第22話


 蟹星病、こちらでは死病になる。

「誰がかかってるんだ?」

「…シスターなんですけど、私は孤児院出身でシスターは母親同然なんです」

「今の容体は?」

「あまり良くはありません。いまは回復術師に頼んで月一回の治療しか」

 治療魔法で遅らせることができても根本から治さないとな。


「医者が言うには?」

「お医者様はもって半年だと」

 半年か…あまり時間はないが、見つかるのか?

「『星晶石』はどうするのだ?」

「そ、それまでに見つかればいいのですが」

 星に蝕まれていると言伝えられている死病は、いくつかありそのどれも特効薬が無い。

 その中で『星晶石』で治ると言う言葉が残っているのはいるが。

「み、見つかりますよ!じゃないと困るんです」

 ネイルはその為にダンジョンに潜るんだなぁ。

「あればお前に渡すが、たぶん低階層では出ないんじゃ無いか?」

 ラビオンにも言っておくか。

「はい、それでも…私の大事な人なんです」

「わかったよ、その代わり無理はするなよ?」

「はい!ありがとうございます」

 もう、三ヶ月くらいしか猶予はないだろ。

 ギルドにも依頼を入れておくか。


 何もなかった様に見張りを交代し、起きたら探索を始める。

 

「右2きます!」

「おう!」

 ネイルは問題なさそうだな。


 また16階層で夜を過ごすことになったので、今まで溜まったポイントを振り分ける。

 剣聖はすこし待ってもらい、探索者にポイントを割り振る。『簡易魔法』『マッピング』まで取っておく。

『簡易魔法』はライトやクリーンなどの六つの生活魔法と呼ばれる魔法が使えるようになる。地味にありがたい。

『マッピング』は頭の中にこれまで通ったマップが浮かんで迷わなくなるな!


 これでアイラのマッピングしたやつと合わせれば今までのマップが完成する。

「何かしてる?」

「あぁ、アイラはマッピングをしなくて良くなったよ。代わりに俺がマッピングを覚えたからな」

「…別に良かったのに」

「いや、これからはサクサク進もう」

 ネイルの時間もあまり猶予がないからな。


 それからは17、18と上手く階段が見つかりようやく先が見えてきた。

 途中宝箱からは『導きのコンパス』と言うものが出たのでそれを使い19階層の階段を見つける。


「もうすぐね!気合いが入るわ!」

「そう、お気楽」

「な、何言ってるのよ!私はちゃんとしてるわよ!」

「まぁまぁ、2人とも喧嘩しないでください」

 ネイルが止めるのも慣れてきたな。


 20階層に入ると大きな扉があり、ここがボスなのは明白だ。

「気をつけろよ?」

「任せてよ!」

「問題ない」

「よっし!開けますよ!」

 と扉を開けると20階層のボスはオークウォーリアが3体だつた。

「出てきて『サラマンダー』」

『よっしゃ!まかせろ!ファイヤーボール!』

 消費の激しい召喚をしてリミはオークウォーリアを葬るとこっちを見て笑う。

「どう?使いこなせてたでしょ?」

「あぁ、でもせっかくだから俺らも経験しときたかったぞ?」

「う!そ、それはご、ごめんなさい」

「しょうがない、ばか」

「な!アイラ!バカはないじゃない!」

「おっ!宝箱が出てますよ?罠は…解除できます」

「ネイルよろしくな」

「ハイです!」


 ネイルが罠解除をしているうちにドロップ品を集めておく。

 オークウォーリアのドロップ品はオークソード、肉、あとは運がいいと睾丸だ。貴族に高く売れるらしい。


「あきました!開けますか?」

「開けてくれ」

「はい!」

 ネイルが宝箱から取り出したのは幸運の指輪だった。

「それはとりあえずはネイルが嵌めておけ」

「え?他のみんなじゃ?」

「幸運の指輪だ。欲しいものがあるんだろ?それを手に入れる為に着けておけ」

「は、はい」

 幸運の指輪がどれほどの効力なのかわからないが、ネイルにつけてもらっておく。

 リミ達はちょっと怒っているようだが、後で話せばいいだろう。


「それじゃあ、帰ろう!」

「「「はい」」」

 転移陣にポイント登録をしてから外に出る。

 もう朝になっていた。

 黄色く感じる太陽を横目に俺たちはギルドに寄る。


「おかえりなさいませ、ルシエさん達はパーティー名を決めないんですか?」

「あ、そのうち決めておく。これを査定してくれるか」

「あ、はい!それではカゴに入れてください」

 カゴは山盛り三箱になり、まだあるが次にした。

「査定をしますのでこの番号で待っててください!」

 木札を渡されて俺たちは少し後ろの椅子に座る。まだ呼ばれない様なので俺は立ち上がり掲示板の方へと足を向けるとネイルも着いてくる。


「やはりないか…」

「何がないんだ?」

 ビックリして後ろを向くとラビオン達だった。

「ビックリさせるなよ。ラビオン達はいまからダンジョンか?」

「いや、いまは休憩中だ」

「そうか、『星晶石』に着いて何か知らないか?」

「ん?『星晶石』か、持ってるぞ?」

「あ、あの!い、いくらですか!」

 ネイルが食いつく。

「な、なんだよネイルちゃん?どうした?」


 俺らは事情を話すことにしてテーブルを囲む。


「しょうがねーな、白金貨一枚でいいぞ。みんなもそれでいいか?」

 メンバーが首を縦に振るので、

「分かった、ありがたく買わせてもらうよ」

 白金貨一枚を渡して『星晶石』を受け取る。

「薬に出来る奴はいるのか?俺らが持ってたのも薬にできる奴がいなかったからだ」

「いや、それはこれから」

 そうか、薬にするのが難しいのか。

「だが、薬師に持って行ってもちゃんと薬にするかわからないぞ?それだけ貴重な薬だからな。すり替えられる可能性はある」

 そうか、そうだよなぁ。


「じゃあどうすれば?」

「まぁ、薬ができるまで見張るか、信頼できる薬屋を探さないとな」

「誰かいないのか?」

「悪いが薬師に知り合いはいないな」

 

 スキルツリーを見ると薬師の初歩は取れるが『星晶石』を扱えるまではそれなりだな。

 だが、別の薬師に当てはないのでちょっと遠回りだが育ててみるか。


「ネイル、時間はかかるがちょっと俺に任せてもらえるか?」

「…はい、いいんですか?」

「気にするな、じゃあまたダンジョンに潜る準備を始めようか!」

「「「はい」」」

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