第35話


『傀儡の宝石』を出して来たサロメは、

「これはある冒険者から出て来たもの。そいつは死ぬと砂になってしまったそうです」

 サロメの言ってることは本当だ。

 ルックと一緒だからな。

「そうか、読ませてもらう」


『情欲のラスト、その獣、蠍人の様な姿をしており針の先端から毒を出し人を操る』

『7匹の獣が世に放たれる時、この世は終わるであろう』


「…これだけか?他には?」

「むぅ、知ってましたか…では、これを」

 新しく資料を出してくる。


『ダンジョンに囚われし7匹の獣、これを封印せし者は、後に賢者と呼ばれた』


「囚われる『7匹の獣』か」

 やはり七つの大罪が関係している様だな。

 賢者は有名なのは『マギ』だが、

「『マギ』が関係しているのか?」

「おや、博識ですね。っても、公爵家の」

「答えろ」

「…はいはい、『マギ』で合ってると思います。この古文書は誰が書いたのか分かっていませんが、時の賢者は『マギ』以外いませんからね」

 とニヤリとするサロメ。


「では、封印が解けたということか…『マギ』は故人だ。確認の取りようがないか」

「そうですね。それと今のところグラトニーは討伐、そしてラストの出現報告以外はないですね」

「そうか、なら情報はここまでか」

「はい、一応その他の獣も調査中です。まぁ、情報は今のラストと一緒くらいしかないと思いますがね」

「だろうな」

 詳細が分かってたら討伐も楽なんだろうがな。


「分かった」

「またのご利用お待ちしています」

 と礼をするサロメを後にして、俺たちは『アンツ』を出る。


「何か新情報はあった?」

「いや、名前くらいだな」

「なーんだ!もっと色々知ってるのかと思った」

「残念」

「そんな時もありますよ」

 まぁ、ギルマスの話は合っていたのと、賢者が封印したのは収穫といっていいのではないだろうか?封印の方法が分かっていれば良かったのだがな。

「さて、ギルドに行こうか」

「はーい!」

 来た道を戻って大通りに入る。


 ギルドに入ると受付のサーシャの元へ行き、ギルマスへの報告を口にすると二階の応接室に案内される。

「では、少しお待ちください」

「ありがとう、サーシャ」

 ニコリと笑い部屋を出て行くサーシャを見送り、これまでの情報を頭の中で整理しているとドアをノックする音が聞こえ、ギルマスが入ってくる。


「『リベル』の諸君はまた何か見つけたのか?」

 対面に座り、俺たちを見ながら喋るギルマスのポート。

「あぁ、『情欲のラスト』、蠍の化け物についてだ」

「…何故その名を?」

「情報屋から少しな」

「はぁ、サロメか。…あいつが寄って来たってことは一人前と認められたみたいだな」

 どうやらサロメは人を選ぶらしい。


「そんなことはどうでもいい。まずはこれだ」

 俺は『傀儡の宝石』を出してテーブルに置く。

「これは?」

「『傀儡の宝石』だ。あるパーティーと成り行きで一緒になったが、その1人が蠍の化け物に操られていた」

「…特徴はないのか?」

「これと言って普通だったな。戦いだしてからは目が変わっていたが」

 ポートは手帳を出して書き留めている。


「そうか。まだなんとも言えないがギルド内でも注意喚起しておこう」

「そうだな。今回の奴もいつからその『傀儡の宝石』が埋め込まれたのか分からない。50階層以降に行きたがる奴は怪しいと思った方がいい」

「分かった。で?情報屋からはなにか得られたか?」

「『情欲のラスト』『7匹の獣』『賢者マギの封印が破られた』…後は『傀儡の宝石』を持っていたな。とこんなところだ」

「賢者マギか…封印が可能なら方法をこちらでも探してみよう。この『傀儡の宝石』はこちらで買い取ろう」

 そう言うとポートは白金貨を5枚テーブルに置く。


「わぉ!凄い」

「5枚?!」

「分かった、それじゃ」

 と白金貨を収納する。


「まだ聞いていない事があるだろ?どのパーティーだ?」

「…はぁ、『バディー』だ」

「ふむ、聞かない名前だな?誰のパーティーだ?」

「ガラム男爵令嬢のパーティーだ」

「…そうか、それは伏せておこう」

「それがいい。あと『眷属』は『鑑定』スキルで判別が出来ると思う」

「ならギルドでも試してみよう」

 ギルマス、ポートへの報告はこれで終わり、ギルド一階に戻るとダンジョンのドロップを売却してから宿に帰る。


「おっ!やっと帰ってきたな!」

「えへへ、30階層まで行って来たの!」

 とリミが食堂で飲んでいるラビオン達に報告する。

「へぇ、早いわね」

「ガハハ!盾役もなしによくバジリスクを倒せたもんだ!」

「まぁ、聞いていたからな」

 アビー達も驚いているようだが、なにが来るか事前に聞いて分かっていたから対処できたのだ。


「よし!帰還祝いだ!飲むぞー!」

「はぁ、いつものことだろ?」

 ラビオンに呆れるウリン。アビーとワルツは、もう大テーブルに移動している。


『ストロミー』のみんなは『鑑定』してみたが大丈夫そうだな。

「よし!のーむぞー!」

「はぁ、のん気」

「何よ?アイラは飲まないって言うの?」

「飲む」

「まぁまぁ、一緒に飲みましょうよ」

 と三人は大テーブルに小走りで向かう。


 まぁ、今は無事に帰還した喜びを噛み締めよう。



「よく帰ってきたな。で?『鑑定』で分かるんだろ?」

「あぁ」

 宴会の後、ラビオンと2人で飲みに来ている。今回のダンジョンでの話をするとラビオンからはそう言われる。

「ならギルドで少し『鑑定』でもしてみたらどうだ?」

「ん、何故だ?」

「あはは、単純に被害が減るからだよ」

「あぁ、だが『鑑定』できる人間はいるだろ?ポートには言ってあるから用意するだろうさ」

 試すと言っていたから大丈夫だろ。


「そうか、まぁ、50階層に行こうなんてやつは怪しまれて当然だがな」

「こんな時だしな」

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