第18話 娘になる
あれから三日が経ち、生活も落ち着いてきた。
奴らから、芋する式に非合法商人が捕まったとか。
その一部は密漁もしており、そこの調査も続けていくと。
その日の俺は、その説明兼事情聴取を受けたというわけだ。
「なるほど、わかりました。では、俺は無罪放免という形でよろしいでしょうか?」
「はい、もちろんです。むしろ、ご協力に感謝いたします」
「いえいえ。それでは、あの子は俺が引き取ってもいいですよね?」
「はい、その方が良いでしょう。調べたところ、親である母親も自分が売ったと供述したとか。親の意思で売ったのであれば、戻すわけにはいきませんし」
「そうですか……わかりました。では、失礼いたします」
それだけ聞ければいいので、都市の警備を担当する兵舎を後にする。
外では、アルルとサクヤが待っていた。
「アォン!」
「お父さん!」
「二人とも、待たせたな」
「だ、大丈夫だった……!?」
ひとまず、寄ってくる二人の頭を撫でて安心させる。
「ああ、なにも問題ない。俺に罪はないし、アルルのことも返さなくていい……ただ」
「ただ……?」
「アルルの母親は生きている……会いたいか?」
どんなに酷い目に遭わされようと、母親は母親だ。
一人にさせるのは可哀想だし……俺もそうだったが、いつか愛してくれると期待してしまう。
アルルは不安そうな瞳で、俺を見つめてくる。
「大丈夫だ。どちらにしろ、俺が引き取るという意思に変わりはない。ただ、これを逃せば会うことはないだろう。俺はランクが上がり次第、ここを出ていくからな」
「……お父さんといてもいいの?」
「ああ、もちろん。その場合は、正式に手続きをしよう」
「じゃあ……お父さんの子になりたい! お父さん、わたしを守ってくれたもん!」
「そうか……なら、もう何も言うまい。アルル、今日から俺が親だ……よろしくな」
「うんっ!」
泣き笑いするアルルの顔を、サクヤがぺろっと舐める。
「わっ!?」
「アォン!」
「妹にしてやるって……えへへ、ありがと!」
アルルとサクヤのやり取りを見ていると、心が暖かくなる。
この子達が楽しく過ごせるように、俺もしっかりしなくてはな。
「よし、決まりだな。それじゃ、記念に何か食べにでもいくか。アルルとサクヤは何か食べたい?」
「アォン!!」
「サクヤちゃん、お肉だって! わたしもお肉食べたい!」
「おっ、いいな。それじゃ、美味い肉でも食べにいくか」
俺が手を差し出すと、アルルが笑顔で手を握る。
そのアルルの顔に、もう遠慮や警戒心はない。
俺はこの子を……新しくできた娘を、巣立った子達に早く紹介したいと思いながら歩くのだった。
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