第25話


 相変わらずの行列でうんざりしている。

 迷宮街ブランドーはいつでも賑わっているな。


 ゆっくり来たので行く時よりも時間はかかったが無事に辿り着くことができた。

 錬金術の本も粗方読んでしまったし、なかなかどうして使い勝手がいい様に感じる。


 街の錬金術師は何をしているのだろうか?


 錬金術の『物質変化』『再構築』『メインクリエイト』『付与』まで覚えた。なんでもありなんじゃないかと思うのはやはり地球の感覚なのだろうな?


 やはり他のスキルツリーにも目を向けてもいいかもな。必要なものは取って、メインで剣聖を伸ばして行くか。


 ようやくブランドーの中に入る。

 宿屋に入ってようやく一息つくと、ラビオン達はダンジョンに潜ってまだ帰って来ていないと女将に聞いて、4人分のエールをもらう。


「あ!あんたらに伝言だよ!ガイツのおっさんからできたから見に来いだってさ」

「ん?誰のことだ?」

「『ブラウン』って工房のブラックスミスだよ」


「あぁ、分かった」

 あの時の鍛治士か、できたということはアダマンタイトをなんとか形に出来たんだな。そりゃ良かった。


 次の日は鍛冶屋街に出かけて『ブラウン』と言う工房に向かう。

「いるか?」

「あ!おう!待ってたぞ!!」

「納得のいく品物はできたのか?」

「おうさ!まぁ、まずは白金貨一枚返すぞ!」

 とテーブルに白金貨一枚を置くガイツ。

「受け取った。だが、大丈夫なのか?」

「おう!アダマンタイトを加工できるのは俺しかいないから注文が多くて捌ききれん様になってな!」

 ガハハと豪快に笑うガイツは前のしょぼくれた鍛治士ではなくなっていた。


「それもこれもお前のおかげだ!これを使ってくれ!1番の傑作だ!」

 ガイツが出したのは剣かと思ったが刀だな。

「なぜ刀を?」

「お前さんの立ち居振る舞いだとコイツがピッタリな気がしてな!」

「そうか、なら遠慮なく」

 打刀になる様で、武骨な黒の鞘に金の鍔、柄も黒に金の刺繍がしてある。

 刀を抜くと少し黒い銀色でぬらりと鈍い光を放つ。


「ほぅ、やはり似合うのぉ」

「そうか?ありがたくもらっておく。名前はあるのか?」

「濡烏でどうじゃ?」

 濡烏か…良い名前だな。

「まぁ、似合ってるな。いくらだ?」

「金はいらねぇ!また来てくれよ?」

「そう言うことなら喜んでくるさ」

 と言うと破顔して喜んでくれている。

「お前にゃ力がある!誰彼構わず使うなよ?」

 ガイツには分かったみたいだな。

「俺はルシエだ。肝に銘じとくよ」

「ああ!ルシエ!ありがとな!」

 と見送ってくれた。


 さて、試し斬りもしたいし明日はダンジョンにでも行くかな?

 と言ってもまた伸ばさないといけないスキルツリーが出来たな…刀剣士、武士だ。忍者でもいいが、難しいところだな。


 まだミスリルソードで倒せない敵は出てきていないし、これ以上剣聖を伸ばさないわけにも…まぁ、まずはポイントを貯めて成長して行くのが無難な気がするから、一応刀も使える様にして収納に入れておこう。


 ゆっくりと街を4人で見て回る。


 やはり人が多く、活気がある。


 近くの喫茶店に入ると俺はコーヒー、リミとアイラとネイルはケーキセット。


 窓を見ながら思うのは、地球でもこんなまったりとした時間は過ごしたことはないな。

 道行く人達を見ながらこの空間だけは別物だ。


「ねぇ、ルシエ?」

「なんだ?」

「ルシエはどうしてダンジョンに?」

「…なぜだろうな。成長するためかな?」

 レベルと言う概念はないが、スキルツリーでパワーアップできるのならしておいて損はないし、ルシェールが目指した剣聖をとりたいと言うのもある。

「えー!お宝でしょ?せっかく潜るんだもん」

「あはは、それもあるな」

 ダンジョンには未知の宝がある。それも気になっている。

「私はルシエについていく」

「アイラはそんなこと言う!アイラだってお宝気になるでしょ?」

「…気にはなる」

 アイラも気にはなるんだな。


「私も気になりますよ!マジックバッグとかいいですよね!」

「だよねー!」

 と女同士の話が始まったのでまたコーヒーを飲みながら外を見る。


 情けない31の男と18歳のイケメンが合体した俺は本当に新しいルシエなのだから、自由に生きていきたい。

 その為の努力は惜しまない。


「ねぇ。聞いてる?」

「んぁ、悪い、聞いてなかった」

「んもう!ちゃんと聞いてよね?このパーティーの名前はどうするの?」

 そういえば考えていなかったな。

「『ルシエリミ』はどうかな?」

「却下」

「えー!じゃあアイラは?」

「『ルシエラ』」

「それも却下ですよ。なんでルシエさんの名前と自分の名前なんですか!」

「そう言うネイルはどうなのよ?」

「と、『トラベラー』とか?」

「なんで旅人?まぁ、あってるけどさ」

 旅人か…悪くないが、

「『リベル』はどうかな?」

「どう言う意味?」

「自由って意味だよ」

 リバティーの語源だけどな。

「賛成」

「まぁ、いいんじゃない?」

「私もそれでいいです!」


「よし、なら『リベル』で決まりだな」

 パーティー名なんて他に厨二っぽいのが出てきそうだったのでまぁ、決まって良かった。


 喫茶店を出てギルドに向かいパーティー名を登録すると冒険者証にもパーティー名が刻まれる。


 ちょっとカッコつけすぎたかな?

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