第70話


 ダラーダンジョン50階層。

「じゃー、『剣壊者デストロイヤー』の仕事っぷりを見せてもらいましょうか!」

「んな!初見でボスを一人?ふざけんな!」

 アビーとワルツはスキップ覚醒をしたことを信じてないようだな。


 スキルツリーでみると『大剣鬼バスタード』を超えて『剣壊者デストロイヤー』になっているので本当にビックリだ。

 しかもウリンに見せてもらった宝石は『憤怒の命石』だったので、二人が倒したのは『憤怒のラース』だったので二度ビックリした。


 予期せぬ『憤怒のラース』の登場で、ラビオン達がピンチになったが、ラビオンのスキップ覚醒で事なきを得た。だが一歩間違えたら大事な仲間を失うとこだったので、ラビオンはやはり頼りになる。


 それはさておき50階層のボスだな。

「いくぞ!」

 扉を開けると首なしの騎士が頭を抱えて、馬に乗っている。『デュラハン』だな。

「んじゃ行ってくるか!」

 ラビオンが魔剣を抜いて瞬歩で近づくと、

「一の壊『断』」

 デュラハンは成すすべなく斬られ、ドロップに変化する。デュラハンソード、ミスリル鉱石、魔石だ。


「凄いね!一撃じゃん!」

「ふ、ふん!本当にランクアップしたのね」

「だから言っただろ?」

「ガハハ、先越されたな」

 まぁ、みんな認めたようだな。まぁ一回で2ランクアップだからな。


「ネイル、宝箱開けるぞ」

「はい!頑張ります!」

 ウリンはネイルに教えている。

 それにしても、こうも行くとこ行くとこ『7匹の獣』がいるなんてな。

 今回で4匹目だろ?

 残りが『嫉妬』『傲慢』『怠惰』…まさか俺たちの前に出てこないよな?


「開きましたよー」

 中身を見ると古代の魔導書にピアスが二つ。

 『念話のピアス』だから俺とラビオンがつけることになった。一応、対になっているので少し気まずいが、


『あー、テステス。聞こえるかー?』

『あぁ、聞こえてるぞ』


 リーダー二人でつけてれば逸れた時なんかは便利だな。まぁ今回みたいなことが起きないとも言えないしな。


 ようやく転移陣で外に出られた。

 まだ昼前のようでダンジョンに入っていく冒険者たち、それについていくポーターの子供。

 どれくらいの子供が大人になり冒険者になるのだろうな。


 今回のダンジョンでは長い事、ダンジョン内にいたので食糧もほぼなくなった。

 宿に戻りまずはゆっくりと寝ることにした。


 目が覚めると夕陽が差し込んでいたので起きて下の食堂に行く。

「おっ!団長が一番遅かったな!!」

「普通に呼べ。あ、俺もエールで」

「あいよ!!」

 女将に注文してから席に着く。

「ラムザは大丈夫か?」

「うん!ルシエは大丈夫?」

「ハハ、大丈夫だ!よし!飲むか!」


 宴会が始まり、みんな思い思いに話をする。

 アビーやリミ達はファッションの話し、ワルツとネイル、ウリンは義手の話し?ラビオンとラムザは稽古の話をしている。

「ふぅ、帰ってこれて良かったな」

「うん、みんな無事」

 とアイラと喋りながら全員を見ている。

 また一緒に騒げて嬉しく思う。


 あとは迷宮街に帰るだけだ。

「あ、あのー、提案なんだけどー?」

「どうした?」

 リミがあらたまって提案?

「私の故郷が近くにあるんだけど」

「へぇ、エルフの故郷か…」

「それで行けないかなぁ?って」

「俺たちはいいが、『ストロミー』のメンバーはどうするかだな」

 リミがエルフなのはもちろん内緒だ。

「まぁ、ラムザもいるから、ここに残ってもらうか」

「本当?大丈夫?」

「あぁ、リミのお母さんにも挨拶しないとな」

「やった!ありがとうルシエ」


 ラビオンに話をしてダラーで待ってもらうことにする。

「事情は分からんがまぁいいか!ラムザを鍛えるのにちょうどいい」

「あぁ、悪いな」

「用事なんだろ?別に気にすんな。それより気をつけろよ?」

 心配しながらも快く引き受けてくれる。


 翌朝はギルドに行ってダンジョンの物を売り、買い物に出かける。

 と言ってもここは歓楽都市、ここぞとばかりに高い物しか置いていない。

「高いよー!流石にこんなの買えない」

「まぁ、物価が高いから私物は諦めて違うところで買うんだな」

「うー、くそー」

 まぁ、買えないと言っているので金銭感覚は麻痺していないな。


 冒険者用のものは普通なのでそこは棲み分けてるんだろうな。


「おっ!にいちゃんいいもの持ってるじゃないか!売ってくれ!」

「は?俺の相棒だ!他を当たれ!」

「言い値でかうぞ?」

「ふざけるな!優しく言ってる間に失せろ!」

「ひ、ひぃ!」

 ラビオンの魔剣は装飾が派手だからな。

 目立つことはしょうがないからな。

「まぁ、そんなの背負ってたら無理ないって」

「ふん!俺の相棒は売らん!」


 そんなこんなで買い物を済ませると、宿に帰る。

 ラビオンには一応行き先だけは告げるとビックリした顔をするが黙って頷き、土産を頼まれた。


 新しい荷馬車を付けたブラハムに乗って、ダラーから南に進み大きな森が見えてくる。

「ここか?」

「うん!ここからは少しノームにお願いするからちょっと待ってね!」


「『来てちょうだい!ノーム』」

 ズングリムックリしたモグラのような姿のノームが出てくる。

『うぁ?どうしたんだ?』

「久しぶりね?エルフ街エルフェイムに案内してちょうだい!」

『馬車も?難しいなぁ』

「これでも?」

 リミはチョコを取り出してノームに渡す。


『こんなもので…あむ、ムグムグ…!?』

「どう?案内してくれたらまたあげるわ?」

『…しょうがないけど、ちゃんとくれよ?』

「わかってるわよ。お願いね!」

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