第33話



「はぁはぁ…」

 ルックは自分の体に傷がつくのもお構いなしに攻撃してくるので反撃しずらい。

「あはぁ!お前こんなに強かったのか!もっと来い!こんな気持ちのいいのは初めてだ!!」

 なんとか攻撃を凌いで弾いて距離を置く。

「…なんなんだ?お前は?」

「あは、俺様はルック、男爵家に仕える兵士だよ!」

「『パリィ』クソッ!お前はそれだけじゃないだろ!」

 攻撃を弾き返すと後ろに下がる。

「『ファイアボール』」

「来て『サラマンダー』」

『よし来た!いっくぞーー!』

 とリミとアイラが助けに入ってくれる。

「おいおい、俺とお前で気持ちいいことしようじゃねぇかよ!」

「うっさい!気持ち悪いんですけど!」

『ファイアーボール』

「まぁ何人でもいいけどなぁ!『回転斬り』『スラッシュ』」

 と簡単に魔法を打ち消す。

 やばいな…鑑定でルックを見る。


「そう言うことか!んじゃ遠慮なくいくぞ!」

「あはぁ…なんだ?ようやグハッ」

 『気配遮断』で背後にいたネイルが斬ると、

「がら空きだよ『抜刀飛燕』『兜割り』」

「グギャアアァァァ!!」

 前がガラ空きになったので飛燕からの兜割コンボでルック…いや、ルックの皮を被った化物を斬る。


「やったの?!」

「まだだ!畳み掛けるぞ!」

「わ、私達もやります!」

 ネイルはもう脱していたので遠距離で攻撃する。


「ガフッ!いいぞ!気持ちいいぃぃぃいぃ!」

「くそ!お前はもう倒れろ!」

 フラフラのルックに最後の一太刀を浴びせると倒れるルック。

「…あ、りが」

 砂に変わるルックにみんな驚いている。


「な、なぜ?」

「コイツはその50階層の化け物に眷属にされてた様だ」

「化け物?!眷属?どう言うことだ!」


 俺に聞かれてもわからないので俺は首を振る。

「だが、コイツはどこかで蠍の化け物に遭ってるはずだ、眷属にされたのもその時だろう」

「蠍の化け物…」

「そいつが50階層から下の階層にいるから侵入禁止になっている」


 俺はルックの灰になった体を探ると真っ赤な宝石が出て来た。


 鑑定をかけると『傀儡の宝石』らしい。


「サラ、一緒に30階層にいって帰るぞ」

「は、はい」

 サラのメンバーは魔法使いのジュエルと槍師のライドだ。

 七人で先に進む。


 晩飯時になって、ようやくルックの事が聞ける。

「あのルックって男は50階層に行ってたのか?」

「たぶん、これが初めてのダンジョンではないですから」

 サラがそう言うなら50階層に行っててもおかしくないか。


「前は兵士長が訓練でルック達を連れてダンジョンにいってたよ。たしかダンジョンで兵士長が亡くなった時、一緒にいたうちの1人がルックだったよ」

 ライドがそう言う。

「ならその時には眷属化されてたな」

 たぶんラビオン達の言ってた蠍の化け物にこの『傀儡の宝石』を埋め込まれたのだろうな。


「わ、私は、あのまま行ってたらどうなっていたことか…」

「たぶん化け物の餌にされてただろうな」

「ルックが連れて行く役目か…」

 ジュエルは天を仰ぐ。

 仲間だと思ってたやつが自分らを化け物に食わせるために連れて行く役目だとはな。


 ルックが眷属化されてたのは十中八九、ラビオン達の言っていた喋る蠍の化け物だろう。

 もしかしたらまだ眷属化されている人がいるかもしれないな。

 早く帰ってギルドに報告しなければな。


 28階層、

 グレートモスだ。デカい蛾だな。痺れる粉をばら撒いてくるので早めに倒す。

「『抜刀・飛燕』」

 俺はさっさとグレートモスを斬り裂く。

「『炎の刃』えぇい!」

 サラも頑張っているな。

 他のみんなもさっさと倒して行く。

 一番心配してたサラも難なく倒して行っている。


「サラは魔法剣士か?」

「そ、そうです。これでも50階層に通用すると思ってました」

「普通なら通用しそうだが、今はな」

「そんなこと…でもその蠍の化け物な規格外なんでしょうね」

 強い上に今度は眷属化…さすがに俺たちには荷が重いな。


 29階層、

 コカトリス。尻尾が蛇になっている鳥の化け物だ。石化をしてくる嫌な相手だ。

「嘴と尻尾の蛇に気をつけろ!」

「分かってるって!そりゃ」

 リミの矢が蛇を射抜くと、

「アイシクル」

 アイラが氷の魔法でコカトリスにダメージを与える。

『グァァアァア!』

「ここっ!っと」

 ネイルがトドメを刺してコカトリスはドロップに変わる。


 30階層、ボス部屋に入る前に休憩だ。

「サラ、誰が蟹星病なんだ?」

「…はい、私の母が」

「そうか」

「母と言っても実の母ではないんですが…」

「…そうか」

 サラは正妻の子だったはず…母じゃないって事は第二夫人か。男爵も酷な事を命令するな。

「まぁ、薬は俺が持ってるからダンジョンから出たら渡すよ」

「あ、ありがとうございます」

 第二夫人と言ってもサラからしたら赤の他人、他人のために命を張ってこのダンジョンに潜らせるなんてな。



「30階層はたしかバジリスクよね?」

「ラビオン達から聞いた話だとな」

 たしかバジリスクはヒキガエルの下で孵化した鶏の卵から生まれ、コカトリスは蛇が孵化させた鶏の卵から生まれる。

 地球にいた頃何かで見た覚えがあるが、ラビオン達の話だとトカゲの様な見た目で、遠距離で戦えば勝てると言われたな。

「アイラ、魔法を頼むな!リミはいまから精霊召喚しておいてくれ」

「はい!」

「分かった『来て!サラマンダー!』」

 よし、それじゃバジリスク退治と行きますか!

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