第76話
迷宮街ブランドーにはまだ辿り着いていない。
なぜなら、また嵐に遭遇したからだ。
「おいおい、この家大丈夫かよ!」
「そう思うなら手を動かせ!木を打ちつけろ!」
俺たちは嵐の中、村にたどり着いて家を借りたが、コレがまたボロ屋でどうしようもない!
雨に濡れながら木板を打ち付けて補強する。
「くっそ!こんなことなら前の街に後少しいれば良かったな!」
「ガハハ!いまさらだ」
「ラビオン!無駄口たたいてないで手を動かせ!」
「うっせー!新入り!やってんだろ?」
グレンにあたってもしょうがないだろ!
なんとか木板を打ち付けて中に入る。
「あれ?みんなは?」
「荷車」
アイラは部屋に座って火の番をしている。
「おら!お前ら出ろ!アイラと俺らに悪いと思わないのか?!」
ラビオンが荷車に入ってみんなを出す。
が、さすがに11人はキツいだろ?
怖がっているがリミ、ネイルとラムザ、スロウスは荷車の中に入ったままだ。
アビーとウリンはブラハムを拭いてやり、
俺は晩飯の準備をアイラと二人でやっている。
ワルツ、ラビオン、グレンは、
「うめぇ!やっぱ労働の後の酒はいいね!」
「そうだな!ガハハ」
「うめぇ…うめぇぞ!」
ともう飲んでいる。
まぁ、出したのは俺だがな。
なんとか家も飛ばされないだろうと飯を食いまったりしていると、声が聞こえたような気がしたので扉を開ける。
“トサッ”
っと倒れて来る女の子?を抱き止め扉を閉める。
アイラ達に任せて体を拭いてもらい服を着替えさせる。
衰弱しているので、粥をたべさせ話を聞く。
「わ、私を…買ってください」
それは口減しで自分を売りにきた女の子であった。
怒りを抑え込み、粥を食べさせるアイラに女の子は任せる。
怒っているのは俺だけじゃなく全員だったが、ラビオンとグレンがついて来た。
外の嵐も気にならないほど腑が煮え、腕に力が入る。
“ガンッ!!”
『な、なんだ!』
扉が開くと中に入る。
「村長に聞く。お前の村は口減しをしているのか?」
「ん?あぁ、あいつの事か?あの黒髪の娘は忌み子でな!自分からあんたらのとこに行ったんだろ」
と笑っている村長に寒気がする。
「おまッッ!?」
俺はラビオンを止める。
「ならあの子は貰って構わないな?」
「金を置いていけばな!」
「いくらだ?」
「そうだな…金貨1枚だ」
俺は金貨1枚を渡してやる。
「ほ、ほぅ!2枚であいつのギャッ!!」
「今のはお前らが俺の癇に障ったから右手を貰った、で?続きは?」
右手があったところを押さえて転げ回る村長。
「続きだ!早く話せ!」
「ひ、ひぃ!あ、あの子にはふ、双子の妹がいます!」
村長の嫁が喋るので刀を納める。
「どこだ?」
「む、村外れの小屋にぃ、ひ、ひぃ」
村長の家を出ると村外れの小屋はすぐに見つかる。小さな祠のような人が二人入れるかどうかの大きさだ。
開けると死臭がする小屋に両手を打ち付けてある女の子が息をしていた。
「クソッ!!」
すぐにポーションを飲ませて杭を抜く。
グレンが抱いて小屋に戻るとアイラが回復魔法を使う。
なんとか落ち着いたが、何日も食べていないためポーションくらいしか飲ませられない。
傷の治りも遅く、二人とも衰弱していた。
「なんでこんなことができるんだ!」
ウリンがそう叫ぶ。皆が同じことを思っていた。
「人間だからだよ。人間は残酷なんだ」
「スロウス…」
「でも、違う…暖かい人間だっている」
「あったりまえだ!!全員がこんな人間なら俺は人間をやめてやる!!」
ラビオンが叫ぶとスロウスは笑顔で、
「そうだね」
スロウスは双子を見て笑い、
「良かったね、君達は助かったよ?」
全員がスロウスの言葉で少し落ち着くと、リミ達が荷車に双子を運んでいった。
「さて、この村はどうする?」
「どうもしない」
「なんでだ?こんなことあっていいわけないだろ!」
「何をやっても変わらないからだ」
「だろうねぇ」
スロウスが同意して枕に身を沈める。
嵐に打たれたので着替えて暖かいスープを飲む。
「起きたわよ?喋る?」
「あぁ、わかった」
荷車に入ると一人は正座をし、頭を下げている。もう一人は寝たままだ。
「私はなんでもします。だから妹は助けてください」
「俺はお前らを贔屓しない。お前たち二人は俺らの仲間になるんだ」
「…え?」
「今までよく頑張ったな」
二人の頭に手を置く。
「え、、、ふぁ、あぁぁぁぁ」
寝たままの女の子は涙を流し、もう一人は泣き喚いた。
泣けるのはいいことだ。
これからいくらでも笑えるから。
その為に今泣けばいい。
後はリミ達に任せて外に出る。
次の日、嵐は去った。
青空が見えている。
外に出ると誰も家から出てこない。
我関せずと言ったところか。
「薄情な奴らだな」
「気にするな…帰るぞ」
ブラハムに任せ走ってもらう。
もう二度とこの村には立ち寄ることはないだろう。
荷車の中ではリミ達が世話をし、アイラが回復魔法をかけている。
人は残酷なことができる。
俺はそんなことも忘れるくらい暖かい人に恵まれたんだな。
昔の心の冷えた自分が顔を出す。
他人を信じるな。
それは変わらない…だが、俺には仲間がいる。
俺も昔とは違う。
信じる心は力になる。
あの二人にもこの気持ちが伝わればいいのだがな。
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