第6話 ヒモ男、専属護衛騎士(ヒモ)になる

城の中はめちゃくちゃ広くて、キラキラピカピカした娼館とは違った意味でキラキラピカピカしていた。高そうな絵とか装飾品とか沢山ある。


そんなことよりもだ!

俺はホンモノのメイドさんを見れて感動している。メイドコスプレの食べ物屋さんとかは帝国にもあって、もちろん俺は毎日通っていたのだが、正真正銘本物のメイドさんを見れて感動している。


前にアリサについて行って、帝国のお城入ろうとしたら、門番につまみ出されちゃったからな。


いつも指名していた帝国のメイド喫茶のあの子にもう会えないのは寂しいが、これからはここのメイドさんで楽しむとしよう。


連れられて向かった先は謁見の広間。

しばらく待っていると、ひげもじゃな金髪のおっさんが、デカくて煌びやかな椅子にどかんと座る。


ざっ! と片膝を床に着けて、平伏するみんな。

俺も1歩、いや10歩くらい遅れて、真似した。


あの人が国王だろうな。


「……此度の悪夢の森への遠征見事であった。見たところ全員無事なようだな」


「ではワシが説明を」


リーダーおっさんが、俺が来る前にあったであろう出来事を伝えていく。国王は何一つ変わらぬ表情であったが、うむうむと相槌はうっていた。


報告が長すぎて眠りかけていると、ようやく俺の説明が始まった。


「ーーーでして。ワシらは全滅、スグハ様も足が動かず危ない。その時に颯爽と現れて、一撃でその魔物を倒し、ワシらの傷まで治してくださったのがこのお方です」


国王の前では流石にスグハ嬢ちゃんとは呼ばないんだな。

なんか二人が話してるのを見てた感じ、凄く仲良さそうだったし、わざわざ国王の前だけ変える必要ないと思うけど。


堅苦しい何かがあるのかね、やっぱり。

説明を受けた国王が俺を見やる。


「ふむお主か……見たところ平凡な男にしか見えんがーーー」


「お父さん!! ノア様に失礼ですよ! 」


スグハが怒ると、国王はすまんすまんと言ってきた。

あーなんかわかった気がする。この国王、娘をあんな危険な森に行かせるくらいだからなんとも思ってないのかと、勘ぐっていたが、大切にしているようだ。


でなければ、一国を束ねる者が、平民にしかもこんな奴に謝るわけが無い。


「えーこほん。国王様、紹介にあずかりましたノア・ヒモオーと申します。ええと、俺……私は帝国から国外追放を受けて、悪夢の森を抜けてこの王国を目指している最中、魔物と戦闘中のスグハ……様たちと出くわし、加勢したまでです」


俺は基本誰に対してもタメ口だが、さすがに国王にそれはマズイだろうと判断して、所々怪しくなりつつも話した。


おっさんたちが呆然としていた。

聞いていた国王は、ふむとうなった後こう言ってきた。


「娘を、そして王国騎士団を助けてくれたことに感謝する。褒美はなんだってやろう。貴族にだってしてやるし、金が欲しいなら莫大な金を用意させる。女が欲しいなら王国中から美女を集めてやる」


「うひゃぁ! 二つ目と三つ目めっちゃいい! ……だが、受け取れないぜ国王様」


「な、何故だ。……そんなに目が輝いているし、身体が飛び跳ねているのにかっ!? 遠慮はしなくていいのだぞ」


「あ、やー俺……私遠慮なくとかは全くしないタイプなんですけど、それらよりももっとイイモノを、スグハ……様と約束させて頂いたので」


「なっ、本当か! スグハよ、この男は何を所望しているのだ! 」


スグハは照れ顔で言う。


「ノア様は……私のヒモになりたいそうです。なので今日から一緒のお部屋で住むことになりました。私からもお願いします。ノア様をヒモにさせて下さい……てへっ」


数秒の静寂の後……。


「ひんぎゃあああああああああ!!!! 娘がとんでもない事いいおる!!!!!! どうしたらいいんだああああああああああああああ!? 可愛い娘の願いなら叶えてやりたいし、しかも命の恩人と来た! これは叶えるしかないが、うんぎゃあああああああああああああああ!!!!! 」


どうやら、凄く困らせてしまったみたいだ。

頭を抱えて、高級なレッドカーペットの上を転げ回っている。


傍付きが慌てて起き上がらせる。

少しして落ち着きを取り戻した国王は息を吐いたあと、意を決したように宣言した。


「ええい、もう考えるのもバカらしい! 可愛い娘の頼みだ! 悪夢の森のSSSランクの魔物を瞬殺するような人なら、対外的には専属護衛にすればいいじゃないか! わははは! ノア殿よぉ! これから君は、望み通り娘のヒモだ。だが、世間的には専属護衛騎士とする! 娘をよろしく頼んだぞ! おい、セバス、そのように手筈を整えてくれ」


「はいはい、ただいまんまん」


俺の見間違いだろうか。

セバスと呼ばれた人物は、先程までこの場に居なかったが、呼ばれた瞬間には国王のすぐ横にいて、1秒後には消えていた気がする。


それに、猫耳の巨乳美女の残像だったのだが、それもまた気の所為だろう。


やけくそになった国王が、わひゃひゃと笑いながらOKしてくれたので、俺は国王にもう一度挨拶をするべく、目の前に行った。


「こんな身分も何もかもが不足している俺……私を認めて下さりありがとうございます」


「む……? 娘の顔を見たら、ノア殿が信用出来る人間であることは伝わったぞ。それと、もっとフリーな口調にせんか。カタコトより、ありのままのノア殿の方が良いぞ」


「ぷはー! 敬語なんて初めてだったから息止めてるみたいできつかったから助かる! んで、もう解散? 俺はスグハの部屋に行きゃいい? 」


「ふはは、その方が似合っておる! ……一応ノア殿専用の部屋を急いで作らせるが、一日はかかるじゃろて今日のところはスグハの部屋で寝泊まりしてくれ……む、もちろん部屋が出来てからも、好きにしてくれたらいい」


国王の物分りが良すぎて、俺は感極まって泣いてしまった。


その場の全員がぎょっとなり、慌てふためいて俺に駆け寄ってくる。


「ノア様どうされたのですか!? お腹が痛いんですか!? 」


「ボウズどうした!!? 」


「ぐすっ……あーいや、まさか国外追放されて1日目で、人の温かさに触れれて、なんか感動しちゃってさ。それに言ってなかったんだけど、追放されるまでずっと一緒に居てくれた女とも離れ離れになって、平気だと思ってたけど……やっぱ辛かった、悲しかった……」


ずっとへらへらしてたけど、少し人が怖かったんだ。

らしくもなく涙を流してしまった俺を、スグハは優しく包み込んで、俺が泣き止むまでゆっくりと頭を撫で続けてくれたのだった。


「早速ヒモしておるな。まぁ、これからよろしく頼むぞノア殿」


「大丈夫ですからね、ノア様。これからは私がずっと傍に居てあげます。それに、その女の子もきっと会えますよ。きっと……けど、それまでは、いや、それからも私が一番でいたいです……」


こうして俺は、帝国から国外追放されてわずか一日で王国での居場所をみつけ、第三王女に溺愛される人生がスタートした。



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【あとがき】 「続きが気になる!」「面白い!」「専属護衛騎士とは名ばかりのヒモで草」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! 作者のフォローも是非是非お願いします!――――――――――――――――――

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