第65話


 俺たちはダンジョンの30階層に来ていた。

 やはりいつ見てもダンジョンに空があるのに慣れないな。

 ラムザの訓練はラビオンが面倒を見ると言ったので夜番の時に教えるそうだ。


「やっとダンジョンにこれた」

「ラビオンが10日もラムザに使うからだぞ?」

「悪かったよ、だがそのおかげでポーターとしては役に立つぞ?」

「いらねーだろ?ルシエがいるんだし」

 まぁ、経験はさせておけばいいからラムザに荷物を持てる分は持ってもらう。


「大丈夫?」

「うん!平気だよ!」

「偉い偉い!」

 リミ達はラムザが可愛くて仕方ないようだ。


 まぁ、危なくないようにリミ達と一緒に行動してもらう。

 列はウリン・ネイルで俺、ワルツの後、リミ・アイラ・アビー・ラムザ、最後がラビオンだ。

 まぁ、30階層の敵が抜けれるとは思わないがな!


 30階層までは似たようなモンスターだが、ここからはワイバーンなども出てくる。

 まぁ、8人もいれば余裕だがな。

「お!ワイバーン、肉も落とすな!こりゃいい!」

「食うのか?」

「え?食えるだろ?」

 『鑑定』をすると食用らしい。

 まぁ、公爵家で出てたような気もする。

「食えるみたいだな」

「よしっ!ラムザ!今日は肉だぞ!」

「やった!」

 喜んでいるし焼いて食わせてやろう。


 32階層でテントを広げる。

 今日はせっかくなのでワイバーンの肉は唐揚げにする。焼くだけでももちろん旨そうだが、久しぶりに俺が食いたくなった。


 醤油に似た調味料を見つけたのでやはり最初は唐揚げだ。

 下味をつけたワイバーンのもも肉に片栗粉を入れて二度揚げする。

 ニンニクと生姜の効いたカリカリ唐揚げの完成だ。

「…ゴクリ」

「も、もう我慢できないよー」

「じゃあ食うか!」

 みんなそれぞれいただきますと言って自分の皿に取っていく。

「う!うめぇ!!」

「…モグモグ」

「おい、あんまりこればっかり食うなよ?他にも残せよ!」

「いや!これを食べるの!」

 まぁ、好評で良かったのだが、全員フォークで刺しては自分の皿に取っているのですぐに無くなる。

「一個しかくってねぇぞ」

「いや、9人もいたら無くなるって!」


 まぁこの時のために俺用に作ったやつを出し、ラムザと分けて食べる。

 衣はカリッと中はかなりジューシーで肉汁が溢れ出てくる。ニンニクは入れ過ぎたと思ったがこれもまたいいな!


「あぁーー!!!ちょっと!また作ってよ!」

「ズルい」

「今日は笑えんぞ?」

 リミ達は分かるがワルツまでかよ。

「わかった、今から作るから待てよ?」

「「「「はい」」」」

「ったく、返事はいいな!」

 その後、また大量に作る羽目になって疲れた。

 唐揚げはいっとき封印だな。


「いやぁ、あんな食い物があるとはな!」

「うん!美味しかった」

「そりゃよかった。だが、食い過ぎて動けないとは何事だ?」

「いや、流石に今日の訓練は無理だ」

「うん、動けない」

 ラビオンもラムザも腹一杯食ったみたいだ。

「じゃあ、夜番の意味がないだろ?」

「すまんな、ワルツも悪いな」

「ガハハ、俺はまだ食えるぞ?」

 かなりの量を食ったワルツはまだ食えるらしいから俺と二人でモンスターの襲撃に備える。


 次の日は皆がニンニク臭いので『クリーン』をかけてやる。

 流石にちょっと入れ過ぎたと反省した。

「今日も唐揚げ?」

「いや、それじゃ毎日になるだろ!今日は無しだ」

「えー!唐揚げ食べたい!」

「ですです!って、リミは昨日食べ過ぎですからね?」

「だって美味しかったんだもん」

「たまに食べるからうまいんだ」

 それに醤油に似た調味料はそれなりに貴重なんだぞ?


 気を取り直して33階層への階段を探しながらワイバーン、ファイヤーファングウルフ、などを倒して行く。

「うわ、わ!」

 怖がるラムザをラビオンがすぐ抱き寄せると、

「大丈夫だ、ラムザはちゃんと戦闘を見ておけ」

「う、うん!」

 ラビオンは殿をしながらラムザの教育もしっかりとやっている。

 ラムザは見てるだけでも経験になって行くだろうな。


 34階層でまた野営をする。

 唐揚げコールはなくなったが、今度はみんなが何を作るのか気になるようで俺のところにやってくる。

 そんなしょっちゅう新しいものを作る気はないぞ?


「で、何階層まで潜るつもりだ?」

「できれば50階層まで、一応区切りはつけたいからな」

「そうか、まぁ妥当なとこだな」

 俺が勉強した教科書にはダンジョンは50階層までと記載されていた。なのでホームの迷宮街より先に行くことになるが、そこで区切りをつけて歓楽都市ダラーのダンジョンを終わりにするつもりだ。


「魔剣はどうする?」

「あれは眉唾だろ?流石に探して見つかるものでもないだろ」

「夢はあるが、そうだろうな」

 墓守の魔剣なんて、もしあったとしても使えないだろ。

 

 魔剣伝説にあった森がダンジョンの中にあるとも思えないしな。


 34階層を抜けると迷宮街のダンジョンと同じく砂漠地帯だった。

「ラビオン達は来たことあるのか?」

「若い頃に一回ね。その時は20階層まで攻略したわよ?」

「そうか」

 ダンジョンは繋がっているのか?

 だが、転移陣は普通にダラーに戻ったから繋がってることはないか。


 俺たちは次の階層への階段を見つけ、降りて行く。

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