追放されたヒモ男が、実は最強〜JK賢者のヒモは勇者に妬まれ帝国を追放された。隣国の第三王女を助けたら、専属護衛騎士(ヒモ)になったので、王城でのんびりハーレムライフ。あ、逆恨み勇者は自滅してるみたい〜

雪鈴らぴな@第2グラスト大賞プロット受賞

第1話 ヒモ男、勇者をぶっ飛ばして国外追放される

「ノア、お前に勇者ユウトは決闘を申し込む!」


早朝から勇者に呼び出されたかと思えば、顔を合わせるやいなや決闘を申し込まれた。


……勇者に。


「はぁ、なんで勇者サマが、なんの取り柄もないようなこの俺に」


自分で言うのもなんだが、俺は弱い。

それに、勇者と一戦まじあうような間柄でもなければ、こいつと目を見て話したのは今日が初めてだ。


なぜ勇者に目をつけられたのか分からない。

ただの一般人だし。


「亜梨沙を……亜梨沙を解放しろ! 」


「アリサ? 」


アリサとは今俺の右隣に居る女だが……。


「え、お前彼氏いたの? あいつと関係あった感じ? 」


こいつらはこの帝国……いや、この世界の人間ではなく、異世界から召喚されたと聞いた。


何人か召喚されたうちの二人が、勇者であるユウトと、賢者のアリサ。


ある日家の近くを散歩していたらアリサがぶっ倒れていて、適当に介抱してやったら、めちゃくちゃお礼を言われてなんでもすると迫って来たので、貢がせているのだ。


……そう、異世界賢者のヒモをやっている一般人なのだ。


なんかめっちゃお金くれるなーって、興味本位で聞いてみたら、そこで転移者だと知り、賢者としての訓練で俺の家に来たらしく、魔物にやられてしまったと。


一緒に召喚された奴らは同じ高校とやらの仲間だけど、あんまり仲良くやれてないと相談を受けていたのだが、いつの間にかそんな間柄になっていたとは。


「ううん、前も言ったけどただ同じ高校なだけだよ。……ねぇユウト君、ノアさんはそんな人じゃないって私何回も言ってるよね……? なんで信じてくれないの……」


「お金やモノを貢がせるやつがいい人なわけないだろ!? それに催眠魔法の類でもかけられないと、そんな奴と一緒にいる訳ないだろ。そうだ! アリサはその男に催眠魔法をかけられてるんだよ!! 待ってろ俺が今すぐ助けてやるから! うおおおおおおお!! 」


ごもっともである。が俺は事情がある。だから仕方ないのだ。


剣を【何も無い空間】から引き抜いて、俺を目掛けて斬りかかってきた。


俺がその様子を観察していたからか、ユウトが自慢げに言ってくる。


「どうだ、俺は異空間からアイテムをなんでも取り出せるチートスキルを持ってるんだよ! 容量は無限だし、日本からのアイテムも取り出せる」


俺はそれをひょいとかわして、アリサを後ろに下がらせる。


「お前がぁぁぁぁぁ!!!! アリサに気安く触れるなぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」


目にも止まらぬ速さで斬撃を繰り返してくる。


はぁ……。めんどくさい。

避けるのすらおっくうになってきた俺は、剣を指先でピタリと止める。


「はっーーー!? 」


動揺しているユウトの腹に蹴りを入れる。


ずどおおおおおおおおんんんん!


闘技場の壁に激突したユウトは、次の瞬間には目の前に迫り、大きく剣を振りかぶってから一閃。


ずさりーーーと俺の身体が二つに切れる。


「よしっっっ!! 」


「きゃぁぁぁぁぁぁ!?!? ノア……!? うそ……でしょ」


ユウトは大きくガッツポーズをして、アリサは身体を震わせながら、ぺたりと地面に崩れ落ちる。


「ねぇ……ノアさん……!? ノアさん!! ちょっとなんであなたたちは突っ立っているんですか!? 早く回復術師を呼んでください!! 」


「無駄だよアリサ。こいつは賢者であるアリサを魔法で操り、勇者パーティを崩壊させようとした大罪人。助ける人なんていないよ。……ふふっ、これで君はようやく俺のモノに……」


邪悪に笑うユウトの肩を後ろからトントンと叩く。

振り返ったユウトは驚愕の表情を見せた。


「な、なんで生きてるんだ!? 」


「なんでって……逆にあんな攻撃で死ぬやついないだろ。お前が倒したのは俺の【幻影】だよ」


「じゃあもう1回殺してやるよおおおお! 」


ずううううん


流石は勇者といったところか。

バックステップで回避したが、あと0コンマ1秒反応が遅ければ、幻影と同じ末路を辿ることになっていた。


次々と斬撃を繰り返してくるが。


「お前、同じことしか出来ねぇの? 」


剣を素手で弾く。

宙に舞った剣が地面に突き刺さる。


おや、これは近くでよく見たら……。

俺が手に持つと、ユウトが焦りだした。


「か、返せよ! 」


「ふーん。これが聖剣ね。……なんかボロいね? 」


その言葉に、ざわめきが広がった。

兵士たちが「不敬だ」だの「つまみ出せ」だの「斬り捨ててしまえ」とわめきだした。


なんか、こいつらの癪に障るようなこといったかね?


「返せええええええええ!!! 」


今度は生身で殴りかかってきた。


「そんなに返して欲しいなら返してやるよ、ほらっ」


ぽいっと投げ渡すと、驚いた表情を見せるユウト。


「もうだりーし、終わらせるわ」


俺は【アイテムボックス】を開く。


目を見開く勇者や騎士たち。

どうやら【アイテムボックス】は女神の祝福を受けた異世界からの転移者にしか使えないと思っているらしく、そんな声が聞こえてきた。


俺は無視して探す。

うーん……てっとり早く倒せそうなやつっと。

殺しちゃったら不味いだろうし。あいつは殺しに来てただろうけど。


ごそごそと中を探していると、いいものを見つけた。

家の再奥地に、ご丁寧に飾ってあった金色に輝く剣。

それを取り出して、ひと振り。


ずがああああああああああああんん!!!!!!


地面をエグりながら、凄まじいスピードでユウトに迫る。

当然避けれるはずもなく、直撃し辺り一帯が白い霧で包まれた。


あーありゃ【加護】で守られてんな。

チートスキル云々と言っていたから、女神がいっちょかんでいるのだろう。


霧が晴れると粉々に割れた薄い障壁のような破片がユウトの周囲に散らばっており、本人は血を流して倒れていた。


「おい、行くぞ」


「あ、う、うんっ! 」


俺はアリサの手を掴むと、【転移】で自宅に帰ろうとする。

しかしーーー


「待て」


後ろから重々しい声が聞こえてきて、止めた。

振り返るとこの帝国の皇帝ワルン・トミニスシンと、それを守るようにして護衛の騎士達が居た。


「皇帝サマが一般人のモブになんのようですか」


「貴様がいま負傷させた男はこの帝国を救う勇者様だと分かっての行為か? 帝国に仇なす……反逆行為と捉えるが」


その言葉にアリサが反論する。


「ワルン皇帝違います! 皇帝もご覧になっていたでしょう!? ユウトが、勇者が、嘘をついてノアさんを陥れて、しかも民を守るための聖剣で一般人を攻撃したのを! 」


「賢者様はやはりこの男に洗脳されていると見た。……お前たち、治療室に連れて行け」


周りの騎士たちがアリサを拘束して、連れていこうとする。

俺はそれを止めようとするが、残った騎士たちに取り押さえられた。


「貴様を国外追放とする」


「ねぇ!! だから私は操られてなんかない!! 私の、自分の意思でノアさんと一緒に居るの!! ーーーむごっ」


口を抑えられ、言葉を遮られるアリサ。

俺のために必死に皇帝に言葉を投げるが、連れ去られていく。それでも抑えられている手をなんとかふりほどくと、大粒の涙を流しながら大声で叫んだ。


「ノアさんがどこに行っても! 絶対私はノアさんを見つけ出して見せるから!! だってノアさんは……! 私のヒモなんだからああああああ!!!!!! 」


俺はアリサにだけ見えるように小さくグットサインを送る。目を見開いたアリサはまた何か伝えようとしてきたが、バタリとトビラが閉まってしまった。


それから。思い切り殴られた俺は気絶し地面に倒れふした。

両手を縛り付けられた俺は、目隠しをさせられ、馬車に乗せられた。


揺られながら、騎士たちの会話に耳をすませた。


「こいつも運が悪いよな。勇者様が惚れている相手の傍にいるからって理由で、全てをでっち上げられて国外追放なんて」


「女だから分かるけど、賢者様の顔。あれは純粋にこの男に惚れている顔だったわよ。……なんだか可哀想」


「こいつがもし真実を知ったらどうなるんだろうな……って、聞こえてないか。あれだけ強く殴られ続けたら」


……残念だが、全て丸聞こえだ。

俺があんなんで気絶するわけがない。


正直、あの場でアリサを助けるために動いても良かったのだが、あいつの事を考えて辞めた。


あの場で逃げたら皇帝に追っ手を出されて、普通には生活出来なくなってしまう。それを考えたら、アリサには帝国で安全な生活を送って欲しい。


……十分金貰ったし。


間もなくして馬車が止まった。

俺は動かずにいると、身体を引っ張られて、地面に投げ出された。


程なくして馬車が動き出す音が聞こえた。おいおい、手足縛ったままかよ。


数分ほど待った。

【気配察知】で騎士たちが近くにいないことを【視て】から、【アイテムボックス】でナイフを取り出して、魔法で操作し鎖をといた。


手で目隠しを外すと、そこは森が広がっていた。


数時間ぶりに視界を取り戻したせいか、少し眩しい。

【状況把握】で瞬時に今の場所を特定した。


ここは、帝国と王国の分け目となる禁断の森だろう。


あんのクソ皇帝め。

国外追放とか抜かしておきながら、SSS級指定の危険な森にぽいかよ。


「はぁぁ」


ため息をつきながら、俺は森の中へと足を踏み入れて行った。


王国に俺を養ってくれて、遊ぶお金を沢山くれる可愛くておっばいのデカイ女の子いないかなぁ……。


アリサのことを思い出しながら、森を歩いていくのであった。



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