第23話
最初は薬師のスキルツリーを見ていたが、扱える様になるまでに時間とポイントがかかる為ちょっと目線をずらして錬金術師のスキルツリーを眺めている。
これなら少し頑張れば『星晶石』も、それ以外のものもあつかえるんじゃないか?
まだ夕方だったので本屋に寄って錬金術の本を買う。金貨12枚と高価な代物だった。
読んでいくと薬を作る方法も載っていたので、とりあえず『メインクリエイト』が取れるまで錬金術を伸ばしていこう。
いまは10階層からまた20階層を目指している。やはりレベル上げは地道に行かないといけないしな。
それにこれでもポイントの伸びはいいのでここでレベル上げをしていくのは無難な選択だし、新たに下の階層を行くには時間がかかる。
「先に行かなくて良いの?」
「ん?まぁここで慣れていくのが良いだろうな」
リミは不思議な顔で頷く、先に進みたい気持ちもあるだろうがここは我慢して欲しい。
「あ、あの、薬師は探さなくて良いんですか?」
「俺に考えがあるから少し付き合ってくれ」
「あ、は、はい」
ネイルにもちゃんと話をしないとな。
マッピングの効果もあり20階層まで到着した。それでもかなり時間はかかってるがな。
扉を開き中に入る。
「ん?オークが一体?」
「イレギュラーです!オークソルジャーだと思います!」
「一当てしてくる!『エアリアルラッシュ』」
走り寄って攻撃を繰り出すが紙一重で避けてくる。
離れ際に鑑定すると『オークキャプテン』だった。
「オークキャプテンだ!仲間を呼ばれるぞ!」
「来て!『シルフ』」
「ファイヤーボール」
「私も行きます!」
ともう一度攻撃をしようとしたがもう遅く、オークキャプテンが『雄叫び』を上げるとオークソルジャーが3体召喚された。
「わゎ、増えたし!」
『僕がやっつけるさ!エアリアルカッター』
オークソルジャーにシルフの風の刃が襲いかかり傷をつけていく。
「おらぁぁ!『ウォークライ』『真空斬り』」
「ライトニング!」
ソルジャーを二体撃破したところで、
「よし!分捕り成功!」
ネイルが敵の武器をぶんどったらしくこちらに投げてくるのでキャッチして収納に入れる。
キャプテンがこちらに向かって雄叫びを上げながら突進してくるので『パリィ』で弾くと、
「ライトニング!」
「シルフ!」
『行くよ!トルネード!』
風と雷に飲まれてキャプテンは倒れた。
「こっちは終わりました!」
ネイルも武器のないソルジャーを一体倒した様でこれでボス部屋のイレギュラーは解決したな。
20階層では出て来ない格上のボスが出てきたのは予想外だったな。
「にしてもイレギュラーなんてそんな起きないわよ?」
「起きたから仕方ない」
「そうだな、アイラの言う通りだが今後は気を引き締めていこう」
「「「はい」」」
宝箱があったのでネイルが解除している間に小休憩だ。
スキルツリーを開いてパッシブは取らずにメインを取り、錬金術を伸ばしていくと『メインクリエイト』を取ることができた。
試しに石ころを拾ってクリエイトすると粘土の様に柔らかくなり銀色を帯びてきた。
石ころが鉄になったようだな。さすがと言うかどんな原理だ?
ネイルの解除が出来たみたいでリミ達が集まっていた。
「ルシエ、開けるわよ?」
「あぁ、開けてくれ」
中には『ミスリルナイフ』が入っていた。
「またネイルね」
「いや、私ばかり」
「良いのよ、私達が持ってても仕方ないもの」
「そうだな、ダンジョンでは解体もないしな」
と言うわけでナイフはネイルが使うことに。
ネイルは何か言いたげだがこれはしょうがない。
俺たちは転移陣で外に出る。
昼を少し過ぎたところだ、今回は4日で10階層から20階層まだ行けた様だな。
宿屋に戻るとラビオン達『ストロミー』はダンジョンに入った様だ。
部屋に入って『星晶石』から薬を作る。
一つの『星晶石』から十粒の丸薬ができたのでこれでネイルの言ってたシスターも助かるだろう。
その日の夜はネイルに薬ができたことを言って、次の日からカルア伯爵領までみんなで行くことになった。
「いいんですか?私のために?」
「ん?仲間だからだろ?」
「そうそう、パーティーメンバーだから一緒に行くよ!」
「右に同じ」
とみんなが言うと、ネイルは泣き出してしまった。
「あ、あ、ありがとうございます」
次の日は朝から宿を引き払い、久しぶりにブラハムに乗って街を出ると機嫌がいいようで軽快に走るブラハム。
これならだいぶ早く着くな。
五日目でようやくカルア伯爵領が見えてきた。
道中はウルフ系の魔物が襲ってくることもあったがリミとアイラが遠距離で蹴散らしたので問題はなかった。
他は順調に進んで来たのだが、流石のブラハムでもこれだけかかるようだ。
カルア伯爵領に入るとやはり人が多い、早速ネイルが言う教会に行く。大通りから外れた場所に教会があった。
教会と同じ敷地に孤児院があるがだいぶ年季が入っているな。
外にいる子供達は元気そうに走り回っていた。
「あ!ネイル姉ちゃん!」
「ほんとだ!お馬さんに乗ってる!」
子供達が集まってきて収拾がつかなくなってきたがネイルが、
「みんな、こっちに集まりなさい!」
と叫ぶと大人しくなって集まりだす。30名ほどだろうか、孤児がこんなに多いなんてな。
「よし、みんな良い子だね。シスターに用があるの」
「シスターならこっち」
とみんなが孤児院に手を引っ張るので、ブラハムを孤児院の横に繋ぐと中に入っていく。
中には2人、年長組らしく掃除をしていた。
「あ、ネイル姉さん」
「2人とも頑張って偉いね。シスターはいる?」
「…部屋で寝てます」
「そう、お邪魔するわね」
そう言って奥に行く。
「他の大人は?」
リミが気になった様でネイルに聞くと、
「多分教会の方にいるはずです」
まぁ、教会も運営しないといけないだろうな。
長机の並んだ食卓の様な場所から奥に入っていくとある部屋の前に子供達が集まる。
「シスター、病気なの」
「痛い痛いなの」
子供達は今にも泣きそうになっている。
ネイルは小さな子を抱きしめると、みんなに向かって優しく声をかける。
「私達が来たから大丈夫よ?シスターは元気になるからね」
「うん」
「だからここで待っててくれる?」
「うん」
俺たちを見ると部屋の中に入って行くので着いて行く。
部屋の中に入ると荒い呼吸が聞こえる。ベッドの横にネイルが立って、
「シスター…やっと恩返しが出来るんです」
「…はぁ、はぁ、ネイルなの?…ウッ、こんな格好で…ごめんなさい」
「ううん。私が来たのはシスターを助ける為よ。これを飲んで?薬を持ってきたの」
ネイルがシスターの口に丸薬を運び、リミが水を水袋から飲ませる。
水で丸薬を飲み込むと身体のあちこちが光って消える、胸の光が一番強かったな。
シスターの肌も血色が良くなり、転移していた癌細胞も無くなったようだ。
「…あぁ。身体が楽になったわ。…ありがとうネイル」
「へへっ、どういたしまして。私だけじゃなにもできなかった。全部仲間のおかげなんです」
リミは照れくさそうに、アイラは微笑んでいる。
「皆さん…ありがとうございます」
「良かった、ゆっくり休んでください」
体力が落ちているだろうから休ませるためにネイルを置いて俺たちは部屋から出る。
「シスターは?」
「もう大丈夫よ!お外で遊びましょ!」
「「「うん」」」
子供達を連れて外に出る。
これでネイルも安心だろうな。
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