第34話
30階層、ボス部屋。
「よし!行くぞ!」
扉を開けるとトカゲと言うか小さなドラゴンといった様な風体のバジリスクが岩の上からこちらを向く。
「サラマンダー!」
『おっしゃ!フレアーボール』
リミの精霊、サラマンダーのフレアーボールがバジリスクを飲み込む。
『グギャアアァァァ』
「アイシクルニードル!」
“ドスドスドスッ”
アイラの魔法で手脚を貫かれ身動きの取れなくなったバジリスクにジュエルが魔法を放つ。
「ライトニング!」
『グギャアアァァァァァァ』
「抜刀・飛燕」
俺は抜刀して剣撃を飛ばし首を斬り飛ばすとバジリスクは消滅してドロップに変わる。
「はぁ、倒せて良かった!」
「お疲れ様」
どうにか攻撃される前に倒せて良かった。
バジリスクの攻撃は即死の可能性もあったから攻撃させない事が大事である。
ドロップは皮と魔眼と魔石。
「あ、宝箱ですね!…大丈夫です。解除しますね」
「あぁ、頼む」
ネイルが宝箱の解除をしている間に周りを探索してみる。
バジリスクが住みやすい様に岩場になっている為、冒険者のものと思われる剣の残骸やらが散乱している。
「まぁ、これといって収穫はない様だな」
「そうね、話によれば冒険者が死んだらダンジョンが吸収するらしいし、残っているのはガラクタばかりよね」
それにしてもダンジョンの中はなんでもありなのか?ここまでは石の通路や部屋で作られたような感じだったが、ここは大きな空洞になっていて切り立った岩場になっている。
「凄いな…」
周りを見ながら言うと、
「ここから先は変わるらしい」
アイラが横に来てそう言う。
「そうよ、ここから先は空や草木も生えているわ」
「本当か?凄いな、ダンジョンは」
ジュエルの言葉通りならダンジョンは別世界だな。
「解除できました」
「すぐ行く」
ネイルの所へみんな集まる。
「開けてくれ」
「はい!開けますね」
宝箱を開けると『星晶石』と指輪が入っていた。
「サラ、薬にするのは出来るのか?」
「はい、薬師がいますので」
「なら薬よりもこっちの方がいいだろう。『星昌石』はサラが持って帰ってくれ」
それくらいは男爵にやらせないとな。
「は、はい!ありがとうございます」
サラは頭を下げて『星晶石』を鞄に入れる。
指輪は魔力を上げる魔力石の指輪『魔力増加+3』だったのでリミ、アイラのどちらでもいいな。
「魔力を上げる指輪だ。どっちが着ける?」
「「私!」」
どちらも指輪が欲しいようだな。
「じゃあ、じゃんけんだな」
「よーし!負けないぞー!」
「負けない」
「「じゃーんけーん」」
「勝った」
勝ったのはアイラだ。
嬉しそうに指輪をつけている。リミはまぁ、悔しそうだが次があるしな。
「それじゃあ帰ろうか」
「はい、ありがとう、ル、ルシエ君」
サラ達と転移陣で外に出る。
「よし、それじゃ後は大丈夫だな?」
「うん、ルシエ君達はギルドに向かうの?」
「あぁ、いまから向かうが?」
サラは逡巡しながら、
「わ、私の家の兵士だってことは、あの」
「あぁ、出来る限り言わないつもりだが、聞かれたら答えるぞ?まぁ、ギルマスで止まるだろうから安心しろ」
「う、うん」
男爵家でもそこら辺は気にするんだな。
「そ、それじゃ、ありがとうございました」
「いや、気にするな」
「うん、ルシエ君も頑張ってね」
と言って別れる。
まぁ、どこの兵士がなんて些細なことで、化け物に操られている奴がいる事が問題だからな。
ダンジョンを出て大通りを歩いて行く。
「おっ!『リベル』の皆さんじゃないですか!」
「ん?誰だ?」
知らない男が声をかけてくる。
「あっはっは!『情報屋のサロメ』と言います」
サロメはモヒカン頭でド派手なファッションをしている。
こんな見た目で情報屋?
「で?お前が俺たちに何の用だ?」
「さっき一緒に出て来たのはガラム男爵家の長女ですね?なんで兵士が1人減ってるんです?」
「…はぁ、お前には関係ないだろ?」
「いやぁ、ここは情報交換しましょうよ!『ラスト』の情報と交換なんてどうです?」
『ラスト』?何のことだ?
「何の話だ?」
「あれ?知りませんか?蠍の化け物『情欲のラスト』」
「…ガラム男爵の話は無しだ。情報は買う」
サロメはニヤリとすると手を出す。
「まぁいいでしょう。今回は初回なんで金貨5枚でいいですよ」
俺は金貨5枚を手渡すと、紙を渡される。
「そこに行って下さい。情報は『金』ですからね」
「分かった」
そう言うとサロメは人混みに溶ける様に姿を消してしまった。
「うぅー、胡散臭いのに凄い!」
「見えなかった」
「私もあれくらいできる様になりたいです!」
サロメは情報屋というだけあるな。
紙に書いてあるのは番地と店の名前『アンツ』
まぁ、行ってみるか。
裏通りを歩く。
道には人が寝ていたり、物乞いをしている子供なんかもいる。
その中にアリの巣が描かれた看板に『アンツ』と書いてある店があった。
“カランコロン”
懐かしい様なベルの音が聞こえ、扉が勝手に開く。
「やぁ、遅かったですね!こっちこっち!」
顔を出したのはサロメだった。
喫茶店の様だが、一番奥の席が情報屋の席の様で資料が所狭しと重ねて置いてある。
「あっはっは!すんませんね!片付けって苦手なんですよ」
情報屋なのに片付けが苦手?…そう見せてるだけか。なにやら資料は動かす気配がないしな。
対面に俺だけが座り、リミ達には他の席で待機してもらう。
「いやぁ、狭いとこなんで助かります」
「そうか、それよりも『ラスト』とは何なんだ?」
やはり目の前の資料がそれらしく、指差してくるのでそれを見る。
「これは?」
「いやぁ、古い書物なんで読めるところを抜粋して来ました。あとはこれですね」
とサロメが出してくるのは『傀儡の宝石』だった。
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