第75話


 グレンを連れて街に入る。南門はけっこう警備がザルだな。すんなり入れた。


 中に入り宿に戻る。まだラビオン達は帰ってきていないようだ。

「何か当てはあるのか?」

「ない…できるだけ暴れてオーナーが出てきたら殺す」

「はぁ、それは無理だろ?せめて少しくらい考えたらどうだ?」

 あまりにも行き当たりばったりだ。

「俺は頭が悪い」

 それを言ったら俺だって頭悪りぃよ。

「手足を出せ」

 錬金術で枷をとってやる。

「凄いな」

「ただの錬金術だ。とりあえず闘技場に観に行くか」

「…何故?」

「やるからには成功して欲しいだろ?」

 まぁ自爆覚悟で特攻されても俺らの後味悪いしな。

「ありがとう」


 デカいグレンは外套を被り、俺たちは闘技場に入る。

 入場料を払い、オッズの書いた紙をもらう。

 賭け試合なんてしていいのかよ?


 周りを見てみると中央のガラス張りの場所にふんぞり帰ってる男がいる。多分グレンの言ってるオーナーだろう。男たちに囲まれている。

 男は番犬を飼っているようだな。

「スロウス?番犬は操れるか?」

「ん?あー、あれ?少しならできるけど?」

 スロウスは気だるそうに観客席に寝転んでいる。

「グレン、あそこからオーナーを出す。勝負は一瞬だぞ?」

 グレンは拳を合わせて、

「十分だ!ありがとう!」


 作戦は単純でスロウスが番犬をけしかけて外に出てきたところを捕まえる。


 中央の部屋を見ていると番犬に追いかけられ、ガードマンは倒される。そして外に飛び出すオーナーをグレンが捕まえた。


「は、離せ!お前はグレン!?この!離せ!」

 胸ぐらを掴まれたオーナーは震える手で腕を掴んでいる。

「お前が殺した奴らの恨みだ。受け取れ!」

 強く拳を握り殴りつけるグレン。

「グベッ!ゴバッ!ゲベッ!!」

「グレン!その辺にしておけ!!帰るぞ!」

 グレンはキョトンとしているが、言われた通りにオーナーを放り投げるとこちらに向かって来た。

「よし、帰ろう!」

「お、おれ」

「いいから帰るわよ?」

「お、おう」

 

 闘技場から出ると、まだ陽も高いので買い物だ。グレンに服を買い、防具に武器も買っておく。スロウスにもレザーアーマーなどを買って、

「僕着けたくないけど?」

「一応な?慣れると柔らかくなるぞ?」

「そうなの?んじゃ着てみようかな」

 とスロウスにも着せておく。


 宿に戻ると、

「俺はコレからどうすれば?」

「ん?俺らの仲間にならないか?」

「…いいのか?」

 グレンが聞くが俺はこのまま放っておくことができないだけだ。

「まぁ、俺は賛成だな」

「私達もいいわよ?ね?」

「うん」

「ですです!」

 リミ達も賛成してくれたので、

「…ありがとう」

「あぁ、よろしくな、グレン!」

「お、おう!!」


 ラビオン達はその日の夜に帰って来た。

「おぉ!なんか増えてるな!」

「テイマーのスロウスと拳闘士のグレンだ」

「よろしく頼むぜ!よっしゃ!飲むぞー!」

 ラビオンはいつものように元気よく宴を始める。

「ガッハッハ!んでそのオーナーは?」

「あぁ、足腰立てなくしてやった」

「ガッハッハ!グレンもやるなぁ!」

 ワルツと気が合うようで楽しく飲んでいる。

「スロウス君!食べ過ぎだよ!」

「ん?いいの!僕は食べたい時に食べるんだから」

 とラムザとスロウスも仲良くなったようだ。


 解散してみんな部屋に戻る頃、ラビオンに誘われて飲みに出る。

「わぉ!なになに?どうしたの?」

 外に出ると黒服の男達が10人ほど並んでいた。

「お前たちがグレンを匿っていることはわかってる!大人しく出せ!!」

「だってさ!ルシエ?どうする?」

「はぁ、どうするもこうするも分かりきってるだろ?」


「「仲間は売れねぇ!!」」


 黒服達の倒れている横でミード酒を取り出してラビオンに渡す。

「カハッ!うめぇミード酒だな!」

「まぁな!」

「あのスロウスってのも訳ありなんだろ?」

「さぁな?」

「カッー!俺たちの団長はなんでも拾ってくるな!」

「クックッ!」

「あはははは!」


 その後は黒服達をまとめて道の脇に捨て置いて、飲みに行く。


 ラビオン達もダンジョンでラムザの稽古をしたり、まぁ、すこしばかりカジノに行ったりして楽しんだようだ。



 次の日は朝からブラハムに乗り、迷宮街ブランドーに向かう。

「めっちゃ広い!これなら後3人くらい乗れるぞ?」

「そうか?俺は乗ってないから分からんがな」

「アイラ!交代だ!ルシエにも見せてやりてぇ!」

「分かった」

 手綱をアイラに任せ、後ろに乗り込むと、ラビオンがビックリするのも頷けるな。

 前の荷車が八畳ほどだったのが、十五畳のリビングのようになっている。

 外に出るとやはり八畳くらいしかないと思うから不思議だ。

 空間拡張は凄いな。


「な!ビックリだろ?」

「あ、あぁ、コレは凄いな」

 全員が寛いでいるし、スロウスはもう寝ている。


 御者台に戻り、アイラは見たのか聞くともう見たらしい。

 自分が御者台だからあまり気にかけることがなかったからなぁ。

 しかし、これは錬金術でできるのか?出来るんだろうな。

 

 ガイツに預けた革もマジックバッグにしないといけないし、迷宮街に戻ってもやることがいっぱいだな。

 

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