第2話 ヒモ男、王国の第三王女を助ける

しばらく森の中を歩いていた俺。


ここはSSS級に指定されてる、言わば自殺志願者だけが来るような森ということもあり、【まぁまぁ強い】魔物がうじゃうじゃ蔓延っている。


俺の姿を捉えるやすぐに、食事にありつかんと飛びかかってくるが、全部ビンタでぶっ倒す。


頭の後ろに両手をやって考える。

どうしたもんかねぇ、ぶっちゃけ王国に着いてもしばらくは野宿をするしかないだろうし。


【アイテムボックス】の中から財布を探し、がま口を開ける。この財布も異空間仕様になっており、こんな小さな手のひらサイズだが、実際には無限にお金を蓄えることが出来るスグレモノだ。しかし、手を突っ込んでも、金は数枚しかない。


「あーもう! ほんとは今日アリサにお小遣い貰う日だったのに!どうしてくれんだよあのクソ勇者とバカ皇帝〜!! 」


勇者パーティとして、帝国からかなりの金が支援金として渡されているらしいし、更に応援要請とかで領地とか村に派遣されて人助けしたら報酬金がたんまりもらえる……とアリサから聞いている。


アリサ曰く「私は別にこんな大金持ってても使わないし……ノアさんは命の恩人なので全部貢ぎますね♡ 」とのこと。


だから、勇者が言っていたように催眠をかけたわけじゃあないし、脅してなんかもない。


……当事者である俺とアリサの声は皇帝には響かなかったようだが。


え? アリサのお金もう全部食いつぶしたの? 最低っ! そんなツッコミが聞こえてきた気がする。


一度に全額貰うのは流石に気が引けたので、毎日お小遣いと称してお金をもらっていたのだ。


そのお小遣いは当然大切に使わせてもらっていたので、こうしてちゃんと貯金が残っているのだ。


1枚、2枚、3枚、4枚、5枚……。

ええと、合計で1000Gくらいかな。(※毎日のお小遣いは1万Gである)


何にお金をそんなに使っていたのかって?

娼館とギャンブル……。男だからね仕方ないね。


自分のことを想ってくれてる女の子のお金で、他の女と遊ぶ。我ながらクズである。


ええい、助けてやっただけで勝手に恩義を感じて、なんか尽くしてくれてただけだ。俺がお願いしたわけじゃあねーし!


クズに磨きをかけながら、王国への道のりを進んでいく。ここまでうっっっっっっっっとおしいほど魔物を倒してきた。


ジャイアントオーガとかデスウルフとか。

王国の冒険者ギルドに売れば少しは金になるかな?


倒した魔物を【アイテムボックス】に収納しながら進んでいった。


休憩を挟みながら進むこと数時間。


人っ子一人いねぇから、なんつーか……寂しいな。

そう思った自分に驚いた。


アリサと出会ったあの日から、ずっとアリサはそばに居てくれた。勇者パーティとして活動していて忙しく、遠征の日をのぞけば全部、時間を見つけては俺に会いに来てくれていた。そして食事も作ってくれたし、話し相手になってくれた。


賭けに負けて金溶けたって、普通なら殴られてもおかしくないのに、「次は絶対勝てますよ! 幾らでもだしますからっ♡ 」つーて。


けど、今はそんな彼女は隣にはいない。


……なんか、あいつ。俺と離れれて良かったんじゃないか。

そ、そんなことはないか。


らしくも無いことを思ってしまった。

ぐいっと背伸びをして、歩き出す。


ーーー「きゃああああああ!!! 誰か助けて」


少女の叫び声が聞こえた。


ここはSSS級指定だそっ……!?

こんなとこに来るなんて、死ににきた奴か、自分は強いと勘違いしたイキリ冒険者か、俺みたいなやつだけだぞ。


あれ、案外いるな。

こほんと咳払いをして、俺は悲鳴の聞こえた方に走った。


銀色の甲冑を着たおっさんたちが手をぷるぷると震わせながら剣を持って、魔物と対峙している。後ろには金髪の少女がいて、おっさんたちはその少女を守っているようだ。


壊れた馬車の破片が散乱していて、馬は死んでいた。魔物にやられたのだろう。


「王女様! 王女様は早く逃げてください!! 」


「ここは私達が食い止めますっ……! 」


「あ、あああ足が動かない……」


そりゃそうだろう。あんな、言っちゃ悪いが魔物すら見たことないような温室育ちっぽい女なんて、SSSランクの魔物に睨まれただけで動けなくなる。


失禁していないだけ素質はある、か。


「やーやー、おっさんたち。そんなビビってたら倒せるモンも倒せないぞ」


「誰だお前っ!? 」


「き、君……! 王女様を……そこのお方を連れて逃げてくれないか」


「……え、今森の奥の方からこなかったか……? 」


ん? 王女……?

周りをきょろきょろと見渡してみる。


さっきの悲鳴をあげたであろう女と目が合った。

俺はこいつの近くまで歩いて、かがみこむ。


「お前王女なの? 」


「え……あ、はいっ! 私はアルデウレット王国の第三王女、スグハ・アルデウレットです。……これが証拠のペンダントです」


胸元からそれを出して、手のひらにのせて見せてきた。

まじか……。俺は驚いた顔をする。


いや、ぶっちゃけこんなの見せられても俺は王国のことなんてなんも知らん。ペンダントが証拠ですって言われてもね。


そのペンダントを見てみると、確かになんか凄そうな気配を感じた。


この状況で嘘つくとも思えんし、こいつが王女なのは本当だと見ていいだろう。


「あのっ……! 助けて……くださいませんか。なんだってしますので! 」


おいおいとんでもないこといいだしたぞこいつ。

おっさんたちもぎょっとしている。


「なぁ王女。今、なんでもするって言ったよね? 」


「……はい」


俺はニヤリと笑うと、言った。


「俺を養ってくれるならいいよ! 助けたげる。あ、お小遣いは毎日ね。それに、毎日3食の暖かい食事と、ふかふかのベット、それとそれとーーー」


「わかりました! 全部OKです! 」


「俺を一生養ってね! 」


「えっーーー」


全部OKとの返事をもらった俺は、魔物の方に向かう。


「ひゃっほ〜い! アリサの代わりみーつけたっ! 俺のヒモ生活のためにお前は死んでもらうぜ! せいやっ! 」


ずうううんん!!!


手刀で名も知らぬデカくて緑色の魔物をぶっ倒した。

【アイテムボックス】にそれをぶち込んで、向き直る。


あれっ……? なんかおっさんたちが、目をひんむいてこっちを凝視してる。


「あっ、おっさんたちの手柄横取りしてごめん! そこの王女サマに頼まれたからね」


「ち、違う! そんなことに驚いてるのではない!! 」


「さっきの魔物が欲しいってこと? ならやるよ」


ずずず……と死骸を引き出そうとしたら、止められた。


「じゃあなんなの」


「わ、ワシには、そなたが、その魔物を手で倒したように見えたのじゃが……」


おっさんたちの中でも、年齢が一番高そうな白髪のおっさんがそう言ってきた。


「そうだよ? こう、ちょん。っと」


「し、信じられん……いや、この目で見たのだから真実なのじゃが……」


「うそだろ……俺、ここでもう死ぬんだって悟っていたのに。あんなにさくっと……」


「えーお前ら王女の護衛なんだろ? あんくらいさっと倒せないと。ぷるぷる震えてちゃだめだよ」


「「「いやいやいや! 」」」


「は……? SSS級の森に入るつーことは、あんなんがゴロゴロいるのは知ってるだろ」


「入口からさほど離れていないこの場所は、出てもSランク止まり。深部に入っていくほど、SS、SSSと上がっていく。これがワシらの常識じゃが……」


なっ……そうだったのか。


「へー帝国と王国じゃやっぱ違うんだな」


「へ……? て、帝国……? そなた帝国の人間なのか? 」


「んー元帝国の人間つった方が正しいかな」


「て、帝国ということは……あちら側からこの森を抜けて、ここまできた……と? 」


「それ以外に何があるんだ? 」


首を傾げながらそう聞いた。


「そ、そなた……何者なのじゃ……」


「俺はただのーーーヒモ男だ」


――――――――――――――――――

【あとがき】

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