第73話
蜂の巣を探して二日目、森の深層に入っていくとようやく蜂の巣が見える範囲にきたが、
「あれはなんだ?」
「ハニービーよね?」
「巣が見えない」
「ですです!ハニービーが多すぎますよ!」
黄色と黒で一面埋め尽くされている。
「ハニービーには悪いが巣は取らせてもらう!」
「『サンダーボルト』」
アイラの雷でハニービーが大量に落ちる。
「来て!『シルフ』」
『なんだ!蜂がいっぱいじゃないか!』
「頼むわよシルフ!」
『まかせろ!ウィンドストライク!!』
風が打ちつけるように上空から降りてくる。
俺たちは急いで蜂の巣を回収しようとすると、ハニービーが起き上がり盾のようになる。
「は?『抜刀・気炎連山』」
火を纏いハニービーの盾を崩すと、その先にいたのは幼い子供が枕を抱え寝転んでいた。
「んー、もう辞めてよね?僕はここで寝ていたいんだ」
「いやいや、ここってハニービーの巣の下だぞ?」
ハニービーは襲ってこない。
「だからだよ?あまーい蜂蜜はあるし、ハニービーに守ってもらえるここは天国だ」
とハニービーが持ってくる蜂蜜を一口飲む。
「『テイマー』か…悪いがハチミツを分けてくれないか?」
「えー!やだよ!僕の分がなくなるじゃないか!」
少し怒ったような口調の子供は熊の獣人か?耳が丸くて手足が大きい。
“ドン”
「よっし!これを持って帰るぞ!」
「「「うおー!!!」」」
アムレスがいたのをすっかり忘れていた。
巣を落として男が5人がかりで担いでいる。
「や、やめろ!死にたいのか!」
「ぶぁはっはっはっ!お前、俺が取ったからってそんなこと言うんだな!これは早い者勝ちだ!!」
馬鹿が!そんなことのために言ってるんじゃない!蜂をこんなに多く操れるやつが普通のはずは無いんだ!
「僕の蜂蜜を…取るなアァァァァァ!!!」
その一言でハニービーはアムレス達に群がり、男5人とアムレスは見えなくなってしまった。
「や、辞めてくれ!そいつを殺さないでやってくれないか?」
「むぅ…わかった」
と指を弾くとハニービーが離れる。
“ドサッ”
倒れたアムレス達は刺されて腫れ上がっている。
「アイラとネイルは応急処置を」
「「はい」」
アムレス達は二人に任せると子供に向かう。
「俺はルシエ、こっちはリミだ」
「僕は『スロウス』この森で暮らしてるよ」
「スロウス、出来ればハチミツを少し交換してくれないか?」
「え?交換?…甘いものならいいよ?」
「じゃー!とっておきだね!」
リミが俺に言うので、小袋に入ったチョコを収納から取り出す。
「なになに?!なんか茶色くて美味しくなさそうだけど?」
「甘くて美味しいチョコって言うの!精霊も好きなんだよね!」
「うー、…アム、もぐもぐ、あまーい!!」
口にあったようでよかった。
「ねぇ?他には無いの?」
「ほかか…飴玉でいいか?」
小袋に入った飴玉を渡す。
「アム、コロコロ、これも甘ーい!!ねぇねぇ!これ作ったの?」
「ルシエが作ったのよ!」
「ねぇ、仲間に入れてよ!僕まだたくさん食べたい!!」
枕から身を乗り出してそう言うと俺の背中にしがみつく。
「よし!蜂蜜はあげるね!これからよろしく!」
「はぁ?いやいや、親はどうした?」
「親?いないよ?」
ラムザと一緒か、仕方ない。
こんな森に置いていくのもなんだしな。
「わかった、じゃあ、歩いていくぞ?」
「えー、わかったよー」
渋々歩くことを了承してくれるので、蜂の巣を収納し、少し回復したアムレス達を連れて『ノーム』に道を繋いでもらった。
『チョコちょーだい!!』
「はい!ありがとうね」
「あー!僕もチョコ!!」
とノームと取り合うスロウスは無邪気だな。
蜂蜜色の髪の毛に熊の耳、瞳は紫色で眠そうだ。ラムザと同じ年くらいだろうな。それでもう『テイマー』なんだから恐れ入る。
そして勝負は俺たちの勝ちである。
「娘をよろしく頼む」
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
とリミの父親とも和解して泊めてもらう。
ハチミツを使って飴やケーキを作っておく。
「いい匂い…ルシエは何作ってるの?」
「スロウスは鼻が効くな。食べるか?」
「食べる!!」
とテーブルに出してやると嬉しそうに食べ始める。
好奇心で『鑑定』してみると、
“ガタッ”
「ん?どうしたの?」
「…『怠惰のスロウス』か?」
「んー、そうだよ?何か問題?」
そう言うスロウスは無邪気にケーキを食べている。
「暴れたりしないのか?」
「ん?僕はそう言うのめんどくさいからしないよ?」
「そ、そうなのか」
「他のは暴れたりするけど、人それぞれでしょ?」
俺は椅子に座り直し、スロウスを見る。
「僕は『怠惰』、めんどくさいことはしたくないんだよ?それに暴れてもお腹空くだけだし、また封印されたら嫌だからね」
「そうか、なら俺たちの仲間になるなら暴れるのは無しだな!」
「うん!ルシエは美味しいものいっぱい作ってね?」
「いやいや、甘いものばっかりじゃなくて他のも食うんだぞ?」
「わかったぁ!」
こうして『怠惰のスロウス』が『クラウド』に入ることになった。
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