第11話 ヒモ男、国王の部屋に行くだけでも一苦労

目を覚ました。いや、正確には覚まされた。


「起きてくださいー朝ですよ。ほら、ネシアちゃんも! あらネシアちゃんは偉いね〜すぐ起きてくれて助かるよ。それに比べてダメ男さん? 」


「あ、朝からうるさいな……もう少し寝させろ」


「もう、初日からこれですか!? 」


「眠いんだから仕方ないだろ……俺は普段、起きるのは昼過ぎだ」


んで、アリサが作り置きしてくれている朝ごはんを食べて、ギャンブルをしに街へとくりだす。


「クズですね」


「あー? 主人に向かってなんだその言葉」


「ああもうだめです……ネシアちゃんの前だから自分を抑えてますが、もう少しで手が出ちゃいます」


「叩かれたら100倍にして殴り返すからな覚悟しとけ」


「そっちの手が出るじゃないですよー! てかこんな可愛い女の子を殴ったらだめですよ!? わたし、ダメ男は好きですけど、そこまでのクズはごめんです! ボコボコに殴られて喜ぶ趣味だけはないので……」


あ、そういえばこいつそうだった。何故かは全く知らんが、俺みたいな男が好きらしい。そんな彼女でも暴力系は嫌いみたいだ。


「お前なーネシアがいるから、とか言い訳してるけど、昨日俺にキスしようとしてきたのはどこの誰だろうね? 」


俺がそう言うと、殴りかかってきた。


「おい! 暴力系は嫌いじゃなかったのか! うわ、あぶな! 」


「殴られるのは嫌ですけどねー! わたしが殴るのはいいんですー! てかわたしを掴んで抱き寄せようとしてきたダメ男さんは、自分のことはたなにあげちゃうんですね」


「誘惑してくるお前が悪い! このバカメイド! 」


「きゃっ! 拒めばいいだけだったのにわたしを受け入れようとした時点で、ダメ男さんは乗り気だったってことですよねー! 」


「アホか! 誰がお前みたいな……」


「ぐすんっ……」


「ノア……ミナ泣かせた。いい人だけど悪い人」


うぐっ……。ネシアにそう言われると、なぜか心が傷んできた。


……少し言いすぎたかもしれない。

まさか、本気で泣かれるとは思ってなかった。


ミナは少々、いやかなりの変人だけど、れっきとした女の子だもんな……。


「わ、悪かったな」


「別に泣いてませんけどね、おマヌケダメ男さん。焦って謝りだすのかわいいです♡ 」


「次やったら殴る」


「もうっ、酷いですねわたしのご主人様は。……目覚めました? 」


その言葉にハッとする俺。

まさか、こいつ……俺がスッキリと目を覚ませれるようにと、やっていたのだろうか。


しかし、俺はニヤリと笑い毛布にうずくまった。


「いや、全然。むしろお前と話してて眠くなってきた。もう一眠りするがこれはお前のせいだ」


さっきの仕返しをここぞとばかりにしてやった。

慌てふためいて、文句を言ってきたが、スキル【耳栓】で音をシャットアウトした。


五分ぐらい無視して、それから反応を見よう。

……ぐぅぅ。


目をぱちくりと開ける。

五分だけのはずが、もう少し寝てしまったかもしれない。


起き上がって背伸びをする。

あくびをしながらベッドから出て、顔を洗う。


因みに部屋には俺以外いない。

ミナもネシアもどこかいったのだろうか。


何分寝てしまったのか分からないが、愛想をつかして俺抜きで朝食でも食べに行ったのかもしれない。


ここでのご飯のルールとかまだ聞かされてないから、よく分からない。ミナが帰ってきたら聞いてみよう。


まぁ直ぐに帰ってくるだろうと、気楽に過ごしていたのだが、いつまで経っても二人は帰ってこない。


「何してんだあいつら……」


ミナがいるから流石にネシアが迷子になったとかではないだろう。


急に少女が一人増えたわけだから、問題になってないかは不安だ。


もう起きてる可能性も高いが、余計な問題になる前に国王に伝えておくか。


部屋をでて、廊下を歩いていると一人のメイドとすれ違い、声をかけられた。


「初めまして、ノア様ですね。メイドの一人のタアンです。困ったことがあればなんなりとお伝えくださいね」


「じゃあ早速頼みたいんだが、国王の部屋に案内してくれない? 」


「国王陛下ですか……わ、分かりました」



「着きました。ここが国王陛下のお部屋です。では私はこれで」


「おう、ありがとな! 」


深くお辞儀をして、来た道を帰って行った。


国王の部屋の前には二名の騎士がたっていて、要件を聞かれた、というか。


「国王陛下に何の用だ貴様」


「見たことの無い顔だな……曲者か!? 」


「は? 国王から話聞いてない? 」


「陛下に向かって国王だとっ!? こ、拘束しろ! こいつは侵入者だ! 」


いや待て待て待て待て!

うわ、あぶねっ、剣がかすった。


まだスグハの件は全員に行き届いてないのか。


「だから! 俺は侵入者とかじゃなくて、スグハの専属護衛騎士の! 」


「スグハ様をお守りしているのはガルド様が率いる王国騎士団の部隊だ! 貴様みたいなヒョロガリで胡散臭い人間は王国騎士団には入れない! 」


「ガルドのおっさんは俺のダチだよー! 」


「ガルド様に向かっておっさんだとっ!?!? ゆ、許せん、おいこいつの首は跳ねてしまって構わん! 」


「ちょ、国王ー!! 俺殺される! 早く出てきて」


俺が大声で叫ぶと、ドタバタと部屋の先から慌ただしい物音が聞こえ、ドアが開けられた。


「の、ノア殿! お、おいお前ら、この方は娘の命の恩人ぞ! 」


「……え? 」


「……へ? 」


「コ、コホン。こ、国王陛下、こ、この人はスグハ様の専属護衛騎士などと戯言をはいてまして……」


「ばかもの!事実だ!! 昨日伝えただろう!! また居眠りか!? 」


「い、いえ決して居眠りなどーーー」


「じゃあ何故、ノア殿を襲っているんだ!? 」


「あ、あまりにもそうは見えなかったので、曲者だと……」


「娘の命の恩人に何を言う!! ノア殿すまなかった!! 」


二人の頭を掴んで、国王は頭を下げた。

こういう立場の人が、俺みたいなのに頭を下げるのってだめなんじゃ……。


「む? ノア殿は娘の専属護衛騎士の役職だからな。下手な貴族よりも地位は高いぞ? もちろんこのバカ共よりも」


バカ共というのは、さっき斬りかかってきた騎士の二人のこと。


「して、ノア殿は何か用事があって来たのだろう? 部屋に入りたまえ」


「そうっすね。どうも」


国王の部屋に招き入れられた俺は、ドアが閉まるその瞬間まで騎士2人に謝られ続けた。


やれやれ……俺みたいな、いかにも凄腕の護衛騎士の顔をした人物はそうそう居ないだろうに。



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【あとがき】 「続きが気になる!」「面白い!」「お前はただのヒモだろ!」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! 作者のフォローも是非是非お願いします!

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