第33話 一緒に依頼を受ける

次の日の朝、英気を養った俺は冒険者ギルドに向かう。


中に入り、鉄級冒険者の依頼を眺める。


「さて、どれにしたものか」


「アォン」


「お父さん、サクヤちゃんがそろそろ違うところがいいって……」


「ふむ、あの森も何か異変があるというしな。アルルは、何かあるか?」


「うんと……サクヤちゃんとお父さんと一緒なら何処でもいいよ?」


そう言い、にぱっと笑う。

思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、ギルド内なので我慢する。

構い過ぎると、それはそれでうざがられてしまう。

カエデなんかはそれで、すぐに兄離れしてしまったし。


「くっ、悩ましい問題だ……!」


「アォン……」


「おい? アホって言ったな?」


「お父さんすごい! 合ってるよ!」


「……喜んでいいのだろうか」


そんなやり取りをしていると、後ろから肩を叩かれる。

振り向くと、そこにはカイトとカエデがいた。


「にいちゃん、おはよう!」


「アルルちゃんも、サクヤもおはよう」


「おはよーございます!」


「アォン!」


サクヤはもちろん、アルルも自然と二人に抱きつく。

どうやら、アルルも二人には慣れてきたらしい。


「ああ、おはよう。お前達も依頼か?」


「それなんだけど……にいちゃん、オレ達と一緒に依頼を受けない?」


「そうそう、折角同じランクになったことだし」


「ふむ、そういうことか……」


なるほど、その発想はなかった。

そうか……もう、自分がパーティー組むという発想がなかったのか。

どんな理由があるにせよ、一度パーティーを追放されているから。


「ダメかな?」


「一応、足手纏いにはならないつもりなんだけど……」


俺の表情から何か読み取ったのだろう。

二人が不安そうに見つめてくる。

馬鹿か俺は……女々しくして、何を弟子達を不安にさせているんだ。

一つ息を吸い、俺は二人に頭を下げる。


「いや、こちらからお願いしよう。先輩、よろしく頼みます」


「へっ? せ、先輩?」


「それはそうだろう。俺は鉄級になったばかりの新人だからな」


「い、いや〜……なんか照れるぜ!」


「ほら、調子に乗らないの。でも、確かに新鮮かも」


「しっかりと学ばせてもらおう」


俺が真面目な顔で言うと、二人の顔が引き締まる。

どうやら、俺の気持ちが伝わったみたいだ。

お前達の成長の証を見せてくれと。


「うし! やるか!」


「ええ、そうね。そうなると、どんな依頼がいいと思う?」


「そうだよな……にいちゃん、少しだけ待ってて」


「ああ、ゆっくりでいいさ」


二人が少し離れ、何やら相談を始める。

すると、それまで黙っていたアルルが口を開く。


「お兄ちゃん達と出かけるの?」


「ああ、そうなるな。すまん、勝手に決めてしまったか」


「ううん! 楽しみ!」


「アォン!」


……遠足ではないのだが。

いや、無粋なことは言うまい。

依頼ではあるが、アルルも楽しめるように配慮しよう。

数分後、話し合いを終えた二人が依頼表を持って戻ってくる。


「兄さん、これなんかどう?」


「同じ場所だとサクヤもアルルも退屈だろ? ここなら、レジャー施設も近いしさ」


渡された依頼には『ユナイテッド街付近にて、魔物の目撃証言が多数。遊びに来る観光客の安全のため、調査を行った上で討伐を求める』と書いてある。

その場所はここから一日半ほどかかり、国境と辺境都市を結ぶ中間地点でもあった。

商人や旅人なども多く、それもあってレジャー施設があるという。


「確かに、ここならサクヤとアルルも遊べそうだな」


「そうそう。それに美味い飯もあるって話だしさ。というか、美味いものが取れるとか」


「依頼もこなして、美味しいもの食べて、遊べばいいかなって」


アルルとサクヤを見ると、二人ともそわそわしていた。

どうやら、これで決まりのようだ。


「わぁーい! 行きたい行きたい!」


「アオーン!」


「それじゃ、決まりだな。では、準備をしていくとするか」


少し遊び気分な感じがするが、たまにはいいだろう。


師匠も気を張りすぎたり、急いでも良いことはないと言っていたし。


しっかりと依頼をこなして、しっかりと遊ぶとしよう。







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