第71話


 ノームを呼び出し、御者台にリミと俺が座り、ノームがリミの膝の上に座る。

『アースロード!』

 ノームが叫ぶと土が動いて木が馬車を避けるように道を開ける。

「凄いな」

『ふっ!それほどでもある』

「調子に乗らないでちゃんとお願いね?」

『分かってるよー!』

 軽く返事をしているがそれなりにパワーを使うのだろう。腕がプルプルしている。

「無茶するなよ?」

『誰に言ってるんだ!ノーム様だぞ!』

 まぁ、途中で休憩してやればいいか。

 と思っていると道が開けて荘厳な門が現れる。


「へ?」

「やった!久しぶりのエルフェイムだ!!」

 森に囲まれた綺麗な場所に白亜の城が建っている。

 いやいや、物理的におかしいだろ?

「どうなってるんだ?」

「エルフの秘術で姿を隠してるの。だからこの森にあるのだけど、エルフ以外はこの場所に来れない」

「それは分かったが」

「あぁ、道なんてあってないようなものよ?だってこの森自体が街なんだもの。エルフならこの森のどこからでもここに来れるわ」

「そ、そうか」

 まぁ、納得するしかないのか。


「そこ!何者だ!」

「私はリフェル・エリスとアランの娘。リフェル・リミエラ」

 リミの本当の名前はリミエラだったのか。

「リミ?リミが帰ってきたのか!し、しかしその連れは?」

「この人は私の旦那様になるルシエ!とその仲間!報告にきたのよ」

 リミはいつもと違い堂々と喋っている。


「分かった!少し待て!」

 門の前は人はおらず、って隠れ住んでいるのだから当たり前か。


『あ!アレくれよ!!』

「そうね、はい!」

『う、うめぇ!もっとくれー』

 チョコを頬張り美味そうに食べているが手を差し出してくる。

「だーめ、また今度ね!」

『うー、分かった!早く呼べよ!じゃーな!』

 ノームは手を振って消えて行った。


「待たせたな!冒険者証を確認させてくれ」

 俺たちは冒険者証を渡すと、

「『リベル』か、よし、通っていいが問題を起こすなよ?」

「はい!」

「よし!開門だ」


 門が開き俺たちは中に入る。

「おお」

「わぁ」

「凄いですね」

 中はツリーハウス…なんてものはなく、どちらかといえば地球に近いか?建物が並んでいて大通りの先には噴水が見え、その先に城が小さく見える。

 馬車が行き交い、エルフが大勢生活している。


「あっちだよ!みんな」

 リミが御者台に乗り込み道案内をする。

 白を基調とした建物が並び、道も舗装されているので揺れも少ない。

 これが森の中だとは信じられないな。


 少し目線を変えると、こちらを興味深く見ている冒険者のような格好のエルフ達がいるし、交易なんかはしているのだろうか?

「物資はどうやって?」

「そりゃ人間に化けて交易してるよ?エルフ産のミードは高く売れるんだ」

「ミードか…まだ飲んだことがないな」

「えへへ、家に帰ったらあると思うから」

 はにかむリミはやはり実家に帰ってくるのが嬉しいんだろうな。


 ある家の前で止めると、門兵に時計のような物を見せている。

「コンパス?」

「うん!導きのコンパスって言って、エルフは殆どがこれに従って生きてるかな?ルシエと会えたのもこれのおかげ」

 と言って見せるのは懐中時計のようなコンパスだった。今は家の方を指している。


 そうか、にしても不思議なアイテムだな。

「それに従うって、最後は自分で決めるんだろ?」

「そうね、従って違うと感じたらあとは自分の判断かな?」

「道標的なものか」

「そう言うことだね。あ!」

「お嬢様ぁーー!!」

 走ってくるのは金髪碧眼のエルフの女の子だった。


「お嬢様!やっと帰ってこられたのですね!」

 綺麗なロングヘアのメイド服を着ている女の子は汗を拭きながらリミを捕まえている。

「ナナ?私はどこにも逃げないわよ?」

「そう言って何年いなかったと思ってるんですか!」

 どうやらリミはいいとこのお嬢様のようだな。


「今日は私の旦那様を連れてきたの」

「は?へ?な、な、なんて?旦那様?婚約はどうするんですか!!」

「婚約してたのか?」

「うーん、私がしたわけじゃなくて親が勝手にしたことだしね」

 それでも一言言ってほしかったが。


「リミは婚約者と仲良くしてればいい」

「な!アイラ?私の旦那様はルシエに決まってるの!!」

「私も初耳です!リミは婚約者がいるのにルシエと関係を持ったんですか!」

「うー、それは悪いけど私は婚約は反対なの!ルシエがいいの!」

「名前も隠してた」

「か、隠してない!みんなリミって呼ぶから!」

 3人は喧嘩をしている。


「ルシエだ。君がメイドさん?」

「は、はい!私はナナと言います。もちろん独身です」

「こら!そこ!勝手にルシエに近づくな!」

 リミが間に入って止める。

「私なら問題ないですから、婚約者もいません」

「いや、ナナが売り込んでどうするのよ!それより早く中に入れてよね?」

「あ!そうでした。旦那様達が待っておいでです」

 ようやく先に進めるな。


 綺麗に手入れされた庭園を横切り門の前に立つ。流石に緊張するが、そうも言ってられないだろう。

「ようこそ我が家へ」

「「「お邪魔します」」」


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