第58話


「ひー、ちめたい」

「ずぶ濡れだ…ふぁ、、ブェックションッッ!」

「ギャー!!汚いよー」

「ラビオン…」

「す、すまねぇ」

 迷宮街への帰り道、前が見えなくなるほどの大雨が降り出し、なんとか街までやって来た。

 すぐに宿に入ったが横殴りの雨で御者台にいた俺とアイナはもちろん、荷台の後ろに座ってたラビオンとリミもずぶ濡れだ。


 春の嵐とはまさにこの事だな。

 

「あらあら、すぐ火を入れるからね」

「ありがとうございます、すぐに着替えてきます」

 宿の女将が暖炉に火を入れるのでサッサと着替えてくる。

「ズズッ…あ、あったけぇ」

「…ふぅ、雨ひどかったね」

 と暖炉の前を陣取って俺ら4人があったまってる間にアビーとウリンがブラハムを拭きにいった。

 大粒の雨が屋根にあたる音が響く。

「うおぉー、厩に行くまでで濡れたぞ」

「痛いくらいの雨ね」

「おー、こっち来て乾かせば?」

「いや、着替えてくる」

 と言って2人とも部屋に行った。


 流石にこの雨で動けるわけもなく、この街に滞在することになる。


 晩飯の後は久しぶりにゆっくりスキルツリーの確認をする。


 『創世剣ソードマスター』はまだ先があるが、これを伸ばすには他の『職業ジョブ』を伸ばす必要がある。

 あとは『忍者』『探索者』なんかの『斥候系』。

 『錬金術師』などの『特殊生産系』。

 『商人』などの『交渉系』。


 やはり『錬金術師』などを伸ばすのがいいか。

 ポイントはまだ多く残っているので『錬金術師』を伸ばすことにする。


 “コンコンコン”

 リミ達かと思い扉を開けると、

「よっ!飲みに行かないか?」

 とラビオンがいた。

「こんな嵐の中か?」

「開いてるバーを教えてもらったよ」

「…分かったよ」

 しょうがない奴だな。


 俺たちは大通りから少し入ったところにあるバーに入る。

「おー、つめてぇ!!」

 中に入ると店長がタオルを出してくれた。


 酒を注文すると、

「酔っちまう前に話をするか」

「…?なんの話だ?」

ラビオンがあらたまって話をする?雨でも降…あぁ、外は嵐だな。


「俺たち『ストロミー』を『リベル』に入れてくれないか?」

「…どう言うことだ?」

「『SOD』を見て思ったんだ。ルシエが団長のクランを作らないか?」

「それは、他のメンバーは?」

「全員賛成だ」

 唐突な話だ。


「今までの関係じゃダメなのか?」

「あはは、あまり変わらないだろ?まぁ、クランの中の『ストロミー』ってのでいいからさ」

 クランか…まぁ、パーティー同士の繋がりだよな。

「ほう、それなら別にいいかもしれないが」

「だろ?まぁ俺らも歳だからいつまでやれるかわからないが、ルシエ達の仲間に入れてくれないか?」

 もう長い付き合いだ、仲間だと思ってたのだが、形として残しておきたいのかもな。


「…まぁ、今すぐにじゃなくていいだろ」

「考えといてくれるか?」

「あぁ、前向きにな」

 まぁ、リミ達も賛成だろうしな。

「よし!名前も考えといてくれ!」

「…それは面倒だな」

「あはは!短いので頼むぜ?『SOD』なんて長くて覚えらんねーぜ」

 クラン名か…また難しいなぁ。


 その後はクラン名を話したり、これからのことを話しながらラビオンが酔ったので連れて帰る。


「俺はルシエの仲間だぞぅ…」

「寝言かよ…にしても重い」


 背負ってあるく帰り道、雨は上がり雲間から月が見えている。


「『クラウド』…まぁ、作るとしたら…な」


 『ストロミー嵐の』に『リベル自由』で『クラウド』か、まぁこんなとこだろ。


 昼まで眠っていたらリミ達に起こされ、ランチを食いに行く。

 リミ達の意見も聞きたかったのでちょうどいい。


「いいんじゃない?ってか、いつも一緒だしね」

「賛成」

「私も賛成です。名前はどうするんです?」

「あ!今度こそ『ルシエリミ』で!」

「『ルシエラ』」

「いやいや、変わらないですね?!ビックリです」

 何故俺の名前を?本当にビックリするぞ。


「いや、もう候補はある」

「もー、勿体ぶらずにいってみ?」

「聞きたい」

「ですです!」

「『クラウド』はどうかな?」

 自分で言うとなんか恥ずかしいな。

「よし決まり!」

「うん!」

「いいですね!『SOD」みたく略さなくてもいいですし」

 良かった、後はラビオン達だけだな。


 ランチ後は久しぶりに3人の買い物に付き合って、デートを楽しむ。

 

「あー楽しかった!」

「満足」

「あれ?みんなどうしたんですか?」

 『ストロミー』のみんなが集まって黙々とテーブルにしがみついている。


「何してんだ?」

「おう!いまクランのマークを考えてたんだ!」

 そこには雲をあしらったマークが何個も描いてあった。

「おまっ!起きてたのか!」

「あはは!目が覚めたら聞こえたんだよ!」

「…はぁ」

「いい名前ね!気に入ったわよ!」

「ガハハ!俺もだ!」

「『クラウド』結成だな。飲むぞー!」

 アビー、ワルツ、ウリンも気に入ったようで何よりだが、俺は猛烈に恥ずかしいんだが。


「クソッ!飲むぞ!」

「「「「「おぉー!!」」」」」


 『リベル』『ストロミー』で結成されたクラン『クラウド』。

 さてこれからだな。


 公認になった方がいいのか?


 まぁ、ギルドに報告くらいでいいだろう。


 あとはランクを上げないとな、CとBじゃカッコつかないからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る