第81話
翌日は雨の中、革細工の道具を買いに来た。
ネジ捻 · 菱目打ち · 金槌・木槌など揃えるものは沢山あったが、必要なので買って行く。
ミリムでも出来るようなものから作ってもらい、俺も教えてもらいながら作るつもりだ。
そしてラビオン達はラムザとミリアを連れてダンジョンに潜って行った。低階層でミリアの経験を積むのが目的である。
レベルと言う概念は無いが、ラムザのように体力などをつけるのには最適だからな。
「これで全部か?」
「はい!これだけあればバッグは作れます!」
「なら宿に帰ろう」
こちらでは傘はないので外套を被っている。
それに雨の日はあまり店が開いていない。
まぁ、戸を叩けば売ってくれるのだがな。
リミ達も手伝ってくれてバッグは一つ出来上がった。
これはミリムが初めて作ったのでミリムに渡す。もちろんマジックバッグにする。
収納を思い浮かべながら空間魔法を付与していく。同時に時魔法と認識魔法も付与、魔法使いにはなっていないが魔力がゴッソリ持って行かれる。
「はぁ、はぁ、はぁ、出来たぞ」
「わぁ!やった!やりましたね!」
「お疲れ様です」
ネイルがタオルを渡してくれるので顔を拭くと鼻血を出していた。
「きゃー、ルシエ大丈夫!?」
「あぁ、魔力の使いすぎだろ」
ベッドに横になって休む。
これはポイントで『魔法使い』をあげないとな。
スキルツリーを見ると『錬金術師』のツリーから伸びて『大魔導士』の空間魔法と時魔法を取っているため、下にあるパッシブを全然取っていない。
魔力は『剣士』などでも使うのでなんとかなったが、下手すれば自殺と変わらなかったな。
いまはポイントが大量にあるので『魔法使い』をとって行く。
休んでる間にアイラから魔法の本を借りて読む。
アイラ達はバッグ作りが面白いらしくミリムに聞きながら自分のバッグを作っている。
俺はそのままベッドの上で『魔法使い』『治癒師』を伸ばしていた。
やはり欲しかった回復魔法を習得しておく。
仲間に何かあった時に何もできないのは嫌だからな。
と、気づくとそのまま寝ていたようでみんなはいなくなっていた。
下に降りて行く。
「あ、起きましたね!」
「疲れてたんだよ?もう、心配させないでよね?」
「大丈夫?」
「あぁ、ゆっくり寝られたよ」
もうみんな揃っていた。
「ラビオンたちはどうだったんだ?」
「ん?まぁ、普通にミリアもモンスター倒してたし、ラムザより強くなるかもな?」
「な!それはないです!!」
ラムザがラビオンに突っかかっていく。
「グレンは何をしてたんだ?」
「俺は…」
「バッグ作ってたのよ?暇そうにしてるからね!」
「僕のも作ってよ?」
「スロウスも作るのよ?暇してるんだから!」
「えー、僕はいいよぉ」
「だめ!明日はバッグ作りね!」
とリミに押し切られている。
「って言うか、まだ乾杯してないんだ!カンパーイ!」
「「「「カンパーイ」」」」
飲みながらまたみんなの話を聞く。
ミリムはマジックバッグを自慢しているし、スロウスは飯を食ったら寝てしまった。
ラビオンはラムザと剣の話に夢中で、グレンはリミ達に捕まってバッグ作りの話をしている。
「ルシエさん」
「ん?ミリアどうした?」
「今度作って欲しいものがあるんですけど」
「おう、どんなものだ?」
「吸水剤みたいなものって作れますか?」
「お?湿気取りみたいなものか?」
「そうですね、言いにくいですけどナプキンの代わりが…」
おう、女の子特有のあれか。
「分かったよ、作ったら渡せばいいか?」
「はい!よろしくお願いします」
そうだよな、日本だったら普通に買えるし、こっちではどうしてるんだ?
ナプキンができればそれでいいか。
あと地球の物で再現できる物はあるかな?
できれば冷蔵庫なんかは欲しいところだが…まぁ試行錯誤してみますか。
梅雨の季節は日本とは違い二週間ほどで明ける。
俺はその間に錬金術でみんなの分のマジックバッグを作成した。もちろん吸水剤も作ってミリアに渡した。
ミリムも手伝ってナプキンは成功したそうだが、こちらの世界の女性は避妊魔法を使うので妊娠をするまでは生理が来ないらしい。
まぁ、あって困る物じゃないからな。
ミリアとミリムも避妊魔法を受けに行ったようだ。
グレンが中々器用にカバンを作るのでビックリした。やはり革が硬いのが女性にはネックになっていたようで、拳闘士のグレンなら手の皮も厚く、カバン作りにはもってこいだったようだ。
「ルシエ、カバンを作ったのだが」
「ん?また作ったのか?」
「今度のはミリムも絶賛してくれた」
「分かったよ、マジックバッグにしておくよ」
…もう趣味になってるな。
スロウスもなんだかんだで自分のバッグを作り上げて、マジックバッグにしてやった。
お菓子をその中に隠し持っているのはみんな知っているので、たかられている。
「僕のおやつがぁ」
「今度買ってやるって!」
「嫌だ!チョコがいいんだよ!ルシエー」
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