


「ダメ男さんが全く起きないのが悪いです! ネシアちゃんがお腹空いたと言ってきたので、朝ごはんを食べに行ったんです! 戻ってきたら、居なくなってるし、食堂にも来てないって知って……今からスグハ様と一緒に探しに行こうとしてたんですよ! 」


「書き置きも残さずに居なくなるのも悪いだろ! 」


「「少しだけ心配したんだぞ! (ですからね! )」」


「バカメイドの分際でこの俺を心配だぁ? 」


「ダメ男さんに心配される覚えはありません。(わ、わたしを心配してくれた……? )」


こいつ……可愛いところあるな。


言葉が被ってしまって、気まづさのあまりお互い顔を背けてしまう。


そこにネシアが一言。


「ノアとミナ……夫婦? 」


「違うわ! 誰がこいつなんかと」


「ネ、ネシアちゃん!? ……ダメ男さんとの新婚生活……楽しそうかもしれない」


「バカめ、お前は一生俺に尽くすだけのメイドなんだよ」


「そ、そうですよね。うん……」


その言葉に俯くミナ。

えっ、そんな反応されるとは思ってなかった。ここはなんでダメ男さんなんかに尽くさないといけないんですか! とか言って怒ると思っていたのに。


「ノア……ひどい」


ううん……。ネシアにまで言われちゃったよ。


――――――――――――――――――

【あとがき】

「続きが気になる!」「面白い!」「子供は助けるけど口は悪い……ノアって良い奴なのか悪いやつなのかよく分からんよな」「ヒモな時点で悪いやつだろ」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! 作者のフォローも是非是非お願いします! ――――――――――――――――――

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