第27話


 メインで使っていた武器が壊れてしまった。

「ガイツに作ってもらった奴は?」

「あぁ、これは刀と言って癖があるんだよ」

 刀と剣では扱い方が違う。


「それはスキルでなんとかならないの?」

「なんとかするしかないか…」

 剣聖を進めたいのだけど、しょうがないか。

 武士のスキルツリーから『すり足』『抜刀術』『刀技Lv1』を取得しておく。

 『刀技』はLv10まであるのでそこまで取るかはまだわからない。


 剣聖スキルは少し休みだな。


 まぁ初期スキルなのでポイントが少なくて済むのはいいな。


「んじゃ、ダンジョンにでも潜るか!」

「そう来なくっちゃ!」

「うん」

「行きましょう!」

 とりあえずいつもの様に支度をして外に出る。


「さっむ!」

「寒いな、ダンジョンに入ればなんとかなるが」

「買いに行く」

「そうですね!これじゃ待ってる間が辛いです」

 寒い季節になってきたので流石に鎧の上から羽織る物を買いに出かけることになった。

 やはり出回っているのは毛皮や革製品なので、それなりの値段だが買わないわけにもいかない。


「よし!これで決まり!」

 リミは明るい色合いの毛皮のロングコートだ。

「あったかい」

 アイラは黒のダウン。

「これはいいですね!」

 ネイルは焦茶の革のロングジャケットだ。

「俺はまぁ、これで」

 俺が買ったのは黒の革のジャケット。

 ジャケットの中にレザーアーマーで刀を腰に付けてると何故か近未来感が出るのはしょうがない。

 みんな似た様なもんだし浮かないからヨシとしよう。


 ダンジョンに並ぶこと1時間くらいでようやく中に入れた。

 中は気温が関係ないので上着を預かり収納する。


 今日は1階層から順に回って行く。

 刀技も試してみたいし、確かめながらダンジョンを探っていく。


 と言うのも『マッピング』と地図との誤差なのか、知らない道があるのでそこを探ってみることにした。


「ここがそうですか?壁ですけど?」

「だが、俺の『マッピング』にはこの先に道があるはずなんだが」

 やはりその場所は壁になっていて通れない様だ。

「ん?この壁少し変ですね?」

「あ?」

「色が違う」

 アイラが言う様に少しの差だが他と違う色をしている。

「ネイル、探ってくれ」

「任せて下さい!」

 ネイルに任せて後ろを警戒する。


“ゴゴゴゴゴゴ…”

 と言う音が聞こえて振り返ると壁が開いて道ができていた。

「やりました!やりましたよ!」

「ほぇぇ、凄い」

「隠し通路」

「だな、それじゃあ気をつけて行ってみようか!」

 やはり道はあったようで『マッピング』は間違ってなかった様だ。


 少し肌寒い通路を抜けるとそこには扉が出てきた。

「ここって5階層だよね?なんで?」

「まぁ、十中八九ボス部屋だろうな」

 少し行くのに躊躇うが、まだ5階層だ。

「よし、行くぞ!」

「はい!」

 扉を開けると、そこには巨大なスライムがいた。

「うげ!中にいるのは人間?!」

 スライムの体の中には何十人もの人間が苦しんでいる表情で揺らめいている。

 鑑定すると『グラトニースライム』らしく、食べた物の力を得る様だ。

「避けろ!!」

“ズガァァァン”

 触手が壁を粉砕する。

「あれ倒せる?」

「やるしかないだろ!」

“ズガン”

“ズガン”

“ズガン”

 と触手が壁を穿つ。

「来て!『サラマンダー!』」

『よっしゃ!やってやるぜ!』

「ライトニング!」

「シーフスラッシュ」

「抜刀・五月雨」


 皆で攻撃するが、デカいスライムにはあまり効果がない様だ。

 俺は鑑定をもう一度かける。

 食べた物の力を得るなら奪えないか?

 中の人間のポイントをありったけ集め自分のものにする。

『グシャぁぁぁぁぁ…』


 ボタ…ボタ…ボタボタボタ。


 ポイントを取った人間を排出し始めたグラトニースライムは小さくなっていく。

 ついでにグラトニースライムのポイントを見るがこいつ自体は持っていなかった。

 こいつはやはり人間を糧にして育っていた様だな。


「いまよ!」

『任せろ!フレアーボール!』

 サラマンダーが高熱の炎の玉を放つ。

 グラトニースライムに触れると沸騰してグツグツと泡をたてている。

「アイラ!」

「アイシクルランス」

 氷の槍がグラトニースライムに刺さっていく。

 

 沸騰した物を急激に冷やせば!

“パキパキ…パキッ”

 カシャーンとグラトニースライムは砕けて消滅してしまった。


「良かった…流石にあんな化け物は」

「そ、そうね、懲り懲りだわ」

「ふぅ」

「無傷でほんとよかったです…」

 人のこないはずの場所だ。どこかの罠が繋がっていたのだろう。


 残されていたのは人間の死体と真っ赤な宝石だった。

「あっ!宝箱!」

「これは…多分ですけど解除できます」

「やってくれ」

「はい!」

 失敗は怖いが、やれると言っているんだから信用しないとな。


 皆が息を殺し見守る中、ようやく解除できたのかネイルの肩が下がる。

「できました。開けます」

 中にはエメラルドグリーンの宝石のついた杖とバッグが一つあった。

「よし!」

「よくやったな!杖はアイラだ。バッグはリミだな」

 杖は雷鳴の杖らしくアイラしか使わないし、マジックバッグはポーチタイプでリミの矢を持ち運ぶのにいいからな。


「やったぁ!マジックバッグだ!」

「新しい杖」

 2人とも嬉しそうだし、ネイルも自分ばかりが貰っていたのでホッとしている様だ。


 にしてもこの宝石は、鑑定してみると『暴食の命石』と言うものらしいが使い道がよくわからないな。


 とりあえず収納に入れておこう。

 

 死体から取ったポイントは俺の糧となってもらう。その代わりと言ってはなんだが死体は収納してギルドに持ち帰ることにする。

 ギルドなら誰なのか分かるだろうし、手厚く葬ってくれるだろう。


 死体を収納するとボス部屋は広いだけで石碑もない、ただの部屋の様だ。

 

「さて、10階層に行って帰ろう」

「「「はい」」」

 俺たちは来た道を戻って10階層までいくとポイントを登録して外に出る。


 

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