第77話
空は晴天、だが夏前のジメッとした空気が体にまとわりつく。
今はスラールと言う街に宿を取っている。
衰弱した二人に馬車の揺れはキツいからな。
ギルドに顔を出して討伐依頼を受ける。
「おっし!このメンバーは初めてだな!」
ラビオンが言う通り俺にウリン、グレン、アビーだ。ワルツは荷物持ちでリミ達について行った。スロウスはいつも通り寝ている。
今日の討伐依頼は塩漬け依頼で、ワイバーンの群れがいるらしい。
ダンジョンと違って、普通に暮らしているワイバーンなので逃げる時もある。
ターゲットのある岩山まで馬車で来たが、群れでいるのは聞いていたが、
「これって」
「レイド案件だよな?」
「あぁ、多すぎだろ?」
30匹は超えるワイバーンの群れが岩山を占拠している。
流石に逃げたいが、トサカのついたレッドキャップに見つかっている。
「やるしかないみたいだな」
「はぁ。終わったらギルドにクレームだ!」
「無事だったらね?」
よりにもよって遠距離が一人しかいない状況だからな。
だがどうにかするしかないか!
「『抜刀・飛燕連山』」
「『ファイヤーアロー!!』」
「おっしゃ!グレン!落ちたやつに行くぞ!」
「おう!」
ウリンとグレンは落ちたワイバーンを討伐しに行く。
ワイバーンが滑空して攻撃して来るところに合わせて斬り落とす!
どちらかと言うと俺がタンクでアビーを守る。
「大技が出せないから少しずつ削るわよ!」
「分かってる!あのレッドキャップさえ倒せればな!」
この群れのボスであろうレッドキャップが倒せれば後は逃げて行くはず。
「ウォォオォォ!三の壊『破』」
「『気拳連弾』」
二人も射程は短いが中距離の技を放ちワイバーンを落とす。
10数匹倒したところでようやくレッドキャップが動く。普通のワイバーンより一回り大きいのがこちらに向かってくる。
狙いはブラハムだ!!
「させるか!『気円斬』」
「『ファイヤーウォール!』」
レッドキャップの比翼を掠め、火の壁がレッドキャップを包むと地面に落ちる。
「おっしゃ!一の壊『断』」
ラビオンが真っ二つにすると、ワイバーンは遠巻きにこちらを見るようになった!
「ふぅ、生きた心地がしなかったぜ!」
「よく言う、生き生きしてた」
「ん?グレンも言うようになったな!」
と二人で笑っている。
俺はワイバーンの死体を収納に入れて行く。
巣を見ると卵があったが、これは残して行く。
俺たちは全滅させたいわけじゃないからな。
結果、17体のワイバーンを倒して、ギルドに報告に行く。
「すいませんでした!」
不貞腐れて謝る受付嬢。
「それはもう聞いたから、ギルマスに合わせてくれるか?」
「いや、だからこんなに謝ってるじゃないですか!」
はぁ、どこにでもいるんだな。
「どうした?」
「ぎ、ギルマス?なんでもないんです!」
「いやいや、あるだろ?」
俺たちがギルマスに話すと受付の対応はおかしいと後で処罰は決めるそうだ。
「それにしてもワイバーンによく勝てたな?」
「あぁ、ダンジョンにはよく行くからな」
ダンジョンではランクは上がりにくいからな。
「で?どこにワイバーンが?」
「収納持ちだ」
「そうか、ならこっちだ」
奥に行くと解体場がある。
だだっ広い部屋にテーブルが並んでいて壁には解体器具がかかっている。
「んじゃ出すぞ?全部で17体だ」
「分かった、端から出して行ってくれ」
やはり途中で入りきらなくなる。
「ワイバーンだけか?」
「いや、レッドキャップもいたからそれも」
「…はぁ、本当にすまなかったな」
普通の対応だ。余計に受付嬢が残念に感じる。
「よし、今日はここまでで、明日また来てくれないか?あとはランクアップだな」
「分かった!」
「色をつけて買い取るから許してくれ」
「おう!」
ギルドにも恩が売れたのでまぁいいだろう!
宿に帰ろうとすると、
「おい!お前らがモモちゃんの言うこと聞かないって言う冒険者か?」
「モモちゃん?」
「受付嬢のことじゃない?」
「ならそうだが?」
男達はもう剣を抜いているので『鑑定』でポイントを奪う。
「んじゃ適当に!」
「おう!!」
縄で縛って衛兵に突き出す。
抜剣違反と集合罪くらいしかつけられないらしいがギルドにも話は行ったからギルドの登録抹消は逃れられないだろう。
「はぁ、散々な一日だったな!」
「どーせ酒がうまいんだろ?」
「…分かってるじゃねーか」
「まぁな」
こんなことに慣れて来るのは嫌だが、しょうがないな。
宿に帰ると双子の妹が体を起こしていた。
「お、大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
「気にすんな!食いたいものはあるか?」
「食べられればそれだけで」
「まぁそうか、今は元気になることだ」
「はい」
元気そうなので安心した。
姉は妹に付きっきりだったので突っ伏して寝ている。
いい姉妹だな。
二人は黒髪黒目で肌はまだ青白く背丈はかなり小さく幼いが、歳は12歳とラムザより上だ。
12年も虐げられてきたのか、まだちゃんと動けるようにならないと旅はきついだろうからここで足止めだな。
「よし、ゆっくりしておけ、動けるようになるまではこの宿から動かないからな?」
「はい、ありがとうございます」
「気にすんな、リミ、よろしくな?」
「任せてよ!ミリアとミリムには元気になってもらうから!」
姉の方がミリアで妹がミリムらしい。
二人とも同じような見た目だから間違えないようにしないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます