第72話
屋敷に入ると応接室に通される。
「リミ!お前は何しに帰ってきた!!」
「お父さん!やめてください!」
と入ってくるなり怒鳴りつけるのは父親か?それを止めているのが母親のようだ。
リミは父親譲りの赤髪だな。
「私が帰ってきたのはこちらのルシエと結婚するつもりだからよ!」
おおぅ、結婚とはまた…まぁ、するつもりだが。
「な、な、なんだと!人間じゃないか!!」
「そうよ!私が旅してきて見つけた最高の旦那様よ!」
最高という言葉はなんか照れ臭い。
「お前の婚約者はどうなる?アムレスはお前のことを待っていたのだぞ?」
「待つくらいなら追ってくるくらいしたらどうなの?!私は一人で旅に出て色々経験してきたわ!」
「そ、それは」
「この街だけで人生を終わらせる気はないの!隠れて過ごすのは嫌よ!」
リミが何故か強気にでて父親を圧倒している。
「リミエラ!帰ってきたのか!」
突然扉が開くと金髪碧眼の小デブの男が入ってきた。
「アムレス…貴方また太ったんじゃない?」
「な!会って早々言うことじゃないだろ!どこにいたんだ!私は夜も眠れないほど」
身振り手振りで自分がいかに悲しかったかを表現しているが、自分のことだけだな。
「あー、少しいいか?アムレスと言ったか?自分のことしか喋ってないが、リミに聞くことはないのか?」
「な、に、人間がなぜここに?!下賎な人間など手打ちにしてくれる!」
剣を抜くアムレス。
「悪いが剣を抜いたのはお前が先だぞ?」
俺も刀を抜く体制になる。
「ま、待って!ね?ルシエは強いんだからアムレスなんて気にしないで!」
「な、な、な、なんだと!決闘だ!!」
白い手袋が舞うのでそれを掴む。
「はぁ、受けて立つ」
「アムレス!あんた死ぬわよ?」
「け、決闘は蜂蜜取りだ!」
アムレスの苦肉の策なのだろう。
「それはどう言ったやり方だ?」
「森の中で有名なロイヤルハニービーのハチミツを取ってきた方の勝ちだ!」
「な!アムレス君、今年のロイヤルハニービーは凶暴で蜂蜜なんか取れないぞ?」
アムレスは悪い顔をしている。
「ふん!私には先祖代々受け継がれてきたものがある!新参者には負けぬ!」
「はぁ、私が案内するくらいはいいわよね?」
とリミが前に出てくる。
「まぁ、仕方がない。その代わり負けたらリミエラは俺のものだ!」
「賭けにリミを使うのはやめよう。俺が負けたらここから出て行こう」
「ちっ!なら俺が負けても同じく」
蜂蜜取りなんかしたことはないが、勝負は負ける気はしないな。
明日から三日間でどれだけ多く蜂蜜を取れるかで勝負だ。
「ごめんなさい、巻き込んでしまって」
「まぁ、いいさ。負ける気はしないからな」
「うん!私もサポート頑張るから!」
次の日は門の前に集まる。だが、
「アムレス!卑怯よ?!その人数はなによ!」
「ん?うちの従業員だ!そちらもパーティーでいいぞ?」
人海戦術できたのか。
「それじゃあはじめ!!」
リミの父親が開始の合図をすると走り出すアムレス達。
「俺たちも行こうか」
「ごめん、あんなの勝てっこないよ」
「負けないから大丈夫だ!」
ノームを呼び出してもらい森の中に入る。
あちこちで悲鳴が聞こえるが何故だ?
「今年のロイヤルハニービーは何故か怒ってるみたいなの、だから例年よりミード酒を作る量が減ってるみたい」
「そうか、なら貯め込んでる蜂蜜も多いだろうな?」
『ブーーン』と羽音が聞こえ目の前には子犬ほどあるハニービーがいる。
「『抜刀・飛燕』!これがロイヤルハニービー?デカくないか?」
「大きすぎる!なんでこんなことに?」
例年より大きいと言われるハニービーは鋭い顎とデカい針が危険だな。
「とりあえずハニービーの来た方向に行こう」
「え?このハニービーの来た方向に?危ないよ!」
「俺も本気を出す!!」
来た方向に歩いていく。
どんどんハニービーが多くなってくる。
「おら!大丈夫か?」
「『サンダーボルト』」
「多すぎますって!!」
「『抜刀・百花繚乱!!』」
連続斬りでハニービーをまとめて倒して収納に入れる。
ハニービーを倒しながら30分ほど歩いたので少し休憩する。
「さらに多くなってますね」
「あぁ、だがまだ巣が見つかってないからな」
「今年のハニービーは異常だよ?しかもこんなに怒ってるなんて何かが起こってるみたいね」
巣まで行けば何かわかるかもしれないな。
それからも歩いてハニービーの巣を探すが、1日目は森の中ほどでテントを張って休むことにする。
斬ったハニービーは300を超えている。
「夜になるとおとなしくなるな」
「ハニービーは夜は出ないよ?巣に帰って幼虫の世話なんかをしてるみたい」
「へぇ、よく知ってるな」
「へへ、これでもハチミツの為に小さい頃はお手伝いしたからね」
リミはそう言うとテントの中に潜って行った。
気配探知で引っかかるのはアムレス達だろうな。
俺たちの後を追ってきてるようだが、気づかれていないとでも思ってるのか?
「まぁ、いい、明日はもっと後ろに回してやろう」
そうすれば自ずと離れていくだろうな。
翌朝は早くから行動して巣を目指す。
相変わらずハニービーが飛んでくるが後ろに受け流してやると悲鳴が聞こえる。
「あいつらついてきてるのね!」
「まぁ、そのうち諦めるだろ」
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